今、物をつくる前に人をつくれているだろうか?

「部下が思うように仕事をしてくれない」、「何か秘訣はないか」。

よくいただく質問ですが、実はこれ、私にとって苦手な質問のひとつです。

なぜなら、過去、私自身がずっと指示型の上司であり、「人を育てる上司」とはほど遠い人間だったからです。

一方で、私は、当時の上司から多くの挑戦をともなう成長機会を提供してもらい、上司の支えを受けながらなんとか成功させたり、その逆で手痛い失敗をしたりと、大いに学ぶことができました。いまでは、過去、そういう経験をさせていただいたことが、私がここまでこれた大きな要因だったのだと感謝しています。

部下に対して、1から10まで細かく指示をして、その通り仕事(作業)をさせていては、現場の個人、チーム、組織は、決して自分の能力を超えることはありません。

細かく指示をするのではなく、現場の一人ひとりに高い目標や難しい課題に自ら挑戦してもらう(挑戦したくさせて、挑戦できる環境を提供する)。だからといって丸投げせず、しっかり見守る。

考え抜いた末に困っているときは、即座に手を差し伸べる。そのときも、スパッと答えを提供してしまうのではなく、「何に悩んでいるのか」、「なぜ悩んでいるのか」、「どんな選択肢で悩んでいるのか」などを聞きながら、あくまで、部下自らが気づき、再び動き出せるよう働きかける。場合によっては、専門家のところへ学びに行ってもらう。

チームの中の多様なメンバーの、それぞれの個性と長所をどんどん引き出し、それによって様々なエキスパートが育ち、「言うべきことが言える」風土と相まって、レベルの高い多様な意見、多彩な発意や智恵がどんどん積み重ねられる競争力の高いチームになっていく。

仮に、チームメンバーのスキルが毎年20%ずつ伸び、それが4年続けば、1.2✕4乗で、組織能力は2倍になる。やがて、組織は自分の想像をはるかに超え、自律的な成長を続けていくでしょう。

そんな組織に身を置き、誰が一番成長するのか?

それは上司本人だと思うのです。

「仕事ができる人」だけを集めてチームをつくり、ミッション(プロジェクト)にあたらせる、という考え方もあります。一流人材だけでプロジェクトチームを組むのですから、仕事のスピードは早く、”一時的”にはパフォーマンスも高いかもしれません。

しかし、「弛(たゆ)みなく人が育つ組織」であれば、これまでできなかったことでも、やがては成し遂げることができるし、人が成長するスピードがどこにも負けない組織であれば、仮にいまは競合に負けていても、やがて必ず追い越すことができると信じています。

「人をつくる」ことを「弛みなく」続ける。

スピードにおいても、誰にも負けない。

社会からお預かりしている人財を最大限活かし、競争力強化につなげる。

これが、パナソニックの創業者 松下幸之助がいう、「物をつくる前に人をつくる」ということだと考えています。

 


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