バキブームの終わり(Pさん)

 バキブームは、五日間で終わった。
 昨日のことだ。
 それまでは狂ったように、四日間かけて「グラップラー刃牙」のシリーズを、四十幾巻か、一気に読み終えた。
 あからさまな形で予告されていた、マウント斗羽とアントニオ猪狩の対決をふくむ、「グラップラー刃牙 外伝」も読んだ。
 どういうわけだったか完全に忘れたが、古本屋で働いていた頃だったと思う、どういういきさつだか忘れたのだが、このマウント斗羽とアントニオ猪狩の試合という話だけ、詳細に読んで、詳細に覚えている。
 外伝を読んでおいて、誓ってもいいが、本編は全く読んでいなかった。チラッとは読んだかもしれない。何かの隙に、しかし何の隙だったというんだろう。
 僕の働いていた古本屋というのは、大手ではぜんぜんないチェーン店で、客も少なかった。時間帯によっては、他の店員、店長なども含めて一人っきりになることも、しばしばあった。
 この刃牙という漫画は、いろんなシリーズ含めて、良く流れてくるなあ、そんなに面白いのか? と、思った記憶はある。
 レジ打ちを待っている間に頼まれた仕事といったら、漫画本の小口のヤケを、紙ヤスリでひたすら磨くことくらいだった。親指の第一関節が疲労で死ぬかと思った。
 繰り返しになるが、しかし、実際に外伝を一編まるまる読んだり、チョクチョク本編を読むなどといったことは、漫画本をほとんど家に置いてない環境で、どうやって読んだものか、まったく覚えていない。店のレジの背後や奥には、歩くのがやっとなくらい、売れ残りの漫画が積み上がっていた。とくに、有名シリーズの外伝などは、買い取りの量はかなり来るが、ぜんぜん売れない。めちゃめちゃ積あがっている。
 そんな環境の中で、一体いつ、グラップラー刃牙外伝を、まるまる一編読めたというのだろうか。全くわからない。

 話が逸れたけれども、グラップラー刃牙、外伝と読み進めて、そのシリーズのオールスター登場みたいな、次のシリーズ「バキ」を読んでいた所だった。
 ふと、アマゾンにチャージしている残高を見ると、二千円そこらになっていた。
 先日、二万円のチャージを行ったのだが……?
 はて? 「グラップラー刃牙」のシリーズは、ホラー漫画だっただろうか? 明らかにテイストは違う、なのに背筋が凍る。おかしい。
 四日間で。そうか。これで、自分の中になにか残っただろうか? 自問自答を何回か繰り返したあとで、もう刃牙のシリーズを電子書籍で読むことをやめた。

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