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新型コロナウィルスと世間との戦い

新型コロナウィルスの蔓延を防ぐ為に政府は各イベントを自粛するように“要請”を始めた。

これにより要請とはいえ“自粛”を余儀なくされた各イベントは多く、スポーツや格闘技までその影響は及ぶ。

ボクシングは3月の興行は全て中止という判断を取り、新日本プロレスも決まっていたイベントも中止または延期せざるを得なくなった。

世間に認知されているスポーツやイベントは社会的な責任を背負わなくてはならない、とされている。

世間から外れたことをすればそのイベントが総スカンされることは間違いないのである。

悪くいえば世間にビビってしまった訳である。

ボクシングはJBCが管轄しているので中止を決めればジム主催の興行は全て中止となる。

これは偏に統轄する組織が存在しているからで、ジムが組織に逆らって勝手にボクシングをすることが出来ない。

同じ格闘技でもプロレスは統一された組織が存在する訳でもないので大元の組織が全てのプロレスを中止にせよとお達しが来る訳もないのである。

それに、プロレスが一ヶ月の間興行を中止にする訳にもいかない。

理由はほぼ言わなくても分かるが、プロレスは常に綱渡り状態で月を開けてしまったら団体そのものが潰れてしまうからである。

以前蝶野正洋がプロレスに於ける医療用コミッションの設立を案じていたようだが、それが実現している兆しは全くない。
医療用コミッションが確立されれば今回の件でも中止の選択も取れたであろう。
中止になってもケアが出来るのであれば少なくとも損害を減らすことも出来たであろうが、これも希望的観測に過ぎないのだろうきっと。

新日は中止を決めたが、ZERO1は行うつもりらしい。
コロナでの大感染を防ぐよりも中止になって蒙る損害をなくさなければ団体そのものの存続が危ぶまれるのでそれを選ばざるを得ないという感覚は中小零細問わずあるようである。
大谷晋二郎は若手レスラーを保険に加入させているようである。

保険に加入させていることがトピックとなるのだから保険に入れていない団体とかもあるのだろう。
保険に加入させるにもお金がかかるからそれさえも捻出するのが難しいということである。

結局、3月の間でさえもプロレスをやり続けているところは相当経営的にも綱渡りなのだなと感じる。

社会的責任よりも、団体の存続を選んでしまっているということである。

そんなことをすれば世間から批難囂々なのかも知れないが、最早世間にすら一瞥にもされていないものだから如何にプロレスが世間から全く承認されない団体であるかを証明するものとなってしまった。

ないものを“ある”と証明しようとするのは俗に言う「悪魔の証明」なのだが、ニュース番組の中止または延期されるスポーツなどにプロレスが初めから入ってないのでプロレスがスポーツとは認識されていないということになる。
スポーツだけでなく他のライブイベントや劇なども紹介されるがプロレスは紹介されない。

しょうがない。

プロレスはプロレスファンが思っている程世間から全く相手にされない興行なのである。

キングオブスポーツと新日本プロレスは謳うが、世間はスポーツだと思ってもいない訳である。

プロレスも世間との闘いである筈だろうが、結局3月中でも開いているので全然世間に全く向いていないことになる。

団体も苦渋の決断を迫られるが、結局振り向いてくれる世間が初めから存在しないので中止にしない決定を下すのだろう。

世間から全く相手にされない原因はいくつかある。

先ず、団体が多過ぎることにある。
昔は一つしかなかったのに、今じゃ数え切れない程ある。
レスラーのエゴで団体を割って出て行くことでファンが増える筈もなく雲散霧散となっている。
割った団体同士でシェアを取り合うのでレスラーを集めることが更に難しくなり団体のクオリティが低下する。
こうなると既存のファンさえも離れてしまう。

統一する意思もなく、我こそが正しいと思えば隘路に嵌るのは目に見えている。

新日本から更に分かれた団体と言えばどこか、先ずは挙げるとするなら先に挙げたZERO1である。
ZERO1の歴史は言うまでもないが、スポンサー的には新日本と同じブシロードに近いので緩やかな統一はなされていると感じる。

翻って、全日本プロレス系は団体の四分五裂が凄まじい。
全日本から分かれた団体の一つであるNOAHはスポンサーや支援団体をいくつも変え、結局DDTの傘下に収まってしまった。
全日本自体はWWEと提携するようではあるが、少し前に分かれたWRESTLE-1は僅か数年の命で団体そのものが休止となってしまった。

曙が割って出た団体「王道」はどうなっているのだろう?
曙自身が闘病中ということもあって団体そのものが活動中止になっているようにも思える。

割って出た団体がどうなったかという歴史が如実に表すものだと感じる。

多くのファンを抱えるというよりも、既存のファンが離れるのを防ぐために必死になっているようにも捉えられる。

ただでさえプロレスはテレビ放送がなくて多くの人に観て貰う機会が失われているのでそうなるのは当然と言えば当然とも言える。

NOAHが必死に団体存続を懸けて形振り構わなくなる姿勢も理解出来る。
DDTの親会社であるサイバーエージェントはAbema TVも手掛けていたりするのでネット放送も期待出来る。
NOAHは永らく日テレ系列で放送していたが、それが打ち切りとなってCSのG+に移り、今度はテレ朝系列の方に移ることとなった。

今の時代プロレスを残すとは放送局にとってどう考えているのだろうかと思う。

新日本やドラゴンゲート以外は若い世代や新規を獲得するのは難しいようで、両国国技館をそこそこ埋める大日本プロレスでさえも3月の興行の開催を踏み切っているのである。

詰まり、どの団体もひと月でも欠けてしまうとピンチとなってしまう。

これはプロレスだけでなくどの事業者も同じだろう。

本音を言えば、コロナの安全宣言を早いところ発表して欲しいところだが二週間の自粛要請から更に十日間伸びてしまった。

同調圧力に苛まれる団体には同情こそすれ、世間に反目してまで開催に踏み切る狂気の感覚もやはり理解し難い。

プロレスだけでなくコンプライアンスを表明するもう一つの団体がある。

K-1である。

選手達の刺青等を試合時には肌色スプレー等で覆ったり、対戦カード発表の際の乱闘芸を封印しようと対世間にはコンプライアンスを重視しているように見せているが、3月22日のさいたまスーパーアリーナで開催するK'FESTA.3は強行するらしい。
開催自粛や無観客と言った選択は取らないようである。
大相撲の大阪場所やプロ野球のオープン戦は無観客試合を取っているが、K-1はコロナに関してのアナウンスは一つもなく開催に踏み切るようである。

コロナ自粛の全体主義に抗う感じでこれはこれで立派にも見えるが、観客の中で罹患者がいてそれでコロナを撒き散らしたらどうするのだろうかと思ってしまう。
コンプライアンス重視する振りをしているが結局はこの団体にコンプライアンスは見掛け倒しのものでしかなかったようである。

テレビ中継がないのは大口スポンサーが就かなくて、且つドーピング検査も全く行われていないとなると、今行われているK-1は凡そスポーツと言えるものでもないということを証明してしまっているのである。
現行のK-1はRIZINやWRESTLE-1や東京ガールズコレクションと同じグループである筈が、団体に関してはほぼ自分で努力しろと言っているように見える。

城戸康裕は去年のK-1よこはまつりでドーピング検査を行えるようにスポンサーも見つけると宣言しているが、コンプライアンスとはこのことでもあり、まともなスポーツとして出発するにはこれも満たさねばならない訳である。

今後K-1がどのようになるかは分からない。

自粛要請に留まっていた日本政府だが、法案を通したことで強制力が強まる可能性がある。

ただ、コンプライアンスを無視し続ければ軈て竹篦返しが来ることは間違いない訳で、今後のK-1だけでなくプロレス団体に改めてその姿勢が問われて来る。

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