【随筆】 文旦(ぶんたん)
文旦という、これが特産、大きな黄色い柑橘で、大きいものはこれも特産、新高梨と同じくらい。
と、冗談さておき、真面目に言えば、ソフトボールよりも大分大きく、小玉メロンほどは優にある。
これが中の果実の美しく、薄緑がかった透明の、しっかりとした房の詰まる。青い香りと酸味と甘み、瑞々しさと、味も美味いものである。
しかし、それは出始めの頃、取り置くうちに徐々に黄色く、酸味も抜けて、それが贈答用でない地元用、サンタの袋かと見紛うような大袋、その一袋幾らという雑なものにもなれば、汁がなく、さくさくとした食感に、甘すぎず酸っぱすぎずの不思議な味わい、これが特に好きである。
無論、出始めも美味いものではあるが、三月終わり、四月の投げ売り状態の文旦は、これはものの好き好きで、この頃が一番塩梅が良く、年の在庫が消えるまで、売り場を巡っては買い付けるのだ。
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