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仮の親3

そんなある時、ザード夫人は、ふと、怖くなった、そう、今、自分が置かれている状況に気づいたのだ。このままだと自分は、あの忌々しいフルヴィルに殺されてしまうかもしれない。遠い土地へ、逃げてしまおう、と考えていたのです。しかし、石橋を叩いてわたるような性格のザード夫人は、ちょうどつい最近、フルヴィル夫人に赤子ができたと、聞いたので、復讐も兼ねて今夜、フルヴィル夫人の赤子を拐い、人質にしようと、恐ろしいことを考えていたのです。一方、フルヴィル夫人の館では、ザード夫人が恐ろしい企みを考えている事も梅雨知らず、笑顔に包まれていた。
(続く)