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鬼滅の刃(無限列車編)をより楽しむために

こんばんは。くろねこです。


映画「鬼滅の刃無限列車編」を見に行ってきました。

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もー、煉獄さんカッコよすぎです!

涙なしには見れない映画、見終わった瞬間に「もう1日見たい!」と思った映画初めてです。


このnoteは感情の高ぶりそのままに書いたnoteです。



何でこんなに感情が昂ったのか?
そもそもなぜこんなに鬼滅の刃が大ヒットしたのか?


コピーライターの目線から書いていきます。



なぜ大ヒット漫画が生まれるのか?

鬼滅の刃大ヒットの理由を探るのに大きなヒントとなるのが過去のヒット漫画の存在です。

2000年以前のドラゴンボール(1985年〜1994年)
2000年代に入ってからのONEPIECE(1997年〜現在)
そして2020年の鬼滅の刃(2016年〜2020年)


ドラゴンボール(1985〜1994年)

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ドラゴンボールは主人公である孫悟空が次々に現れる強敵から地球を守る物語。


ONE PIECE(1997年〜現在)

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主人公のルフィは小さな島の出身。海賊王に憧れ、旅の途中で仲間を見つけながらひと繋ぎの財宝を目指す物語。


鬼滅の刃(2016年〜2020年)

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家を留守にしている間に鬼に家族を惨殺された主人公の炭次郎が唯一残った家族である妹:ねずこの鬼化を食い止めるために鬼と戦う物語。



一見すると、3作品ともバトル漫画で的を倒すことを目的にしている、ほぼ同じ構成のように見えます。


ですが、それぞれの漫画で背景が少しずつ異なります。それが時代背景にマッチしているから多くの人の共感を得ている。



例えばドラゴンボール

ドラゴンボールが流行っていた当時はバブル真っ盛り。

日本は高度経済成長期の真っ只中で、日本企業が世界を席巻していた時代です。

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1989年の世界時価総額ランキングです。日本企業が世界の上位を独占しています。

日本国民はといえば、いい大学を出て、一流企業に就職する。その中で成果を出していい給料をもらう。これが唯一の成功法則であり、お金が絶対価値。国民全員がそれを信じていました。


この時代背景を正確に捉えたのがドラゴンボールです。

強さと言う絶対唯一の価値を手に入れるために、愚直に修行する。そして、より強大な困難に打ち勝つ、そして世界中から英雄として称えられる。

そんな姿に憧れを抱くと共に、自分と悟空を重ね合わせることで、さも自分が大きな困難を突破しているかのような達成感を得ていたのだと思います。



例えばONE PIECE

2000年初頭に起こったライブドア事件。

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メディアは揃って堀江さんを取り上げ晒し者にしました。しかし、一方で堀江さんの生き方を支持する人が現れ始めたのもこの頃です。

バブルが崩壊し、従来のレール(一流大学→一流企業)に疑問を投げかける人が現れ始めました。日本人に起業という選択肢が現れ始めた時代。

今では起業のハードルも随分と下がりましたが、当時はかなりハードルが高かった。だからほとんどの人はハードルを飛ぶ勇気が持てない。堀江さんのような一部の人間だけがその進むことができました。

しかし、マイノリティが非難されるのが日本社会。

憧れはあるものの自分の選択できなかった道に挑戦する人を素直に応援できない。悪として叩かれてしまう。そんな時代です。


そこに当時したのがONE PIECE。

一般的には悪とされる海賊を主人公にします。そして正義であるはずの海軍が敵。読者は悪を応援します。

ルフィは海賊であるために必要な要素に欠落しまくっています。船は操縦できない、海図は読めない、料理はできない、そして泳げない。

それらの欠けている要素を仲間たちが補って、麦わら海賊団というチームで巨大な敵に挑んでいきます。


起業というマイノリティの道を選択できなかった読者は、自分の夢をルフィに託します。仲間を集め、強大な敵を次々となぎ倒していく麦わら海賊団に自分の夢を実現してもらう。その過程を毎週読んでいる。そんな感覚です。



では鬼滅の刃は?

鬼滅の刃が始まったのは2016年。社会現象になったのは2018-2019あたりでしょうか。

・終身雇用制の崩壊
・増え続ける税金
・海外に拠点を移す有能な人材
・世界で戦えない日本企業

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特に若い世代は日本の将来に絶望しています。
企業に就職しても上司に憧れることはできず、転職を繰り返したり、自分の足で交流を広げ、メンターを見つけていくしかない。それが現代です。


鬼滅の刃は、

炭次郎が家に帰ると、家は鬼に襲われていて家族が惨殺されている

そんな絶望的なシーンから始まります。

そこから炭次郎は残された希望であるねずこを救うために鬼化を防ぐ方法を探す旅に出ます。


ヒット漫画は時代の背景を如実に捉えています。

ドラゴンボールが昔のまま、今新連載として始まってもおそらくヒットはしないでしょう。


その証拠に、今放送されているドラゴンボールの新シリーズは悟空一人の戦いではなくなっています。

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常にベジータという相棒がいて、複数人で敵に立ち向かいます。

そして悟空は最強ではありません。
ビルス、ウィスという悟空よりも強い破壊神というキャラクターが存在します。強さが絶対価値のドラゴンボールにおいて、悟空がトップではない、トップでなくとも物語が進んでいく、過去のドラゴンボールではあり得なかった構図です。時代に沿ってアップデートをしています。



鬼滅の刃の対立構造

鬼滅の刃の対立構造は鬼 vs 人間です。

この設定の肝になるのは、鬼が元々人間であることです。 とあるきっかけで人間に対して復讐心が芽生え、無惨(鬼のボスキャラ)に出会って鬼化する。それが鬼が生まれる瞬間です。


鬼は強さ以外の全てを犠牲にして、人間に復讐することだけを目的にします。一方で、人間は我が身を挺して、周りの人のために鬼と戦う。こんな構図です。



鬼は人間の敵ですが、元々は人間。味方です。本当に些細なきっかけで闇落ちして人間の敵になってしまいます。


些細なきっかけというのは個人の欲望が爆発的に膨らんだことです。
「人間に復讐したい」
それが鬼の行動の源泉です。
全ては自分のためです。無惨のためではありません。



これは今の社会でも十分に起き得ることです。
世の中に価値提供してその対価としてお金を手に入れる人もいれば、人を騙してお金を手に入れる詐欺師もいます。

詐欺師を呼ばれる人も最初から詐欺をしていたわけではありません。あるきっかけから人を騙して簡単にお金を手に入れる方法を覚えてしまう。そこで踏みとどまれずに自分だけが楽してお金を手に入れる方法に染まってしまう。闇落ちです。



そこを踏みとどまって戦っているのがねずこです。

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ねずこは鬼に噛まれながら(闇落ちのきっかけを与えられながら)鬼になるまいと、鬼と戦い続けます。

そして徐々に鬼の要素が薄まっていく。


鬼滅の刃は現代社会における人 vs 人の構造を鬼を登場させることで表現した作品といえます。



これを考えながら映画を見ると、、、

映画のセリフが全部名言に聞こえるようになりますw

これ嘘じゃなくて本当そうなんですよ。


あ、ここからは映画のネタバレ含むので、ストーリーを全く知らない状態で見たいっていう人は読まないことをお勧めします。





前半の下弦の鬼との戦いは、コンフォータブルゾーンから抜け出せない人間の描写です。

コンフォータブルゾーンは快適な領域。過ごしやすい状態です。


人は基本的に変化を嫌います。新しいことを嫌う。

それは今が居心地がいいからです。

新しいことに挑戦しようとすると誰かが止めようとする。後ろ指を刺される。ネットで叩かれる。いろんな障壁があります。障壁があるように感じてしまいます。実際に行動に移すと、こういった障壁は存在しないことがほとんどなんですが、行動に移す前はとんでもなく高い障壁があるように感じてしまいます。

それが無意識の壁。それを突破できないと、現状を打破できない。


突破するためには自分の首を切らなければなりません。

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つまり過去の自分を捨てないといけないということ。
過去を捨てないと次のステージには進めない。

過去を捨てるのは非常に勇気がいる行動です。しかし炭次郎、善逸、伊之助、煉獄の4人は過去を捨てることに成功し、下弦の鬼を討ち取ります。



そして、後半の上弦の鬼。

自らの欲望のために全てを捨てた鬼と、世界を救うために自らの命を燃やす柱の戦い。

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もうこの戦いに関しては全てが名言なので是非劇場で聞いてください。

泣きます。間違いなく泣きます。



鬼滅の刃といえばストーリー

鬼滅の刃がヒットした理由としてストーリーを上げる方が多くいらっしゃいます。鬼殺隊にも鬼にもストーリーがあって、それが濃く描かれているから没入感が高いと。


私はそれでは少し弱いと思っています。


ナメック星でフリーザの過去を語られても響かないですよねw

それと同じで、ストーリーを語るだけでは足りなくて響くストーリーだったからこそ、多くの人の心を動かし大ヒットにつながったんじゃないかと考えています。


響くストーリーとは何か?

読者が共感できるストーリーです。


例えば、生まれた時から才能に恵まれたエリートで、その人が何の努力もなく世界のトップに立つ物語。
こんな物語では誰の共感も得られません。


読者が自分を主人公に投影してこそ、共感できる物語になります。


鬼滅の刃で鬼側のストーリーを描いているのは、鬼も元人間だからです。ちょっとしたきっかけで闇落ちした。それは現代社会でも起きていることです。だから多くの読者が共感する。

人間のストーリーに共感する
鬼のストーリーに共感する
ねずこの奮闘に共感する

鬼滅の刃は様々な角度から現代社会を描写した作品だからこそ社会現象になった。私はそう思っています。


そして、今回の映画「無限列車編」はより鮮明にそのことを描写しています。


まだ見に行っていない方は是非劇場で見てください。1度見た方も是非、このnoteの視点でもう一度見てみてください。より楽しめると思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

「こんな見方があるのかー、面白い!」と思っていただけた方、
「私も同じ目線で見てました!」と思っていただけた方、
それ以外の方もスキ押していただけるとすっごく嬉しいです!!

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