草野崇/スタジオ930

どうでもいいこともどうでもよくないこともたくさん考ることってやっぱり大切なんだなぁと最…

草野崇/スタジオ930

どうでもいいこともどうでもよくないこともたくさん考ることってやっぱり大切なんだなぁと最近思っています。歌ったり写真撮ったり印刷工したりデザインしたり文章書いたりしていましたが、今は協同組合の代表として中小企業の皆様のサポートをしています。https://jahic-kj.com/

最近の記事

不真面目な友人

学生の頃、Sという友人がいました。 どちらかというと「不真面目」な男でした。 授業にはほとんど出席せず、いつも行方不明。 しかも服装はボロボロで、酔ったら服を・・・。 なのに、みんなは彼のことを「大先生」と呼び、とても慕っていました。 私も彼に会えるのを楽しみにしていました。 「今日は会えるだろうか、明日こそは会えるだろうか」と。 念願叶って会えたら何をするのかと言うと、ただ語らうだけ。 当時、私は写真を学んでいましたので 自分が撮影している写真のテーマや読んだ本に

    • その青は何色?

      イギリス人男性と結婚した友人からこんなことを聞きました。 「お医者さんに子どもの蒙古斑を  幼児虐待の跡と思われて警察に通報された」 蒙古斑とは赤ちゃんのお尻が薄青い部分です。 日本人をはじめ、モンゴル人や他のアジアの民族では一般的ですが、 ヨーロッパではほとんど見受けられないのでこのようなケースが起こるそうなのです。 「知らない」ことによる誤解。 私たちは誤解によるトラブルに出会うと 「知れば誤解も解けるよ」と思ってしまいます。 知れば本当に誤解は解けるのでしょ

      • ドラマはあるのかい?

        何かをしようとするたびに思い出すことがあります。 大学生の時に宮崎県日向市へ 自動車の運転免許を取りに行った時の話です。 3週間ほど自動車学校近くの宿に泊まり 短期間で免許を取る「合宿免許」だったのですが 宿で井村さんという男性と相部屋になりました。 当時、写真を学んでいた私は 課題提出のための撮影をしなければならなかったので 教習時間の合間をみて近所を散歩するのが日課でした。 ある時、私がいつものようにカメラを持って撮影に行こうとすると 井村さんが話しかけてきました

        • 彼の物語

          ずいぶん昔のことです。 夜遅く電車に乗っていると、ある駅で彼が乗り込んできました。 その瞬間、車両に乗っていた人たちは彼から少しずつ遠ざかっていきました。 彼があまりに特徴的だったからです。 顔や手は黒く汚れていて髪は伸び放題でボサボサ。 着ている服はボロボロで履いている靴も穴が開いている。 年齢は20歳前後。 彼は乗車すると、今にも転びそうにフラフラなりながら 隣の車両を覗き込んだかと思うと車両の連結部付近に倒れ込むようにしゃがみこみました。 そして、床をじっと見つめ

          りんごの味

          通学路の途中に大きな病院がありました。 その窓からはおじいさんが毎日手をふっています。 おはよう、おはよう。子どもたちに向かって一生懸命に。 少年は照れながらも、大きく手をふり返しました。 ある日のこと。 少年が病院の前を通り、窓の方を見ると おじいさんが少年の方を向いて手招きをしているのがわかりました。 他にもたくさん人がいるのにどうして? 少年は恥ずかしい気持ちをおさえて窓の下に行きました。 すると、おじいさんは窓からりんごを一つ落とし 「持っていきなさい」と身ぶり

          隣の世界

          私が大学生の時に経験した出来事です。 大学に入学したばかりの頃、親睦会ということで 友人の家で食事会をすることになりました。 集まったのは5人。私を含めた3人が先に着きました。 後の2人は遅れてくることに。 そのアパートは間取りがワンルームで壁も薄いため 角部屋である友人の部屋にいると 人が階段を上がってくる音が聞こえます。 私たちは窓から通りを時折見ながら なかなか来ない友人たちを待っていました。 その時、車が止まる音が聞こえました。 「バタン。バタン」 「コッ

          人生の地図

          学生時代、私は少しでも時間があれば 寝袋、カセットコンロ、鍋、水を持って 西日本各地を野宿してまわりました。 その時に必ず持っていくもの。 ライダー用の地図。 その名も九州沖縄2輪車ツーリングマップ。 ※今は「ツーリングマップル〈7〉九州沖縄」という名前になっています。 手のひらサイズながらかなり詳細な情報が載っています。 山岳林道から観光の名所まで。 なかにはコメント付きのスポットもあります。 「ただ走るだけ」 「夕日が美しい」 「どこを見ても山ばかり」 「ひたすら

          おばあちゃんは知っていた

          以前住んでいた家の近所を通った時 隣に住んでいたおばあちゃんのことを思い出しました。 そのとき私たち家族は亡くなった友人の法要へ行くために 車に乗り込もうとしていたところ 買い物帰りの隣のおばあちゃんとばったり会いました。 私たちが正装していたので おばあちゃんはサラッと流すようにこう聞いてきました。 「何かあったのかい?」 いつもとは違う聞き方なのです。 私が「法事で・・・」と言うと おばあちゃんは一言「いろいろあるからねぇ・・・」 とつぶやきました。 時間に遅

          おばあちゃんは知っていた

          問題児と優良児と大人

          ある男の子がいました。 その子は大人の人たちから問題児と思われていました。 なぜ問題児なのか? 感情をすぐに出してしまうからです。 怒って大声を出す。 泣いて黙り込む。 人を叩いたり蹴ったりする。 では、その子はなぜ感情をすぐに出してしまうのでしょうか? 別の男の子の話です。 その子は大人の人たちから優良児と思われていました。 なぜ優良児なのか? いつも朗らかでやさしいからです。 声を荒げて怒ることがない。 がまん強い。 友達にやさしく接する。

          問題児と優良児と大人

          10年後の手紙

          その会社はたくさんの社員がいた時期もありましたが、 今は社長と奥さんの2人しかいません。 次第に業績が悪くなり給料が払えなくなってしまったからです。 「ごめん。今月も厳しいから給料はもう少し待ってくれ」 ないと言われたらどうしようもありません。 社員はガマンするしかありませんでした。 遅れてでも給料が支払われるなら・・・と思ったからでした。 しかし、そんな状態も長くは続きませんでした。 仕事が減り、もうどうしようもなくなったのです。 社長は会社をたたもうかと思いました

          小さな声 ~ かんたんで、みじかいお話

          月は少しの間、目を閉じました。 誰にも気づかれないように。 目を閉じるといろいろなことが分かりました。 町はずれを流れる小川のせせらぎ。 昼間、一生懸命に お母さんのお手伝いをしていたあの子の寝息。 お母さんのほうはというと あの子の頬をそっと撫でています。 月は小さな声で呟きました。 みんな、いつものようにしているのだろう。 だけど、自分はそれに気づかなかった。 日々は・・・。 そこまで言うと、月は言葉を止めて ゆっくりと息を飲み込みました。 そして、

          小さな声 ~ かんたんで、みじかいお話

          タンスの中の手紙

          上半身はスーツ、おへそから下はパジャマ。 写ってないから気づかないだろう。 多くの方がWEB会議の時についやってしまいます。 このエピソードを聞くたびに、モデルの写真撮影に立ち会った時のことを思い出します。 撮影場所は人気ヘアデザイナーのショー&セミナー会場でした。 ショーの合間の限られた時間の中で、撮影は行なわれました。 照明のセッティングが終わり撮影開始。 カメラマンとやり取りをしながらモデルがポーズを取り始めます。 すると、その場の空気がすっと変わります。 モデル

          タンスの中の手紙

          不安スイッチを入れてはいけません

          NiziU。 知らない人がいないくらい大人気の9人組ガールズグループです。 私はオーディション・プロジェクト「Nizi Project」のことは全く知らず、 テレビや動画サイトで見るようになって、陰ながら応援するようになりました。 先日、ネットでNiziUの興味深い記事を読みました。 オーディションの際になぜ彼女たち9人に決まったのか。 プロデューサーのJ.Y.Parkさんはこう言ったのです。 「プロとして常に安定したパフォーマンスが出せるかどうかで選んだ」 これはと

          不安スイッチを入れてはいけません

          畑入門は仕事入門

          畑を借りて野菜を育てていたことがありました。 トマト、ナス、ピーマン、きゅうり、スイカ、サツマイモ、ジャガイモ、たまねぎ、にら、キャベツ…。 私は子どもの頃から母の趣味ぐらいしか畑とのかかわりがありませんでしたので「畑仕事入門」のような本を購入し畑を耕しました。 ある時、いろいろ肥料を混ぜて土作りをし、サツマイモの苗を植えました。 しばらく経つとツルも伸び、葉も青々として大きくなったので家族で楽しみに収穫の日を待ちました。 すると・・・。 小さなイモばかりで食べられそう

          畑入門は仕事入門

          「みんな」とか「全部」とか「似た者同士」とか、そんなものは本当はないのです。

          30歳の頃、どうしてもラジオのパーソナリティになりたくなり、 ある人気パーソナリティに弟子入りしました。 しかし、3ヶ月ほどしてクビに。 理由は、若くないわりに喋りが下手だから育てようがない。 私の中では、喋るのは下手ではないかなと思っていたので 正直ショックでした。 師匠にクビを宣告され、 「喋りが上手いのと下手なのとの違いは何なのか?」 と(師匠を前にして)ぼんやり考えていると、 私の心を察してか、師匠がこう言いました。 会話が面白いのと、ラジオで面白く喋るのとは違

          「みんな」とか「全部」とか「似た者同士」とか、そんなものは本当はないのです。

          おおきなきがほしい

          新型コロナウイルスの感染が拡大するずっと前。 大分にある飯田高原に家族で遊びに行った時のことです。 高原は久住連山への登山客や観光客で大変な賑わいだったのですが 私たち家族はあまり人が来なさそうな静かな林の中を散策しました。 すると、林の奥に低めの草が一面に生えている広場があり、 その端に大きな赤松(らしき)木がありました。 私はそれを見た途端、子どもの頃に楽しんだ空想遊びと ある絵本のイメージとが心の中で重なるのを感じました。 佐藤さとるさんの「おおきなきがほしい」

          おおきなきがほしい