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Marga Jayyに首ったけ

フィリピンのボサノバの記事でもちらっとシェアした今一番ハマってるフィリピンのシンガー・ソングライターのMarga Jayy(マーガ・ジェイ)。

彼女がリリースした曲を大袈裟でなく少なくとも1日に30回は聴いてると思う(汗)。
セッションシンガーとしての活動期間もあり、YoutubeやSpotifyにはそれほど多くの楽曲が上がってるわけではないけどジャズ・ラテン〜ファンク、R&B、ロックまで実に幅広いジャンルの楽曲を歌い、そのどれもがハイクオリティ。もーこれはハマるしかない!という感じだ。
これはフィリピンの音楽が好き!と言う方はもちろんだけど、「カッコいいサウンドが聴きたい」「クールな歌が聴きたい」と思う方には絶対におすすめ!ということで早速ご紹介。


Marga Jayyって?

11歳の時にSouth BorderSarah GeronimoAiza (Ice) Seguerraといったトップアーティストのステージのオープニングアクトとして歌い始めたらしい。その後メジャーレーベルのセッションシンガーとしてGloc 9Stick FiggasAbraらラッパー・ヒップホップアーティストやIV of Spadesからソロに転向したボーカルUnique SalongaMorissette Amonらのバックアップボーカルを務めていた。
幼い頃両親の影響でクラシックソウルを聴き、米国在住の親類からはNYのジャズミュージシャンのサウンドを紹介され、10代の頃は従兄弟らの影響でLauryn HillやD’Angeloらに出会ったという彼女、R&B系のアーティストを中心に幅広く音楽を聴いていたようだ。
好きなアーティストとしてStevie Wonder, Erykah Baduらソウルシンガーに加えレゲエ・ジャズシンガーのBobby Mcferrin、Sax奏者のCasey Benjaminを挙げている。
2019年に香港のレーベルからシングルMananatiliでソロデビュー。同じ年に3曲入りのカバーアルバムをリリースしている。現在ジャズ・R&B系クリエイター・マルチプレイヤーのDan Gil (Vintage Boy)とのコラボで魅力的な楽曲をコンスタントにリリースしていて、最新シングルは2024年5月にリリースされた100 Mensaheだ。

オリジナルにカバーに、どんなタイプの楽曲も最高!

どのシングルも前作とは違うタイプの曲…と自ら語るように彼女がリリースした作品は実にバラエティに富んでいる。

2023年にリリースされたシングルUsok At Kape。いちばんのお気に入り。
この曲を何度リピートしたことか…(大汗)。
ポップでファンキー、もう最高❤️!…とボキャブラリーを貧しくさせるグレイトな1曲。
この手のアップビートでハイテンションな曲は勢い任せになりがちだけど、Marga Jayyは細部までしっかりコントロールされた実にクールなボーカルを聴かせてくれる。バックのパーソネルのプレイもこれまた超ゴキゲン。
ドラムはAverage White Bandの70年代の大ヒット曲Cut The Cakeを彷彿させる。フィルインといいクリソツ(笑)。ドラムのAlex Priceは明らかにAverage White BandのドラマーSteve Ferroneに影響を受けているか、Cut The CakeでのSteveのプレイを参考にしていると思われる。
Usok At KapeはYoutube、Spotify共に2023年となっているが、2021年にライブセッションの動画がアップされているのでレコーディングは21年でネット上にアップされたのが2023年なのか、以前からライブでよくプレイしていた曲を2023年にレコーディングしたのかは不明。
MVはタイで撮影されたもので、魚眼レンズを使ってバンコクの街やタイのランドマークを巡るMarga Jayyとバンドメンバーが映し出されている。曲調にピッタリと合うスピード感とカラフルな映像は旅行者用の紹介映像としてもおしゃれだと思う。タイに行った事ないけど、こんなふうに紹介されると思わず行ってみたくなる(笑・汗)。
ライブは↓

スタジオレコーディングと違うのはドラムと、SaxにフィリピンNo.1プレイヤーのNicole Tejedor(テヘドール)(Sax Diva PH)が加わっているところ(スタジオ版のSaxと金管はDan Gil)。Nicole Tejedorは個人的にフィリピンのCandy Dulferと呼んでるんだけど(と思っていたら彼女自身がインタビュー記事でガツんと来たアーティストとしてCandy Dulferを挙げていた(笑・汗)、素晴らしいアーティストなのでいつか記事にしようと思ってる。(ちなみにNicoleは動画でドラムを叩いているJohn Reluyaと2021年に結婚、現在彼女のアップデートにはNicole Tejedor、Nicole Reluya両方のクレジットが混在している)

2019年にリリースされたカバーEPに収録されているSign Your Name。オリジナルは1987年にSananda Maitreya(この頃はTerence Trent D'Arbyと名乗っていた)がリリースしたメガヒットR&Bバラード。シンプルなメロディとSananda Maitreya(Terence)の声質に負うところが大きい曲なのでカッコよく歌うのが非常に難しい曲だと思うけど、Marga Jayyは作り過ぎずスカし過ぎずうまく歌ってると思う。この曲でもフルートとSaxはNicole Tejedor。画面右端に時々登場するサングラスをかけたパーカッション&バックアップボーカルはシンガー・ソングライターでヒューマンビートボックスのプレイヤーとしても知られるZsaris。Zsarisもいい曲をたくさんリリースしているのでちょっと脱線だけどシェア↓

ちなみにSign Your NameのMVでスタイリスト(とメイクアップ)としてクレジットされているK A Antonioは2011年にデビューしたアシッド・ブルーアイドソウル系OPMバンドAJKAのボーカル。現在はスタイリスト業がメインのようだけど、彼女のようにフィリピンではプレイヤーとして一線を退いた後もサウンド以外の面で音楽に関わるアーティストは多い。音楽への関わり方、音楽の捉え方そのものがフィリピンの特徴的な部分と言えるかもしれない。クリストファー・スモールの言う「ミュージッキング」をライブ(実生活の場)で実践しているのがフィリピンなのかも。
脱線ついでにAJKAバンドのデビューヒットもシェア↓

Marga Rocks!!!

2023年リリースのこの曲はMarga Jayyの主なスタイルR&B〜ジャズ〜ラテンとは一線を画す辛辣な内容のロックナンバー。メッセージ性の強い歌詞でStuperstar (Stupid Starの造語)を罵倒しまくる。
この曲はデビューする前に書かれたもののようで、Stupidstarは見せかけの人気に浮かれている「スター」たちやそれを商品として消費していく業界へ向けた警鐘だけでなく、自身への戒めでもあるとされている。
R&B系のアーティストが社会にコミットする強いメッセージをハードなロックサウンドに乗せたものとしてすぐに思い出したのが1992年にEn VogueがリリースしたアルバムFunky Divasに収録のFree Your Mindだった。
アグレッシブなメッセージとロックという点では今シティポップの「オリジナル」として世界中で再評価されている山下達郎のアルバムFor Youに収録された「Hey Reporter!」にも通じるものがあるように感じる。
フィリピンのアーティストは若手、アイドル問わず結構政治や社会問題、自分が身を置く業界の姿勢に関心を払うものが多いのでこういう作品のリリースはインディーズアーティストならではというよりフィリピンのミュージックシーン全体に土壌があると捉えるべきだろうと思う。

最新シングルはシティポップ?

100 Mensahe。これが2024年5月にリリースされた最新シングル。
ラテンフレーバーの曲でDan Gilのプレイするキーボード(シンセ)とMargaのボーカルの絡みが実におしゃれ❤️。7分を超える曲だけど、聴き終わるともう終わったの?とついリピートしてしまう。
ところでこの曲はラテン、ネオソウルをブレンドしたとインタビューで語っている(Youtubeのdescriptionにも転載されてる)が、もう一つ、シティポップも曲の要素としている。
サウンドを聴く限りどこがシティポップ?となるが、これはシティポップの歌詞を参考にしているという意味だろう。
具体的には歌詞の中の
‘Sang daang mensahe na’ng sinulat sa telepono, Na kahit isa’ y wala namang pinadala sayo
という部分に現れていると思う。

シティポップは世界中で再評価されてるけど、サウンド、メロディが注目される中、フィリピンでは歌詞や80年代というシティポップが生まれた時代の日本の社会背景を参考にするアーティストが意外と多い。
Marga Jayyもジャズ〜ラテン〜R&B系のアーティストで、サウンド的にはシティポップとそれほど接点がなさそうだが、歌詞や背景にまで目を向けるとそこには「音楽」として通ずるものがあるようだ。

こんなふうに記事にするとMarga Jayyはフィリピンで人気のシンガーのようだが、一般的にはほとんど知られていない。
記事の冒頭でシェアしたUsok At Kapeは2023年リリースだけど、YoutubeのオフィシャルMVとライブにSpotifyのものを合わせてもまだ1万再生にも届いていない。
ポピュラリティがあればいいというものでもないけれど、これはあまりにもunderrated過ぎるように思う。
Marga Jayyの曲をいいな❤️と思った方は是非SNSなどでシェアしてほしい。

Marga Jayyのヒット曲はもちろん、最新のフィリピンポップスの中からクールな楽曲を選りすぐったSpotifyのプレイリスト「ContemporaryOPM」。4時間を超える長いプレイリストになってますが、お気に入りのアーティスト・楽曲を見つけていただければ幸いです。(随時追加中)


参考記事:
Double indie showcase: Marga Jayy and Nicole Reluya



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