見出し画像

「イヤホンとおじさん」【9月18日(水)】

 エアーポッズていうんですか?
 あの、白いワイヤレスのイヤホン、出始めの頃はうどんが耳から出てるみたいでダサい、と言われていたのに、あっという間にワイヤレスイヤホンの定番顔でのさばっている、世界の多様化を妨げている悪徳企業の作ったアレ。

 アレをね、装着したまんま働いているアルバイトの事務スタッフがいたんですよ。
 
 俺ってば、ちょっと面食らっちゃって。

 あれあれ?休憩中なのかな?まあちょっとした休憩時間にでも好きな音楽聴いてリラックスしたいのは分からんでもないし、それはまあ咎めることでもないしな、まあそうなら別段驚くようなことでも……

 とかなんとか考えていると、そのコ、コピーを取り始めるんですよ。

 いやいやいや、コピーを取ったらそれはもう休憩じゃないじゃん。よしんば休憩中で業務とは無関係に私的な用でコピー機を使ってるんだとすると、それはそれでイヤホンがどうのこうのとかではない公私混同で問題じゃん。マジで?勤務中にイヤホンで音楽聴くの?ラーメン屋でも怒られるのに?

 とかなんとか思いながら未知との遭遇に口をあんぐりとさせている(別段俺が迷惑を被ったわけではないので口をangryとさせてはいない)と、そのバイトのスタッフも、おっさんに凝視されることに対して訝しげな表情を浮かべているわけ。

 これが気の知れたスタッフなら、「いやいや、何か上から無線で秘密の指示でも出てるんか(笑)」と茶々を入れることもできたわけだけど、いかんせんまだ数ヶ月しか勤務していないうら若き乙女に、異常独身男性が、耳に装着している器物について声などかけようものなら、セクハラ・パワハラ・モラハラ・ロジハラ、あらん限りのハラスメントとのそしりを受けるやもしれないわけです。まあ本当に勤務中に音楽を聴いていたのなら、注意したって俺が責められるところではないにしても、ひょっとするとオシャレのつもりでアクセサリとしてつけているかもしれないからね。いや、もう10代や20代前半の若者にとって、アラフォー以降の中年なんて、存在すること自体がハラスメント=イグハラなわけで、貝のように慎ましくしておくに如くはないわけ。

 まあでもバイトのスタッフだから、別に放っておいてもよかったのだけれど、自分が授業中に生徒がイヤホンをしていたら、俺はどう反応するのが正解なんだろうなあ。さすがにそんなことがあったら、口をangryとさせてしまうと思うが、そこでのangryて、授業内容が聴き取れるか否かということよりも、もっと直感的な拒否反応に近いものだから、理をもって説き伏せるのは結構困難だよなあ。

 まあたぶん、面と向かった相手にイヤホンをつけたまま対応するのは失礼だ、という規範は多くの若者にも共有されているとは思うのだけれど、そういう肌感覚のようなものの扱いは本当に難しい。

 きちんと身につけるためには若者と常に接するしかないのだろうけれど、いい年して若者と積極的に交流を持ち続けようとすること自体が、若者の肌感覚とズレている気がして二進も三進もいかなくなってしまう。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?