野村監督から学ぶ、管理職として成功するのに必要なこと

「名選手、必ずしも名監督にあらず」とはよく言われる言葉です。

なんとなくそうかな、と思いますが、こと会社で「(昔)名選手、(今)名監督にあらず」という上司に当たると辛いものがあります。

私は管理職として丸5年過ごしておりますが、よくあるハイパフォーマーだったから管理職になった訳ではなく、営業成績サイテーの時期を過ごし、散々苦労した経験を持って管理職になっています。

だからそこ分かる、「名選手、必ずしも名監督にあらず」についてメモ。

最後まで読んでいただくと得られそうな情報は?
✔︎ 野村監督が語った「名選手、必ずしも名監督にあらず」の理由
✔︎ ビジネスに置き換えたらどうなるか?
✔︎ ハイパフォーマーは管理職になったら「お客様」を変えれば良い


1、野村監督インタビューより

ふと、もしかしたら野村監督、と聞いてももうピンとこない方も多いのかもしれない、と思いました。
野村監督はプロ野球で選手としてよりも特に名監督として名を残された方です。
より詳しくお知りになりたい方はこちらを。

その野村監督が、インタビューで「名選手、必ずしも名監督にあらず」についてお話しされたものを引用します。

「名選手、必ずしも名監督にあらず」。これにもしっかりとした根拠がある。現役時代にスター選手だった監督、特にスラッガーだった監督は、攻撃野球を好む傾向が強い。ホームランが何本も飛び交うような、素人が見てもわかりやすい、派手な野球が好みだ。

 言い方を換えれば、ただ打って走るだけの才能と技術に頼った粗い野球である。何かの間違いでハマれば確かに強いが、野球はそんなにうまくいくものではない。これでは到底、常勝チームなど作れない。

 また、スター選手はその才能からデータを必要とせず、細かいチームプレーとも関係なくやってきた者が多いため、いざ監督になったら緻密な野球ができない。そればかりか、その必要性や重要性をまるで理解しようとしない。そのため有効な作戦が立てられないし、相手の作戦を読むこともできない。

 そしてもう一つ。スター選手は自分ができたことは、皆もできると思い込んでしまっている。それを言葉に発してしまう。「なんでこんなこともできないんだ!」という言葉が、どれだけの選手を傷つけるか。思ったことは何でもできてしまうから苦労を知らず、そのため並の選手の気持ちや痛みがわからない。自分のレベルで選手を見るためにうまく指導ができず、言葉より感覚を重視してしまいがちなのだ。

 苦労を知らない選手は絶対にいい監督にはなれない。


2、ビジネスに置き換えると?

野村監督のインタビュー、いかがでしたか?
簡潔にまとまっていてこれで終わりでもいいくらいですが、それぞれビジネスに置き換えると、

☑️ただ打って走るだけの才能と技術に頼った粗い野球
=チームメンバーの才能と技術に頼った粗いビジネス
→トップ級だった人材が上司についているのですから、メンバー全員がトップ級、そんな組織はないですよね?
ということはうまくいかないと原因は全て「メンバーの才能と技術不足」になってしまいます。しかも解決はできません。

☑️才能からデータを必要とせず、細かいチームプレーとも関係なくやってきた(中略)その必要性や重要性をまるで理解しようとしない。
=データを軽視し、チームメンバーの連携を軽視する。戦略や競合分析も軽視。
→個々人の才能や能力が高いことを前提としたデータの使い方や、チームメンバー個々の得意不得意を考慮しつつチーム全体でのパフォーマンスを最大化するためのチームビルディングという視点が抜けていることで、メンバーが疲弊し、ついて来れなくなる可能性が高くなる。

☑️スター選手は自分ができたことは、皆もできると思い込んでしまっている。それを言葉にしてしまう。「なんでこんなこともできないんだ!」という言葉が、どれだけの選手を傷つけるか。
=メンバーがなぜできないか分からないため、「どうしてできないのか?」という言葉が思わず出てしまう。
→本人は本当に分からないから聞いてるのだが、それだけに部下は傷つく。さらに言われた部下はなぜ上司ができるのか分からないので答えられない。そのうち、悪い報告はしなくなる。

☑️ 自分のレベルで選手を見るためにうまく指導ができず、言葉より感覚を重視してしまいがちなのだ。
=指導ができない。指導をしようとしても感覚的で再現性がない。
→指導が「ここはガーと行くんだ」「パッとやればいいんだ」と感覚になったり、営業に同行すると、商談の途中から自分が主導権を握りセールスしてしまうが、「あの人だからできること」となり、誰も再現できないし理解できない。誰も教わろうとしなくなる。

さすがにここまでひどい状況はないとは思いますが、程度の差はあれ、このような上司は存在するのではないでしょうか?


3、あるハイパフォーマーの方

私は直近まで10数年に渡って主に営業系の研修を企画し講師もしていました。
その中でハイパフォーマーと言われる方だけ集めた研修をしたことがあります。

ありがたいことに、いまだに交流がある方が何人かいるのですが、管理職になって悩んでいる、という相談を受けたことがあります。まさに、部下がなぜできないか分からない、そんな難しいことを言っているとは思わないのに、という内容です。

そんな時、必ずご紹介しているのが、同じハイパフォーマーから管理職になった方の例です。

この方はもともと本社部門の方で、異動で営業を初めて経験され、苦労してハイパフォーマーになられた方です。どちらかというと人見知りではじめは営業は向いていないと思っていたそうです。

でも、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」という言葉を、「自分は愚者だから経験からしか学べない。でも、歴史からも学ぶために周りの方の歴史=周りの方の経験も学ぼう」と積極的に周りの方に教えを乞い、一方でそれを用いて自分なりの仮説を持って現場で実践し、その結果をまた検証し、というサイクルを愚直に行った方です。

幸いその時の上司の方が理解を示し、さほど取引の大きくない先、つまり失敗しても損害が大きくならない先を担当して、「どんどん失敗してこい!」と言ってくれたそうです。
(私はそれを聞いた時、体良くあまり人がやりたがらない先を回されたのでは?と思ってしまいましたが、ご本人は感謝されていました。ハイパフォーマーの方にはこういう何にでも感謝される方が多いですね。)

半年ほどすると、その小さなマーケットでも全社で上位の成績を連続して挙げるようになったのです。


4、あるハイパフォーマーの方が管理職になったら?

で、その方が管理職になった時には、そのチームが翌年から連続で高成績をあげるようになりました。

その方に聞くと、「メンバーに恵まれた。僕は何もしてない」としか言わないのですが、根掘り葉掘り聞いたところでは、以下をしていました。

☑️自分もトライ&エラーで学んできたのに、こうやればうまく行く、とか、こうやれば失敗しない、とは言えない。

☑️もし言えたとしてもそれは過去のこと。

☑️だから、みんなには自分が責任を取るので、最小の失敗を経験してもらうことと、それをメンバー同士で共有してもらうことをお願いしている。

1点目と2点目は成功体験が強い方からはなかなか出てこないのですが、自覚されているのがすごいです。

3点目も責任は自分がとる!という上司はいますが、「最小の」とはいえ「失敗を経験してもらう」というのを指導しているというのは驚きです。


この方に、失敗されたら困るし、育成に時間がかかって大変じゃないですか?と質問したら

だって今の僕のお客様はチームメンバーですから

という答えが返ってきました。

「営業時代、お客様のためにあれだけやってきたことからすれば、今は失敗したら謝りに行くだけだから楽ですよ」と笑っていらっしゃいました。


営業のハイパフォーマーの方々はお客様を知るところから始めます。
お客様の知識レベルに合わせて説明をしたり質問をしたりすることは得意です。
その対象が部下になるのです。

・最小の失敗を経験させる(その責任は上司がとる)
・部下をお客様と考えて観察する

この2つをお伝えすることで上司になって悩んでご相談頂いたハイパフォーマーの方々は成績が改善しました。


ハイパフォーマー(名選手)でも、人がどのような段階を経て学びを自分に取り込んでいくか、その段階には必ず失敗という経験が必要だと理解できれば、良い管理職(名監督)になれる、と言えます。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

読んでいただいたお時間分だけでも参考になったことがあれば嬉しいです。


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