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仙台駅で伊坂幸太郎作品の舞台を巡る

つい先日、休暇をとって仙台に行ってきた。

これまで北海道を除けば、栃木より上の県は訪れたことがなかったので、初めて東北の地に降り立つことに。

旅館で2泊3日。特に観光もせずに、2日目などは宿でだらだらと本を読んだり、思い立ったら温泉に入ったり、ぶらぶらと散歩をしたりして過ごそうかと画策していた。まるで文豪みたいな過ごし方だ。

しかし、とは言っても、旅館のチェックインまでそれなりに時間があったので、どうにかして暇を潰さなければならなかった。

観光地に出かけるには、時間が少し心許ない。
カフェに入って過ごすのも味気ない。

そんな風に、行きの新幹線で悶々と考えていた時に
ふと思い出したことがあった。

仙台と言えば
伊坂幸太郎作品の舞台となった場所がある。

伊坂幸太郎さんの作品は昔からずっと好きで読んでいたので、著者の作品の多くが仙台を舞台に描かれていることも知っていた。

また、映画化されている作品に関しては
撮影地ともなっている場所が多くある。

そこで、仙台駅付近を散歩するついでに
伊坂幸太郎作品の聖地巡りをすることにした。

既視感のあるペデストリアンデッキ

仙台駅の西口を出てすぐ目に入るのが、ペデストリアンデッキ。

何だか初めて来た場所のはずなのに、とても既視感のある場所で不思議な感覚になった。「いや、何か見たことある」ってなった。

それもそのはずで、このペデストリアンデッキは『アイネクライネナハトムジーク』で主人公たちが運命的に出会う場所であり、『チルドレン』では陣内が印象的な台詞を放つ場所。

「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている」

チルドレン/伊坂幸太郎(p.166)

数多の登場人物たちが駆けていったこの道で、これから作品の舞台を巡っていくと思うと、否応なしにテンションが上がる。

それから昼食を挟んで向かったのは
ぶらんどーむ一番町にある壱弍参いろは横丁

レトロな外観が特徴的な壱弍参いろは横丁

壱弍参いろは横丁『重力ピエロ』泉水の兄弟が連続放火魔を探しに訪れた場所だった。現実には彼らはいなかったし、自分はそこで美味しそうなカレー屋さんを見つめていた。

素敵なご飯屋さんや居酒屋もたくさんあったのだけど、時間が早かったこともあり、閉まっている店が多かったのが少し残念だった。 

その後、訪れたのは勾当台公園。

この場所では『ゴールデンスランバー』の主人公である青柳が再び姿を現す事になった野外音楽堂を見に行った。お昼どきだったのもあり、多くのサラリーマンで賑わっていたので遠くから。

大勢のサラリーマンが集まっていた野外音楽堂

想像よりもこじんまりとしていたけど、喧騒に巻き込まれることなく、街の日常に溶け込んでいるこの場所も悪くない。どの立場で言ってるのか分かんないけど。

その後、『ゴールデンスランバー』での首相演説シーンが印象的な定禅寺通りの方をぐるっと回って、仙台駅に戻っていく。

その最中、錦町公園があった。

偶然見つけた錦町公園

錦町公園と言えば、映画『アイネクライネナハトムジーク』で主人公が恋人を追いかけ、バス停まで走っていった場所。

見る人によって、何でもない風景が特別な場所へと変わっていくのが、聖地巡りの醍醐味とも言えるかもしれない。

最後、どうしても見たかったのは『アヒルと鴨のコインロッカー』で登場した仙台駅のコインロッカー。

これだけは撮りたかったコインロッカー

しかし、実際に映画で登場した「3710」のコインロッカーは今は無いらしい。なので、特に関係ない数字のコインロッカーに荷物を預けた。

頭の中では勝手にボブ・ディラン「風に吹かれて」が流れる。『アヒルと鴨のコインロッカー』は小説も映画も大好きなので、何だか感慨深かった。

また、同じく『アヒルと鴨のコインロッカー』で登場した主人公たちが住むアパートを見てみたかったのだけど、舞台となった歩坂町があまりにも電車では行きにくい立地にあったので、なくなく諦めることに。

そんなこんなで様々な場所を巡ってみると、改めて作品を読んだ時の思い出、映画を見た時の感動が蘇ってきた。

聖地巡りをしたのは初めてだったのだけど、作品の地に立つと懐かしい気持ちを思い出すと同時に、この場所で登場人物たちが物語を紡いでいたのだと肌で感じることができる。

様々な作品、登場人物たちが
この「仙台」の街を駆け巡った。

作品同士は決して交わることはないけれど、現実に生きる自分たちは、舞台となった場所や印象的な場面を転々と巡ることができる。

それを、身にしみて実感した旅だった。

また、気が向いたら。

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