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いてもいなくてもよくなることについて:中森弘樹・福尾匠・黒嵜想鼎談

「あなたがいてくれるだけでいい」。 「あなたが」に力点を置けばこの「あなた」の存在がまるごと肯定されているように読めるし、「いてくれるだけで」に力点を置けばそれが誰かに関わらずとにかく誰かがそこに「いる」ことが大切なのだと読めます。いずれにせよ、たんに「いる」だけのことが「くれる/あげる」といった、行為としての価値をもつのは考えてみれば不思議なことです。こうした価値は実際のところ社会のなかでどのように機能しているのでしょうか。あるいは反対に、「いるだけでいい」ということがなお

    • 【鼎談公開収録】いてもいなくてもよくなることについて:中森弘樹・福尾匠・黒嵜想

      次回記事の鼎談の公開収録をおこないます。見学希望者の方は下記の概要を確認のうえご連絡ください。 主旨「あなたがいてくれるだけでいい」。「あなたが」に力点を置けばこの「あなた」の存在がまるごと肯定されているように読めるし、「いてくれるだけで」に力点を置けばそれが誰かに関わらずとにかく誰かがそこに「いる」ことが大切なのだと読めます。いずれにせよ、たんに「いる」だけのことが「くれる/あげる」といった、行為としての価値をもつのは考えてみれば不思議なことです。こうした価値は実際のとこ

      • 2019年8月19日

           7月18日に京都アニメーションを襲った放火殺人事件から1ヶ月ほどが過ぎた。犠牲者は35人を数え、加害者とされる人物を含め、現在も多くの身体的・精神的ダメージを負った人々が手当てを受けている最中だという。戦後最大とされる規模の事件ということもあり、その巨大にして凄惨なダメージの内容を、ネットやテレビなどの各種メディアが連日報じ続けている。  それらの詳細はここでは振り返らない。だが、とてつもなく痛ましい事件であることは疑いようもない。被害に遭われた方々が受けた深刻な傷

        • 脱げないヴェールのかぶりかた:遠藤麻衣ロングインタビュー

          記事概要 今年4月に「日本発のクィア系アートZINE」と銘打たれた『Multiple Spirits(マルスピ)』の第2号が刊行された。遠藤麻衣はこの雑誌の共同編集であり、アーティスト、俳優でもある。 アーティストとして「アイ・アム・フェミニスト!」という個展を開催したかと思えば《アイ・アム・ノット・フェミニスト!》という作品を発表し、編集者としてあくまで暫定的に「クィア系」という言葉を冠すると宣言する遠藤の活動は、どうしようもなくつかみどころがないように思われた。 インタビ

        いてもいなくてもよくなることについて:中森弘樹・福尾匠・黒嵜想鼎談

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        • 「ひるにおきるさる」の情報
          3本

        記事

          「ひるにおきるさる」公募原稿の選考結果

          「ひるにおきるさる」で公募をおこなっていた批評文について、世話人の黒嵜と福尾で選考した結果、残念ながらこのたびは採用原稿は無しということになりました。 なによりまず、まだひとつしか記事の上がっていない極小の媒体の公募にもかかわらず、力のこもった原稿を送ってくださった応募者の方々に感謝いたします。残念ながら掲載にはいたりませんでしたが、どうか気を落とされることなく、今後の執筆に励んでいただきたいです。われわれ自身も引き続きみなさんを刺激するようなものを作っていくことができれば

          「ひるにおきるさる」公募原稿の選考結果

          「ひるにおきるさる」は批評を探しています

          批評を公募します。 内容:批評でしか書けないもの 字数:1万字程度 選考:黒嵜と福尾が行い、ひとつをこのnoteに掲載する 締切:今年の5月末 提出:wordファイルで、件名を「ひるにおきるさる公募原稿」としtakumi.fukuo@gmail.comに送付する 原稿料:3万円

          「ひるにおきるさる」は批評を探しています

          「ひるにおきるさる」をはじめます

          黒嵜想、福尾匠 猿は昼に起きない。哺乳類のうちでは霊長類の祖先が初めて完全な昼行性に移行したらしい。恐竜が絶滅したあとの、約5200万年前の話だ。ヒトが文字どおり日の目を見ることができるようになったのも、もとをたどればわれわれが見知ったスケールとは桁外れの爬虫類が小惑星に頭をぶつけて絶滅したおかげだということになる。ヒトが絶滅してもゴキブリなりウィルスなりは生き延びるだろうという言いかたがあるが、そもそもそういうきっかけで猿は朝に起きるようになり、ヒトになっていったわけだ。

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          「ひるにおきるさる」のひと

          黒嵜想:1988年生まれ。批評家。音声論を中心的な主題とし、批評誌の編集やイベント企画など多様な評論活動を自主的に展開している。活動弁士・片岡一郎氏による無声映画説明会「シアター13」企画のほか、声優論『仮声のマスク』(『アーギュメンツ』連載)、Vtuber論を『ユリイカ』2018年7月号(青土社)に寄稿。『アーギュメンツ#2』では編集長、『アーギュメンツ#3』では仲山ひふみと共同編集を務めた。twitter @kurosoo 福尾匠:1992年生まれ。現代フランス哲学、批

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          「タトゥーは自己表現じゃない」アーティスト亜鶴ロングインタビュー

          記事概要 亜鶴(あず)は、「顔」をモチーフにした油絵を描くアーティストだ。しかし、そんな彼にはもう一つの「顔」がある。彼は持てる皮膚のほぼ全てに、タトゥーをはじめとした身体改造を施しており、また彼自身も、依頼者の身体にタトゥーを彫る仕事を生業としている。いわば「彫師」として生きている。  さらに彼は、昨年逆転無罪を勝ち取ったことで話題の「タトゥー裁判」にも遠くない関わりを持っている。自身が参加した「自営と共在」というグループ展覧会で彼は、会期中にこの裁判について扱ったシンポジ

          「タトゥーは自己表現じゃない」アーティスト亜鶴ロングインタビュー