【洋服屋の自分史⑦】たかが洋服であっても、その人にとってはかけがえのないものがある。ネクタイ編

質問ですが、

「たくさんのファッションアイテムの中で好きなアイテムはなんでしょう?」

私は、コート、セーター、そしてネクタイです。
当然、これらを身に着けづらい今の季節はあまり好きではありません。それまでは、ガマン。まわりが引かない程度にギリギリまで身に着けていますが、最高気温が30℃を超えてくるとさすがに無理。一般のみなさんと同じように軽装が中心。開き直って半袖とショートパンツなどの盛夏のファッションを楽しんでいます。

さて、今回取り上げるのは、大事にしているネクタイです。それがこちら⬇⬇⬇

先日、破綻のニュースが話題となったブルックスブラザーズのレップタイです。あまりのショックにその思いを投稿しました。

【アパレル業界の話⑩】ブルックスブラザーズの破綻に思う。|クスオのフクオ @kusuonofukuo #note https://note.com/kusuofukuo/n/nf41a05034d20

このネクタイは、ブルックスブラザーズが日本上陸25周年を記念して250本限定で製造展開したもの。ループにはシリアルナンバーが刺繍されています。アメリカントラッドの象徴である左上がりのラインを施した定番のレップタイです。

生地は打ち込みがしっかりとしたハリのあるイングランド製、製造はアメリカ製です。巾は10.5㎝もあり、実際に締めるとたっぷりとした立体感のあるシルエットをつくることが出来ます。

実は、この2本のネクタイこれまでにそれぞれ一度しか使用していません。その後は、大事な時に締めるものと考えて保管しています。個人的には、本来洋服は使ってなんぼという考えを持っていますが、こればかりはそうそう気軽に使う気持ちにはならず購入して15年近くたってしまいました。いずれここぞというとき出番がくるだろうと思っています。

ブルックスブラザーズのネクタイといえば、大学時代、福岡の岩田屋百貨店の重厚なショップのガラスショーケースの上に数本束ねられ陳列されていたものを食い入るように眺めていたことを今でも思い出します。独特な色使いが20代の若者のトラッド心を掴んでいたのは、紛れもなく事実でした。

私には、自分自身のファッションスタイルを象徴する大切なアイテムのひとつです。今後、ネクタイはほとんどの人にとってわずらわしいものであり消えていく不要なアイテムになるかもしれませんがその魅力は洋服好きにとってはかけがえのないものであることは間違いありません。少なくとも私には。

イギリスのファッションをオマージュして、新しい文化を創り出したブルックスブラザーズのネクタイを抜きにトラッドを語ることはできないと改めて感じる今日この頃です。

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