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未経験者が「実務経験2年以上」と書かれた求人に採用されるためには

僕はデザイン制作会社の代表です。なので今回はデザイナーをメインに描いていますが、どんな職業でも加工して応用できる事もあるかと思います。

未経験デザイナーにとって制作会社の募集要項の「実務経験2年以上」といった文字は、もはやデザイナーになるのは無理ゲーなのでは、と感じさせるかもしれませんね。

たしかに未経験者を採用することはリスキーです。しかし重要視している箇所は制作経験の長さだけではない。経験年数が長くても企業によっては相性が悪い方もいます。

企業とデザイナーの相性はとっても大事

アーティスト型デザイナー
得意なデザインに偏りがあり、顧客ニーズに応えらないケースも大いにある。デザインを好き/嫌いで判断してしまう。
ロジカリスト型デザイナー
操作技術やデザイン論に傾向し「こうあるべき」という思い込みが激しい。デザインを正解/不正解で判断してしまう。

上記デザイナーは経験値も高いがその分報酬も高い。事業内容と相性が良ければ即戦力ですが、経験年数とポートフォリオの見栄えだけ見て即採用することはまずありません。

経験年数はただの指標であり、必ずしも必須ではない。つまりここに「勝機あり」かもです。

ない経験は「ある経験」で補って代用する

未経験者がデザイン会社に就職することは非常にハードルが高い
これは紛れもない現実です。

しかしそれは「デザインの経験期間」だけを見た視点。あなたは「デザインした年数」と「そうでない年数」だけで分けられる人生ですか?そうではないはず。きっと学生時代や前職などで多くの経験を積み、加工して落とし込みあなたという人格を形成して生きています。それを活かさない手はないです。

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受かったらいいなという「理想論」ではなく、受け止めるべき3つの「現実」

今までの経験を未経験のデザイン業務に落とし込むにはかなり大変ですが、理想だけ掲げていても何も始まりません。まずはしっかりと3つの事実を理解しましょう。

1 採用は「ビジネス」。ワンピースの「仲間集め」ではない。

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企業目線もちゃんと考えてみよう
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僕にとって採用はワンピースの「仲間集め」とは全く違います。採用はビジネスとしての施策であり、採用者が生み出す利益への「先行投資」です。採用にも雇用にもお金が必要です。あなたへの投資をいち早く回収したいのが本音です。つまり雇用主にとってあなたは「お客さん」ではない。あなたがしなければいけないのはセールス(売る)です。自分を商品と見立てて、企業に提案しなければいけない。これが面接について考える第一歩です。

2 面接成功のカギは、自分を売る「マーケティング力」

ドラッカーはこう言っています。「マーケティングの理想は販売を不要にするものである」と。自然に買いたくなる状況を作るために、ニーズにあったサービスを適切なターゲットに向けて発信する事が必要です。面接時に「御社の理念に共感しました!」や「死ぬ気で頑張ります!!」等の熱意を伝えることは間違っていません。しかしこの言葉のみの熱量とビジネス的期待値は必ずしもイコールではないです。

「やる気あります」は何と比較してどれほど上にあるのか?を答えて下さい。
あなたのやる気は何と比較して大きいですか?答えられない方は、きっと自分のことだけ考えています。ビジネスでは、比較対象がない、数字で表せないことは優先順位が下がります。

現に弊社では「未経験者」を採用し現在も事業に大きく貢献してくれているスタッフが多いです。これはこの差を埋める為に、逆算思考で具体的に戦略を練っていきましょう!

3 未経験者と経験者の違いは点と線の捉え方

多くの人は自分の事ばかり考えてしまうんです。分かります。でもちゃんと分析してください。「できない自分」も「できている自分」も正しく理解する事から始めてください。

思考が「分散」しているか「直線」かの違い

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デザイナー志望の方は「経験不足」を技術やセンスという言葉であやふやにしている傾向にあります。仕事は「経験」によって巧く(上手く)なるわけではありません。多くの経験は、散らばっていた点が線につながる状況に必要です。それにより思考がまとまり、算段がつきやすくなり、仕事をタスクとして細分化できるようになります。

思考が「具体」か「抽象」かの違い

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ビジネスシーンでは「具体」と「抽象」の行き来が求められます。決して片方だけでは、伝わらないことも多くあります。相手にメリットが伝わらなければ、「。。。で?」という回答しか得られません。

抽象化トレーニング(ちょっと豆知識)

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この図は抽象化トレーニングの図です。(参考:具体と抽象 細谷 功)

1 現実を圧倒的に観察し経験する(ここが足りない)
2 経験した本質を図解にする
3 過去に経験した事を同じ図で表せないか考える
4 具体化して応用する

応用が得意な人は、このサイクルがとても上手な人だと思います。(これに関してはまた別のnoteで書いてみます。)

あなたを商品と見立てて「マーケティング分析」

さてここから自分=「架空のあなた」、ターゲット=「架空の制作会社」、競合=「ライバル達」と見立てて戦略を練りましょう。

職業訓練校を卒業したばかりのあなた

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自分を分析
・職業訓練で習得したHTMLの知識とフォトショップでのバナー制作経験
・架空カフェのWEBサイト(職業訓練時代に共同製作でデザインを担当)
・デザイナーになりたいという熱意(現在無職のため時間確保は可能)
・前職は居酒屋など接客業を4年間の経験あり
・接客業は得意で、お客さんやスタッフ管理、仕入れまで任されていた

ターゲット(応募する制作会社)

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ターゲットを分析(架空の企業)
・中小企業のBtoBコーポレートサイト制作がメイン
・広告やSEOの支援も行なっている
・スタッフ14名(ディレクター/4名 デザイナー/4名  エンジニア/5名 広告プランナー/ 1名)
・制作だけではなく分析や運用も得意そう
・少し手堅い印象

あなたにとってのライバル(他の面接者)

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ライバルの分析(これは仮説になる)
・デザイナー歴2年半
・ポートフォリオには10点以上の制作物はある
・技術は一通りある
・ややアーティスト型デザイナー

ざっくり調査してみましたが、何も戦略なく面接に臨んだとしても採用される可能性は圧倒的に低いです。ではここからは「採用したくなる人物像」を仮説立てしていきます。

入社したい会社が得意としている領域は?

入社したい企業は制作についてでけではなく広告やSEOのサービスも行なっています。つまり制作会社としてのポジションは下図と仮説します。

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「BtoB」の堅い印象のデザインが多くさらに広告やSEOなどマーケティング用語もサイトには点在しているとこを見ると、制作会社としてのポジションが見えてきます。

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ターゲットの注目している点は?
もしかすると制作物の造形美よりサイトとしての機能性について話せた方が印象はかなり高くなる可能性があります。ディレクターの人数が多いのも、制作物の意図や目的の説明、そして運用方法の会話が多いかもしれません。

ターゲットに対してあなたの強みは?
あなたは幸いにも以前まで接客業を4年もした経験があります。接客業は、リアルタイムで起こるお客さんの感情の変化を察知し、提案し、売上に貢献する仕事です。その経験から行動や言葉から相手のニーズを読み取る能力があります。さらにスタッフ管理や仕入れなども行なっていたのであれば、それはスケジュール管理やマネージメントの仕事です。これを制作会社の仕事に落とし込み、活かし方を考えてみましょう。

ライバルに勝つには?
ライバルと制作実績の質と対抗するのは難しいです。すでにマネージメントやディレクションをしている経験もあれば、尚のこと勝率は下がります。まず最低限、制作実績の量だけは圧倒的に勝っておきましょう!さらに、過去の接客業の経験を落とし込み、現実的な言葉で制作意図を説明します。ライバルが「ユーザビリティ」という言葉を使うなら、こちらは「ターゲットは32歳の女性、ややプライドが高くブランド品を好むが、、、」というように接客業で実際に対面した人を思い出し、その時のやり取りや購入に至った経緯を思い出してください。それはあなたしか知り得ない「定性データー」です。

対策まとめ

・圧倒的に制作事例は増やしておく(これは自力で)
・BtoBサイト事例は必須(架空のカフェサイトとかは効果なし)
・デザインの制作意図はかなり深く質問される可能性が大
・抽象的(見やすいデザイン等)な言葉で意図は伝えてはいけない
・WEBサイトの役割や目的など必要な知識は絶対覚えておく
・感覚的な言語は使用せず理論立てて
・接客業時代の経験をビジネスに置換える
・接客=営業 スタッフ管理=マネージメントとして置換える
・置き換えた上でWEB制作業界に落とし込む
・つまりディレクターよりのデザイナーとしてのポジションを狙う
・あなたの成長が企業にとってどれほどメリットかを言語化

面接までにやっておいた方がいい5つのポイント

1 経験なければ作ってしまう
クラウドワークスで仕事を探したり、架空のサイトを作っててもリアリティがないんです。そんな暇あったら近所のお店のサイトやチラシを勝手に作ってしまいます。そして提案してみます。無料でいいので実績として使わせてください!って言えば恐らく文句は言われません。圧倒的に足りてない経験値を1秒でも早く補いましょう。

2 異常な数でカバーする
ライバルが2年半かけて作った実績と同じクオリティで同じ量を作る事は不可能です。でも異常な数(1日に1サイト制作、月に300個のバナーを制作)でカバーする事はできます。やる気や熱量を伝えたければ、誰もやらないくらいの数があって初めて伝わります。あなたには経験が足りていないことを1秒でも早く気づくべきです。

 動きながら考える
頭で考えて算段を立てられるのは経験値がある人の特権です。あなたにはまだその経験がない。つまり考えてても答えは見つかりません。頭の中にあることは全て抽象的で具体性は行動によって生まれます。1秒でも早く動き考えましょう。

4 調べたら分かることは全部調べて覚える
「ホームページ」「WEBサイト」「コーポレートサイト」、この3つの言葉の意味は近い様でありながら、企業事業やターゲットによって使い方を分けています。あなたが入社したい会社はどんな言語を使っていますか?その意味はなんでしょうか?調べたらすぐ分かります。すぐ分かることを放置するのは「問題の先送り」ですので、1秒でも早く調べて覚えましょう。

5 1〜4を相手にターゲットに合わせる
応募した会社のサイトにはどんな言葉が、どんな事例がありますか?それすら確認せず、「自分の作りたいもの」「自分が理解できるもの」だけを身につけても意味がありません。1〜4は全てはターゲットに合わせる事で初めて評価につながります。不特定多数に向けた経験不足の漠然とした意見では誰にも伝わりません。

あとがき

もちろん、未経験者の採用は技術的な教育コストを考えると非常にリスクが高いのは事実です。しかし「作れるだけ」のデザイナー採用が会社にとって利益をもたらすかというとそうではありません。

「知っているだけの人」「作れるだけの人」は既に市場にあふれいます。その中で「求められる人」は限られてきます。未経験の方へ、どうせなら「知っている事」や「作れる事」をビジネスに活かせる人を目指して成長してみたいと思いませんか?

ーマーケティングに強いBtoCに特化した制作会社で働いてみませんか??

ツイッターもやってます。ぜひ。



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