リクナビ2020、2021に登録している学生が被るリスクについて

改めまして株式会社ミクスチャーの楠美と申します。
以前勤めていたリクルートキャリアの個人情報保護法違反についてツイートしたところ、思いのほか大きな反響を得てしまった為、この問題について述べると共に、リクナビ2020、リクナビ2021に登録している学生について、どの様に自身の個人情報が利用される可能性があるか、そのリスクについて説明をしていきたいと思います。
正直随分と長くなってしまいましたので、「リクナビの内定辞退率に関する問題の経緯」、「個人情報保護法違反について」等は学生は読み飛ばしても良いかなと思います。また法解釈については弁護士でもないため、現法を読んだ上での私見であることをご理解ください。
最後に弊社は営利企業につき、後半部分を有料としている点についても、合わせてご理解ください。

リクナビの内定辞退率に関する問題の経緯

発端は8月1日の日本経済新聞の報道で「リクルートが学生の内定辞退率を十分な同意なく有償で企業に提供した」というもの。この事について下記の様なツイートをしました。

報道直後はTwitter内でも情報が錯綜(お陰で注目された訳ですが)していましたが(まとめサイトご参照)、リクルートキャリアからは下記の様な文面がリリースされています。
【本サービスにおける個人情報の取り扱いについて】
これまで本サービスでは、学生が当社の就職情報サイト「リクナビ」にご登録いただく際にご同意いただいたプライバシーポリシーに基づき、リクナビサイト上での行動履歴の解析結果を取引企業に対して提供しておりました。
中略
昨今では個人情報保護に関する社会の認識も大きく変化しております。海外におけるルール整備の潮流も受け、本日の一部報道にもあります通り、関係各所から当社のプライバシーポリシーの表現が学生に伝わりにくいものとなっているのではないかとご意見をいただきました。
以下、全文

端的に言うと、学生から同意を得ているから「内定辞退率」の算出、提供は問題ない。
社会認識が変わってきている最中である、海外はルール整備しているが日本は違う、プラポリの内容は伝わりにくいだけである、という言い訳が成り立つから当社は悪くないというスタンス
ですね。
他にも「内定辞退率」を出すことの正当性が記載されていますが、詭弁でしかないと考えます。
この時点では違法な行為があるという事は認めていません。

その後リクルートキャリア内で8月2日に、実は同意を得ていない学生が約8千人いる事が発覚。
これまでの同意を得ているから問題ないという意見が通らなくなります。
また、時間は分かりませんが夜に発覚したという事で当日の発表は見送ったようです。
上記を受けて3日に不備のあるプラポリを修正と書いてありますが、どのプラポリのどういった内容を修正したのかの説明は無し。
プラポリの修正点が不明の為、学生は何に対して新たに同意したことになったのかは分からない。

8月5日(月)に個人情報保護法違反であることを認めて謝罪、及び「リクナビDMPフォロー」のサービス停止を発表しています。このリリース内には以下の文面が記載されています。
【概要】
中略
一部画面への『リクナビDMPフォロー』に関する表記漏れと、同意取得フローの考慮不足があり、7983名の学生の皆さまから適切な同意を得られていない状態であったことが判明しました。
【原因】

リクナビでは、2019年3月に『リクナビDMPフォロー』について言及したプライバシーポリシーへ変更いたしました。学生の皆さまが使用する複数の画面においてプライバシーポリシーに同意いただくサイト構成になっていますが、一部の画面においてその反映ができていませんでした。
中略
なお、『リクナビDMPフォロー』を利用していたすべての企業に、当社より提供した分析スコア等の個人情報を削除いただくよう順次依頼を進めております。
以下、全文。

「複数あるすべてのプライバシーポリシー」ってなんだ?というのが最初の突っ込みどころなのですが、この点も含め後述します。
また日本経済新聞の記事では、「「17年から一部企業で利用」リクナビ、なお説明不足」と報道され、16年から分析を開始したとあるので、リクナビ2016に登録していた学生の個人情報から利用していた模様です。

その後、東京労働局の立ち入り(8/7)、厚労相が購入企業も調査対象と言及(8/8)と問題が広がりを見せる中、ホンダ社がデータを購入していたことを初めて発表(8/10)し、それ以降、トヨタ、大和総研、りそな、京セラなど多様な大企業が購入を発表し謝罪をするものの、各社とも共通して「合否には使用していない」という発表となっています。

そして、ホンダ社がいち早く発表したことから10日ほど遅れて、リクルートホールディングスおよびリクルートキャリア内でも内定辞退率を利用していたことを発表(8/20)。
利用時期や、グループ企業(リクルートジョブズ、ライフスタイル、住まいカンパニー等)において使用していたかは公表しないという事で、使用しなかったというと嘘になるので言わないという対応と邪推できます。

その際に特設サイトを開設し、データが販売されていたかを調べられるようにする。ということを発表し、23日に特設サイトが開かれます。
しかし、特設サイトと呼べるようなものではなく、リクナビのトップページにある「一部報道についてのお知らせ」のリンク先をリクナビにログインした状態で開くと、ただの報告ページに下記の赤枠の一文が追記されるようになるというお粗末な対応。

また、この際に小林大三社長の名前で謝罪メールが送信されたという事ですが、内定のお断りを直接お詫びにいくのがマナーと言っている中で、メールで済ますなという批判を浴びている状況です。

個人情報保護法違反について

続いて、本件の問題点の一つとして個人情報保護法に違反している可能性があるという事です。個人情報保護法について物凄く簡単に説明すると、「個人情報を取得する際は、利用目的を伝え、第三者に渡す際には同意が必要」ということです。他にも重要なところは沢山ありますが、この要点を踏まえておいてください。

1.同意のない提供が7,983名あった。
最初の明確な違反行為として、リクナビのプライバシーポリシーにある「行動履歴等の利用について」の中の「・採用活動補助のための利用企業等への情報提供(選考に利用されることはありません)。」の一文が、19年3月に追記されたとのことですが、その追加についての同意を取る導線を踏まずに、企業に情報が提供された学生が7,983名いたという事。
要は「内定辞退率の算出にあなた自身を特定した行動履歴を使いますよ」という事を全く知らされていない人たちが7,983名いたということになります。
これは、
「【 第18条 第2項 】直接書面等による取得、【 第18条 第3項 】利用目的の通知公表」といったところに違反しています。

また細かい点ですが、上記の行動履歴等の中に外資就活ドットコムを運営するハウテレビジョン社から行動履歴を取得するとの記載があるものの、ハウテレビジョン社が個人情報の取得や同意をどのような形で行っていたか不透明ながら、これも同意のない第三者提供といえる可能性があります。

2.リクナビ会員約80万人への利用目的の特定不足
本件が問題となった一番の要因は、学生が「そんな風に使われていたなんて知らなかった」ということ。個人情報保護法の15条においては、

【 第15条 第1項 】利用目的の特定
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
【 第15条 第2項 】利用目的の変更
個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

とある通り、どの様に個人情報が利用されるのか目的を特定する必要がありますが、上記の「採用活動補助のための利用企業等への情報提供(選考に利用されることはありません)。」で、どれだけの人が内定辞退率が算出されると思えたでしょうか?

上の画像の通り、プライバシーポリシーの利用目的欄には、行動履歴等は広告・コンテンツ等の配信・表示、本サービスの提供とうたっておきながら、後半の行動履歴等の利用についての欄で、「採用活動補助のため・・・」と利用目的を2か所に分けて記載するという非常にわかりづらい表現をしています。まして「採用活動補助=内定辞退率」と結びつくのは、ずっとこのことを検討していたリクルート社員だから想定できるのであって、一般の学生には不可能でしょう。
その点で、全会員に対して利用目的の特定不足、同意の不足が認められると考えます。
及び、利用目的の変更は「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。」とあり、学生からしてみれば採用されるために個人情報を提供しているのに、まさか不採用にする為の情報に改編されて利用されるとは思いもよらないでしょうし、とても「合理的に認められる範囲」とは言えないと考え、この変更自体が違法行為と考えます。
また、Pマーク付与事業者はこういった目的外利用が行われない様に社内チェック体制の確立が必要となりますが、機能していなかったという点ではPマーク付与事業者としても不適正といえるでしょう。

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リクナビ2020、2021に登録している学生が被るリスクについて

楠美 義明

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