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Mangata

あんたのお気に入りの腕時計
月面模様の文字盤を
うんざりするほど自慢してた
ガラスを撫でる指先が
妙に生々しく蘇る

あの日あんたが望んだ答えを
それらしく唱えてあげていれば
あの日言えなかった想いも
伝えることが出来たのかな
残された自分に酔って
イイハナシ風に上書き保存

寄せては返す波の上
純白の文字を示す銀の秒針は
あの春の夜と同じリズムで
今も時間を刻んでる

あんたが好きだった腕時計
見づらいんだとぼやく割には
毎朝欠かさずつけていた
鎖の巻き付く手首の色が
やけにくっきり目に浮かぶ

あの日分かってあげていれば
何かが変わっていたのかな
あの日分かっていたとしても
知らんぷりしただけかもね
細かいことは置いといて
ご都合主義のハッピーエンド

海に伸びていく光の道
白藍の月を乱す銀のさざ波は
あの春の夜と同じリズムで
孤独な音色を刻んでる

あんたは自分を月だと言った
照らしてくれる太陽が要ると
どっかで聞いた陳腐な例え
馬鹿馬鹿しくて笑っちゃうけど
あんたが本気で縋るなら
あの腕時計を身につけて
いつでもあんたを想ってあげる

あの日聞けなかった質問を
潮風に吐き出してみれば
あの日と同じしょっぱさで
打ちひしがれちゃうだけかもね
センチメンタルに身を任せ
錆びた時計を投げ捨てた

水面に浮かぶ丸い月
淡白な心臓を貫く銀のナイフは
あの春の夜と同じリズムで
鈍い痛みを刻んでる

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