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組織運営の技術

組織運営の技術-統計文書
 
 中央省庁の基幹統計公文書が杜撰に管理されているという。建設業の統計に二重計上がされていたという話がありました。人口の統計でも信用できないことがあるとか、保存すべき文書が破棄されていたというという報道もありました。
公文書管理委員会はあるものの標準的な統計業務マニュアルが、具体的な表現で整備されているわけではないのかもしれません。統計業務の作業手順を示すマニュアルは各省庁に完備されていると思いますが、仕事を進めるときに作業ごとの完了を複数の担当者で確認する書類(Inspection Form)はあるのでしょうか。
もし、統計が実態を表していないということになると、統計を検討して先の見通しを立てることはできません。見通しのないまま組織を運営することは、羅針盤を持たないで荒海を航海するようなものです。
また、記録書類を破棄してしまうと将来に生かすこともできません。通常、組織の運営は全く新規の業務を執行する場合でない限り、過去の業務記録があります。仕事は過去を検証して現状を確認する現在地の把握から始まります。仕事の記録があれば、記録を検討して先を見通す作業は困難なことではありません。
組織の運営には直接的に自らの記録が重要ですが、運営環境を知るためには公表される統計記録は間接情報として必要不可欠です。記録が取られていなかったり、廃棄されたりしていることは組織運営の後進性を感じざるを得ません。
組織運営の基本は作業手順(Procedures)の確立です。次に手順に従って、記録を取ることです。記録とはすべての作業記録を指します。作業記録、日報、月報、四季報、議事録、メモなどです。そして取った記録は残すことです。記録を残すためにはファイリングシステムの確立が欠かせません。
残念ながらわたしたちには標準的なファイリングシステムがありません。組織ごと個人ごとに作業手順はバラバラですし、ファイリングシステムもバラバラです。標準的な作業手順が確立されていませんから、学校時代に社会業務の基礎として学ぶことはありません。組織への新規参入者は毎回一から学ぶ必要がある訳です。
 彼我の仕事の品質を比較すると、わたしたちの業務品質は他の先進国と比べて少なくとも劣ってはいないといえるでしょうか。統計の数値を書き換えたり、必要な資料を破棄したりすることが国の組織にあるということは、より多くの人がより長い時間をかけて業務に従事して仕事の品質を守っているといえるでしょうか。
 このように政府や産業界のいろいろな不祥事を見る限り、私たちの業務品質は必ずしも高いとは言えません。他の先進国よりわたしたちは同じ仕事に多くの人と時間をかけているにもかかわらず、決してその品質は誇れるものではないようです。
 仕事の品質を守り、今よりも少ない人数と少ない時間でこなせるようにするためには、組織への新規参入者が当初から力を発揮できるようにすることが必要です。組織ごとの文化が仕事の進め方の基礎となっている限り、力を発揮できる人を育てるために時間がかかります。
私たちの労働生産性が先進国の中では低いということが長らく続いています。なぜ低いのでしょうか。答えは簡単です。わたしたちの仕事の進め方は、同じ仕事をたくさんの人で多くの時間をかけて執行しているからです。
 多くの人がみんなで一緒に参加してきたことと、労働生産性が低いことは背中合わせです。同じパイ(仕事)をより多くの人が長く参加できるようにしてきたことは、わたしたちの失業率が低いということとは無関係ではないのです。
仕事の進め方を検証することは労働生産性をあげることに繋がります。労働生産性を上げるためには合理化が必要となります。合理化を進めすぎると職を失う人が出てくるという懸念がありますが、労働生産性をあげることが即、合理化につながるということは正しい理解とは言えません。なぜならば、新しい分野の新しい仕事に多くの人がかかわれるようになるからです。
わたしたちは統計や記録の重要さを再認識するためにも組織運営の技術を習得しなおすことが必要ではないでしょうか。先進国では確立されている組織運営の技術を勉強して、よりよい組織の運営手法を確立してより多くの人が新規の事業に従事できるようにすることが求められているのではないでしょうか。
 

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