新入生レビュー 第四夜:『ザ・ボーイズ』

こんにちは、京都大学SF・幻想文学研究会(KUSFA)です。
今年のKUSFAはコロナの影響で対面での活動ができず、すべてがオンライン進行です。

新入生のひとりひとりが自分の好きなコンテンツについて書いた「新入生レビュー」企画、第四夜はマサヤンによる、テレビドラマ『ザ・ボーイズ』の紹介です。

毎年京都で行っているSFイベント、「京都SFフェスティバル」の案内が記事の最後にあります(今年は9/19のオンライン開催です)。京都SFフェスティバルでは9/12まで企画の持ち込みを募集しておりますので、何かかやりたいな、と思っている人はぜひ企画を送ってくださいね。

ザ・ボーイズ

ヒーローに憧れたあのころ。この世のあらゆるしがらみを超えて、ヒーローっていうのは何でもできるような気がしてた。でも中学生になった自分はふと気づく。「ヒーローって無職が多いよな。あいつらってどうやって生活してるんだ」。怪人に改造されたとしても、スーパーパワーを持っていても、変身ベルトを持っていても、お金を稼いで生活をしていくことは大切だ。いい年こいて無職でありながら、ポーズをとって変身して、スーツを着てヴィランと戦う、そんな彼らの「痛さ」について一つの答えを出した作品『ザ・ボーイズ』。ディズニー及びMCU作品に思いっきり中指立てて、ヒーローの痛さ、弱さ、孤独さを描き出した傑作アメコミ原作セカイ系ブラックジョークヒーロードラマ。シーズン2が最近始まった。

Amazonプライムオリジナルムービー『ザ・ボーイズ』。グロいと聞いて観るのをためらっていたのだが、アラン・ムーアが好きなら見た方がいいと聞いて全10話観てみた。確かにかなりグロい。彼女は音速ヒーローに轢かれて腕だけになるわ、ヒーローの一人は尻に爆弾詰められて爆散するわ、イルカは車にひかれて血の水たまりになるわで。ただ血の表現は水っぽいさらさらした感じだし、肉が見えたりするタイプのグロさではないので、あんまりグロ耐性がない人でも観れるんじゃないかと思う。
そして、そのグロさを補って余りあるのが、そのストーリー。
舞台は2019年のアメリカ。この世界にはスーパーパワーを持ったヒーローが数多く存在しており、そのすべてを大企業である「ヴォート社」が管理していた。ヴォート社はヒーローを使ったグッズや映画などのメディア利用、レスキューなどで利益を上げている。慈善活動として行われていたヒーロー活動が、利益を目的とした資本主義のものに変わり腐敗してしまっている、そんな世界の話。
そしてそこの世界で、電気屋で働いている冴えない男のヒューイがこの物語の主人公である。ある日、ヒューイが仕事から帰っていたところ恋人が、音速のヒーロー、Aトレインに轢かれ死んでしまう。恋人を失った悲しみに暮れるヒューイの前に「ザ・ボーイズ」のリーダーのブッチャーという謎の男が現れる。ブッチャーはヒーローに対し個人的な恨みを持っており、ヴォート社の秘密を暴こうとする。仕方なくも、恋人の復讐のためブッチャーに協力するヒューイ。果たしてヒューイは復讐することができるのか。ヴォートに隠された秘密とは何なのか……

このドラマの面白いところはヒーローの「人間化」という面においてマーベル・シネマティック・ユニバースを上回っていることにある。マーベルの世界ではヒーロー=善人、紳士だったのが、ザ・ボーイズではヒーローを傲慢で下品な心の貧しい存在として描いている。
ヴォート社一番のヒーローであるホームランダーは見た目と能力はスーパーマンだが、性格はマザコンで、副社長の母乳を吸うようなシーンがある。魚類と会話ができるヒーロー、ディープは、一話目では新人のスターライトに性交渉を強要するなど最低な側面が目立ったが、後からエラのある自分の体にすごくコンプレックスを持っていることが明かされる。音速のヒーロー、トレインAは自分が最速でなくなることにすごくおびえているような描写がある。このようにヒーローこそ思春期の少年であるとして描いているのがこの作品の面白いところだ。
もうひとつ面白いのはこの作品がセカイ系であるところだ。主人公であるヒューイはブッチャーに言われるがまま行動し、自分が本当に復讐をしたいのか誰にも相談できずに流されていく。ブッチャー自身も復讐に取りつかれており、他人や世界のことなどお構いなしで行動していく。まさにこの孤独感こそセカイ系。ヒーローたちも先ほど述べた通り思春期男子なので孤独だし、悩む。そしてその中で何かを失っていく。まさにセカイ系。アメリカにもセカイ系ってあったんだなぁ。

この作品はエロシーンやグロシーンにあふれており軽々しく人に勧めるべきものではないと思っているが、アメコミ好き、アランムーア好き、セカイ系好きは観て損がないと思う。あと芸能界の黒い話題をパロディ化したような話もあるのでそういうのが好きな人も。
あとホームランダー役のアントニー・スターはホームランダーをやるにあたってドナルド・トランプをもとにしたと言っているので、アメリカの政治的な話が好きな人も是非。

京都SFフェスティバル(京フェス)開催のお知らせ

京都SFフェスティバル(京フェス)開催のお知らせ
 京都SFフェスティバル(京フェス)は毎年、秋に京都で行っているSFコンベンションです。が、2020年度の京フェスは、状況を鑑み、京都ではなくオンラインで開催することになりました。

開催日程は
9月19日(土) 18:00~24:00
で、ZoomとDiscordを併用して行います。参加費は無料です。

SFファンやクリエイターが自分の話したい題材を企画として持ち込み、オンラインで開室したところに、その題材に興味がある人が訪ねてアクセスする、という形式です。

今のところ、こんな企画案が上がっています。
http://kyofes.kusfa.jp/cgi-bin/Kyo_fes/wiki.cgi?page=%B3%AB%BA%C5%B3%B5%CD%D7

興味のある方はぜひ、こちらの参加登録フォームから登録をお願いします。自動返信でDiscordへの招待リンクをお送りします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScid3YTWz3Zjzu9g7npxMsuIBscuZ__DaRYnpCfW8pDaEM7aA/viewform

企画を新たに持ち込みたい!という方は、こちらから申し込みをお願いします。
http://kyofes.kusfa.jp/cgi-bin/Kyo_fes/wiki.cgi?page=%B4%EB%B2%E8%BB%FD%A4%C1%B9%FE%A4%DF
趣味のあう仲間を見つけるチャンスですよ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?