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Pさんの目がテン!

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Pさんが、目がテンになるほど驚いた本について、語っていきます。 目的と目的地はまだはっきりしないが、そのうち作家遍歴といえるものを編めたらいいが。
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記事一覧

Pさんの目がテン! Vol.83 傘とワクチン ピエール・デュピュイ『ありえないことが現実になるとき』3(Pさん)

(前記事)

 ようやっと、この本を読み終えそうなところまできた。足掛け一年かかった。そんなに難儀するタイプの本でもない。いや、そうでもなかったかもしれない。とにかく、そこに何か踏みとどまらせる何ものかがあったようにも思わないのに、思いのほか時間がかかった。
 途中から、期待していたような、科学的厳密性から離れて、観念的な話に滑っていくように思える場所もあって、少し残念に思えたところもあったが、基

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Pさんの目がテン! Vol.82 行きつ戻りつ、この本 ピエール・デュピュイ『ありえないことが現実になるとき』2(Pさん)

(前記事)

 ほとんど一年ぶりにこの本に戻ってきて、これを書いている。
 改めてこの本のあらすじを書くとこうだ。

 日本は、2011年に、自然災害もあるが、何より自分らの作り出した文明そのものによって、壊滅的被害が生じてしまった。壊滅的というのは、何十年という「あっという間」のことではなく、この先、何百年という期間、背負わなければならない負債を負ったということで、しかも、それは全人間に対する被

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Pさんの目がテン! Vol.81 ブリコラージュと料理 レヴィ=ストロース『野生の思考』3(Pさん)

 前回の流れを余り受けていないかもしれないが、『野生の思考』を最初に読んだ時に感銘を受けたのは、「ブリコラージュ」という工作法と、それの普遍化のくだりである。

「ブリコラージュ」とは、「コラージュ」という語(?)が入っていて似たような意味なのだが、既にそこにある、限られた物を組み合わせて何かを作るという行為のことで、その際、その素材が、たとえばレジン細工におけるレジンとか、工作をする際のナットと

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Pさんの目がテン! Vol.80 そも文化人類学とは? レヴィ=ストロース『野生の思考』 2(Pさん)

 というわけで、前回、取り上げるといって結局取り上げられずに紹介とイントロだけで終わってしまった、クロード・レヴィ=ストロースの、『野生の思考』について、内容に入っていきたいと思う。
 とはいえ、何年か前に、この本に挑戦した時は、真中までも行っていない、四章の「トーテムとカースト」で止まってしまっていて、今回、改めてそこから読み進めようと思って読んでみたが、流れがつかめなくなったから、また最初の第

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Pさんの目がテン! Vol.79 見よ、私は帰ってきた レヴィ=ストロース『野生の思考』 1(Pさん)

 見よ、私は帰ってきた。久し振りの、おそらく二ヶ月近く振りとなる「目がテン」の更新である。
 中身を全く欠いた、大まかな見取りを描いている。正直、この「目がテン」の形式というのも、最近、どこか重たいものを感じてきた。いや形式というものを考えて始めたわけではなく、維持すべき何かを持っているわけでもないのに繰り返すうちにそれはいつの間にか出来上がっていて、それをさらに勝手に重たがっているだけといえば、

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Pさんの目がテン! Vol.78 久しぶりの登場ですが一旦CMです(Pさん)

 カフェインの離脱症状を、いつも休日の夕方に感じる。カフェインにそれほど顕著な離脱症状が実際にあるのかわからない。離脱症状というのは、広く言って何かの化学物質の濃度が低位に変化することによる精神的作用のことだと思う。人間と人間の脳というのはずっと黄緑色の液体に満たされたビーカーに使っているSFのような情景そのままであるように、実際に様々な化学物質の混合した液体に浸されているわけだから、その濃度の変

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Pさんの目がテン! Vol.77 緊急寄稿!二つの「議会占拠」 ピエール・ルジャンドル『ロルティ伍長の犯罪 〈父〉を論じる』(Pさん)

 トランプ大統領の信奉者が、大挙して、連邦議会に、ある者は銃を持って押し寄せ、一時占拠し、その機能を停止させたというニュースを、今日未明にツイッターで見掛けた。
 事態の背景や、アメリカの現在の状況というものについて、僕がしっかり理解できているかは、はなはだ心もとない。しかし、何となくアメリカの政局を眺めるくらいのことはしていて、これが常態ならざる事態であることは、わかった。
 そこで、自分なりに

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Pさんの目がテン! Vol.76 笹舟 横尾忠則『言葉を離れる』2(Pさん)

(前記事)

 話を戻すと、ノストラダムスの大予言というのは、人類の運命とされたが、それはじつに悲劇的な想像力を倍加させて広がり、誰一人その運命から逃れられない、などと言われた。それと比べると、横尾忠則の言う運命という言葉は、それに抗い難い、自我を持っている個人としては、という性質は変わらないにもかかわらず、なんと自由で、チャランポランであろうか。
 横尾忠則の、自身を振り返ってみてつくづく感じる

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Pさんの目がテン! Vol.75 運命にアホみたいに翻弄される 横尾忠則『言葉を離れる』2(Pさん)

(前記事)

ぼくの知らない無意識の領域でぼくの運命の計画が進行していたとしたら、運命ってなんとふざけた演出家なんだろうと勘繰ってしまいます。時間にすればこの五、六年間にぼくは一体何を決断したというのでしょうか。全くアホみたいに見事に他人のいいなりに徹してきたように思います。
(横尾忠則『言葉を離れる』、52ページ)

 これは大げさに言っていたり、エッセイとして成立させるためにスタイルを作ってい

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Pさんの目がテン! Vol.74 他人の「目がテン!」を読む 横尾忠則『言葉を離れる』1(Pさん)

 横尾忠則の、最近出たエッセイ集、『言葉を離れる』を読んでいる。

 直前の記事で書いた。横尾忠則は、もう高齢になっている画家である。僕が印象に残っている彼の作品は、Y字路を描いた、確か「Y字路」と、『美藝公』という筒井康隆の小説と大々的にコラボレーションして、挿絵という以上にグラフィックデザインを前面に凝らした絵を本に描いていた事。世の中的には、もっといろいろあるのかもしれない。また、その記憶が

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Pさんの目がテン! Vol.73 尊大な新人 磯崎憲一郎『金太郎飴』1(Pさん)

 磯崎憲一郎の『金太郎飴』を読み始めた。磯崎憲一郎の、十年間分くらいの、エッセイやインタビュー、時評などをまとめた本らしい。

 確か、本人が考えた題名で、編集者か誰かに「違う題名にしませんか」と言われても、断固としてこれにすると言って決まったものだった気がする。
 これは去年末に刊行されたものだから、ほぼ一年ごしに買って読み始めたので、かなり出遅れた感じはある。
 しかし、読み進めると、一年の差

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Pさんの目がテン! Vol.72 妙に親しげな古典 キケロ―『友情について』(Pさん)

 十二月に入った瞬間に、またガクっと寒くなった。三月か四月にも、そんな話題が出ていた気がする。暑さ寒さが厳しくなる度に、部屋の空気がどうとか、空間がどうとか、他人の感じ方がどうとか、いろんなことが気になるものである。
 友情を作り、育む際にも、ぬるま湯であってはいけない。ときに厳しく……。

 キケロ―の『友情について』を読んだ。紀元前四〇年前後に書かれたらしい。おそらく、じつに親しみやすい古典と

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Pさんの目がテン! Vol.71 別の生と繋がることを夢見た哲学者 岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』6(Pさん)

(前記事)

 長くなったから、あとは適度に省きつつまとめよう、と思ったけれどもまた興味深い所が出てきたので、省けない。
 第六章、アクタイオーン。
 たぶん、各章の題材の切り取りは、この著者自身の、岡本源太の並べ方である。だから、それがブルーノの著作の中でこういう並びになっているわけでなく、おそらくもっとこみいっている。
 ともかく、アクタイオーンという、ギリシャ神話に詳しい人なら知っている、女

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Pさんの目がテン! Vol.70 何度でも処刑される哲学者 岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』5(Pさん)

(前記事)

 第五章「ヘレネ」。普遍美という考え方がある。ここの題名になっている「ヘレネ」というのは、画家によって描かれた女性で、画家が、五人の、最も美女と思われる人を目の前にもってきて、それぞれを合成して作り上げた、絵画の中の女性なのだという。現代で言う、江口愛実のことだ。何とグロテスクなカリカチュアであろうか。しかし、似たような性向というか願望みたいなものは中世からあった。美女を五人合成すれ

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