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#138 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(11月30日〜12月4日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


11月30日(月) 調味料の売上は2割も伸びている?

全国味淋協会が制定した「本みりんの日」です。
「い(1)い(1)み(3)りん(0=輪)」の語呂合せと、鍋物などで本みりんを使う季節であることが由来です。

さて、みりんには「本みりん」と「みりん風調味料」とがあるのをご存知ですか?(私は詳しくは知りませんでした…)

「本みりん」はもち米・米麹・アルコールを長期間じっくり糖化・熟成して造られるのに対し、「みりん風調味料」はブドウ糖や水あめなどの糖類・米・米麹・うまみ調味料・香料などを短期間で調合して造られます。

そして最大の違いは、「本みりん」には14%前後のアルコールが含まれていることです(「みりん風調味料」は1%未満)。

ですから「本みりん」には酒税がかかっていて、その分価格が高くなっています。

また、製造メーカーも、「本みりん」は宝酒造やキッコーマンといった酒メーカーや醤油メーカーになります。

一方で、「みりん風調味料」はミツカンなどの調味料のメーカーが多くなっています。

味噌などと同様、地域ごとの味というものがあり、地場で高いシェアを持つ企業が多く、多くのメーカーが存在する市場です。

というわけで、正確な市場規模を示す統計があまり見つからないのですが、「本みりん」については酒税がかかりますので、国税庁が発表する統計で推定できます。

出荷量に対して税額が決められているので、「本みりん」1リットルの小売価格を500円として算出すると、500億円規模となります(税額は20億円、出荷量は100千kl(平成30年実績))。

ここまでの説明が長くなってしまいましたが、みりんに限らず調味料の売上は巣ごもりによって自炊の回数が増えた影響で伸びています。

食未来研究室、というサイトが非常に分かりやすかったのでご紹介しますす。

まず、月別のスーパーの売上ですが、調味料は2020年1月に比べて3月は120%を越える伸びとなっています。

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さらに、具体的にどの調味料が売れているのか、1店舗当たり金額という形で2020年3月実績データが掲載されています。

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金額ベースで一番売れるのって、味噌なんですねぇ。そして食用油、醤油、砂糖、ときて、5位がオリーブオイル。意外…
興味深いです(私だけ?)。

そんな中、今回主役のみりんは10位。月間で1店舗平均で10万円程の売上があるんですね。

記事本文には年齢別分析や、「麻婆豆腐の素」みたいな「中華メニュー調味料」の種類別売上なども掲載されていますのでご興味がありましたらぜひご覧ください。

→巣ごもり消費という言葉がメジャーになっている。自社の製品ラインアップでこの恩恵を受けているものがあるだろうか?また、一見直接的には無関係に見えるものでも工夫をすることで伸ばすことができるものはないだろうか?


12月1日(火) 鉄の生産、中国は日本の○倍?

日本鉄鋼連盟が1958(昭和33)年に制定した「鉄の記念日」。
1857(安政4)年のこの日、南部藩士・大島高任が日本で初めて高炉による製鉄に成功したことに因んでいます。

2019年の日本の粗鋼生産量は1億トンを割り減少しています。

そんな日本の世界におけるシェアですが、新聞などで分かっているつもりでしたが、改めて見ると、中国は圧倒的なんですね。2019年の粗鋼生産量は9.9億トンと日本のほぼ10倍。世界全体の53%を占めます。そして2位はインド(1.1億トン)。日本は3位となります。

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ただ、日本のメーカーは軽量で強度の強い「ハイテン」と言われる分野で強みがありますので単純な比較はできません。

2018年になりますが、メーカー別ランキングはこちら。

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中国の存在が大きいことがよくわかります。

実は、「鉄は産業の米」などと呼ばれていた時代もあり、国(経済産業省)が需要予測を四半期ごとに取りまとめて発表しています。

「2020年第3四半期鋼材需要見通し」が最新でして、直近の状況が分かります。

それによると、感染症の影響で、2020年第1四半期には、対前年比3割減となりましたが、その後は持ち直し、第3四半期には同1割減まで回復しています。

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どのような産業で鉄が使われているか、という統計もあります。

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これを見ると、最も多いのが、建築、次に自動車、土木、産業機械ということが分かります。

→上流である鉄鉱石、石炭は寡占化が進み、中国勢の台頭で価格交渉も立場が弱く、下流である自動車を初めとしたユーザー側では、技術力をつけた中国やインドの鋼材を購入する動きもあり、どこに成長、差別化を求めていくかが課題の業界。今後どのような展開が考えられるか?


12月2日(水) 日本人初宇宙飛行はTVの特番だった?

1990年のこの日、TBSの秋山豊寛記者(当時)を載せたソ連のソユーズTM11号が打ち上げられ、日本人初の宇宙飛行に成功したことから、「日本人宇宙飛行記念日」とされています。

これは、TBS創立40周年事業として宇宙にジャーナリストを送る「宇宙特派員計画」によるもので、ロシアに1,400万ドル(約20億円)を支払ってロシアの宇宙ステーション、ミールに滞在したものです。

打ち上げを中継した番組の視聴率は40%を超えたそうです。

スポンサーも大塚製薬、ソニー、ユニチャーム、ミノルタなどもつき、視聴率も取れたのでおそらく企画としても成功だったのでしょうね。

それにしても、思いついたとしても実行をしてしまう力に正直驚きます。企画した時期はちょうどバブルのピーク(日経平均のピークは1989年12月29日の38,915円)だったからこそ、と言えるかもしれません。当時の空気感がちょっと伺えます。

→破天荒とも思えるこの企画。周年事業ということで当然役員まで話が行ったはず。何を訴え、何が役員を決断させたのだろうか?


12月3日(木) 個人タクシーは全体の何割?

1959(昭和34)年のこの日、初めて個人タクシーの営業許可が下りたことに因んで「個人タクシーの日」です。

感染症前は結構お世話になっていたタクシー、自分で選べる時は、つい、車両のグレードがいい、個人タクシーを利用していました。

さて、個人タクシー、どれくらいあるのでしょう?

国土交通省の統計によると、平成30年度で32,315台の個人タクシーがあるそうです。ちなみに、法人等が保有するタクシーは195,136台ですから、全体の14%ほどが個人タクシーです。

タクシー業界は感染症で影響を受けている業種の一つではないでしょうか。

全国ハイヤー・タクシー連合会によると、タクシー業界の4月の営業収入は前年同月の4割以下まで低下し、5月もその傾向は変わらず大きな打撃です。

そのため、料理のデリバリーなども行うようになったことが報道されたりしていましたが減少分を埋め合わせるのは大変なようです。

感染症前になりますが、国土交通省がまとめた「タクシー事業の現状について」という資料を見ると、平成28年3月末時点で1運転者当たりの営業収入は、法人タクシーで506万円、個人タクシーで369万円、となっています。

法人タクシーの方が多いですが、法人側の取り分がありますので運転者の実際の収入とは異なります。

また、全産業と比較をしたデータもありますが、労働時間は長く、所得は低く、高齢化が進んでいることが分かります(実線がタクシー業界、点線が全産業)。

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平成27年までになりますが、時系列データもあり、こちらを見るとリーマンショック前の平成18年頃から輸送人員は低下傾向であったことが分かります。

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平成21年の適正化法により、車両数が減るのに伴って1日当たりの営業収入が上昇してることが分かります。

でも、タクシーの需要自体は減少し続けていることも読み取れます。

感染症がなくとも、業界として厳しい状況であったと言えるのではないでしょうか。

→日本では、ウーバーなどの配車アプリは「白タク」ということで普及しなかったが、仮に導入されていたらこの需要自体が増えたのか、それとも単なる市場の奪い合いになったのか?
また、タクシー業界では今後どのような展開が考えられるか?


12月4日(金) 映画の興行収入は年間どれくらい?

1982(昭和57)年のこの日、映画「E.T.」が日本で公開されたことに因んだ「E .T.の日」です。

「鬼滅の刃」がすごい勢いで歴代映画興行収入を塗り替えていますが、E.T.も同じような熱狂だったのかもしれませんね。

なにしろ、観客は1,000万人を突破し、1997年に『もののけ姫』に抜かれるまで15年も1位だったのですから。

さて、映画。ランキングは置いておいて、どのくらいの市場規模があるのでしょう?

日本映画制作者連盟のデータによると、ここ数年は大体2,000億円を少し上回るぐらいの興行収入で推移してきました。
2019年は「天気の子」、「アナ雪2」、「アラジン」などの好調で、2,611億円と大きく伸ばしていました。2020年にその勢いを、という期待も感染症に水を注された形です。

もう少し長い時系列データを「社会実情データ図鑑」というサイトがグラフ化されていましたので、転載します(洋画と邦画に分かれています。出典は同じ日本映画制作者連盟です)。

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こうしてみると、バブル崩壊後は邦画に勢いがなくなった時期がありますが、それ以外は邦画が洋画を上回っているんですね。

また、映画館のスクリーン数ですが、日本には3,583幕あり、以下の通り、イオンシネマが1位となっています。

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アメリカ、中国の興行収入のデータもありましたので載せておきます(出典:オタク産業通信)。

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中国が伸びていますね。
これはスクリーン数にも表れています。

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なんと日本の20倍!

ハリウッドが中国の受けを気にするのも分かりますね。

→一度は映画館離れとも言われた時期があったが、なぜ昨年から映画は復活したのだろうか?それともやはり一時的なことなのだろうか?


最後までお読み頂きありがとうございました。

1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。

毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
トリビアの泉、かもしれません。


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