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【読書メモ・要約】 イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」 (安宅和人)【#36】

読書メモではなく、まとめです。

序章 この本の考え方――脱「犬の道」

生産性とは、どれだけのインプット(投下した労力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか。

アウトプット = バリューのある仕事

Issueイシューの定義
A) 2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
B) 根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
の両方の条件を満たすもの

世の中にある「問題かもしれない」と言わていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらい。

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絞り込まれたなかで特に「イシュー度」の高い問題から手をつける。この場合、「解きやすさ」「取り組みやすさ」といった要因に惑わされてはならない。あくまで「イシュー度」の高い問題からはじめる。

うさぎ跳びを繰り返してもイチローにはなれないように、「正しい問題」に集中した、「正しい訓練」が成長に向けた鍵となる。

プロフェッショナルとは、働いた時間ではなく、「どこまで変化を起こせるか」によって対価をもらい、評価される。あるいは「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」によって存在意義が決まる。

コラム 「噛みしめる」ことを大切にしよう

脳は脳自身が「意味がある」と思うことしか認知できない。「意味がある」と思うかどうかは、「そのようなことが意味を持つ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる。

第1章 イシュードリブン

「これは何に答えを出すためのものなのか」というイシューを明確にしてから問題に取り組む

イシューを見極めるためには「実際にインパクトがあるか」「説得力があるかたちで検証できるか」「想定する受け手にそれを与えられるか」という判断が必要となり、ここにはある程度の経験と「見立てる力」が必要になる。

「スタンスをとる」ことが肝要
1. イシューに答えを出す
具体的にスタンスをって仮説に落とし込まないと、答えを出し得るレベルのイシューにすることができない。

2. 必要な情報・分析すべきことがわかる
仮説を立てて、はじめて本当に必要な情報や必要な分析がわかる。

3. 分析結果の解釈が明確になる
仮説が無いと、出てきた結果が十分なのかそうでないのかの解釈ができない。

イシューと仮説は紙や電子ファイルに言葉として表現することを徹底する。
・主語と動詞を入れた文章にすると曖昧さが消え、仮説の精度がぐっと高まる。
・「Whwere」・・・「どちから?」「どこを目指すべきか?」
・「What」・・・「何を行うべきか?」「何を避けるべきか?」
・「How」・・・「どう行うべきか?」「どう進めるべきか?」
・比喩表現を入れると、何と何を対比し、何に答えを出そうとしているのかが明確になる。

よいイシューの3条件
1. 本質的な選択肢である
答えが出るとそこから先の検討方向性に大きく影響を与える。

2. 深い仮説がある
検証できれば価値を生むことを誰もが納得できる。

3. 答えを出せる
「きっちりと答えを出せる」ものでなければならない。「重要でも答えを出せない問題」というのはいくらでもある。

それぞれを深掘りすると

1. 本質的な選択肢である
本質的な選択肢=カギとなる質問
「本質的な選択肢」を見極めるためには、「イシューの落とし穴」を意識しておく。

・なんちゃってイシュー
その局面で答えを出す必要のないもの。
「イシューらしいもの」が見えるたびに、「本当に今それに答えを出さなくてはならないのか」「本当にそこから答えを出すべきなのか」と立ち返って考える。

・イシューは動く標的
イシューとは「今、答えを出さなければならないこと」なので、実際には担当している部門や立場によっても変わってくる。ある人にとってイシューであっても他の人にとってはイシューではない、ということもいくらでもある。
「誰にとって」という主語を変えても成り立つものは、まだイシューとしての見極めが甘い可能性が高い。
大きな意思決定がされると、その周りにあるイシューが根こそぎイシューでなくなることもある。

2. 深い仮説がある
・常識を否定する
仮説を深める簡単な方法は「一般的に信じられていることを並べて、その中で否定できる、あるいは異なる視点で説明できるものがないかを考える」
・「新しい構造」で説明する
2つ目の定石は「新しい構造」で世の中を説明できないかと考えること。
人は、これまでにない理解を得ると真に大きな衝撃を感じる。

構造の理解には4つのパターンがある。
1) 共通性の発見
一番簡単な新しい構造は共通性。2つ以上のものに、何らかの共通なことが見えると、ヒトは急に何かを理解したと感じる。

2) 関係性の発見
完全な全体像がわからなくとも、複数の現象間に関係があることが分かれば人は何かを理解したと感じる。

3) グルーピングの発見
検討対象を何らかのグループに分ける方法を発見することで、これまで一つに見えていたもの、あるいは無数に見えていたものが判断できる数の固まりとして見ることができるようになり、洞察が深まる。
「市場セグメンテーション」市場を何らかの支店に基づいた軸で切り分け、それぞれのグループごとに違う動きが見えれば、それまでとは違う洞察を得て、自社商品・競合商品の現状分析や今後の予測がしやすくなる。

4) ルールの発見
2つ以上のものに何らかの普遍的な仕組み・数量的な関係があることが分かると、人は理解したと感じる。

3. 答えを出せる
「答えを出せる範囲で最もインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。
そのままでは答えの出しようがなくても、分解することで答えを出せる部分が出てくればそこをイシューとして切り出す。
「インパクトのある問い」がそのまま「よいイシュー」になるわけではない。
世の中の人が何と言おうと、自分だけがもつ視点で答えを出せる可能性がないか、そういう気持ちを常に持っておくべき。

イシュー特定のための情報収集
考えるための材料を入手する
時間をかけ過ぎずに大枠の情報を集め、対象の実態についての肌感覚を持つ。
細かい数字よりも全体としての流れ・構造に着目する。

コツ1. 誰のフィルターも通っていない一次情報に触れる。
数日間は集中的に一次情報に触れる。

コツ2. 一次情報から得た感覚を持ちつつ、世の中の常識・基本的なことをあ  る程度の固まりとしてダブりもモレもなく、素早くスキャンする。
1. 業界内部における競争関係
2. 新規参入者
3. 代替品
4. 事業の下流(顧客・買い手)
5. 事業の上流(サプライヤー・供給企業)
ここまでがマイケル・ポーターの提唱した「ファイブ・フォース」
6. 技術・イノベーション
7. 法制・規制

実際のスキャンの押さえどころは
・数字
・問題意識
「これを知らないとその分野の人との会話が成り立たない」ということを一通りカバーする。
重要な視点のモレがないかを確認する。
・フレームワーク
検討している問題が既存の枠組み、つまりはフレームワークの中でどう位置づけられ、説明されているのかを理解する。
 ・総説・レビュー
 ・雑誌・専門誌の特集記事
 ・アナリストレポート・アニュアルレポート
 ・テーマに関連する書籍
 ・教科書的な書籍の該当ページ

書籍系に関してはノウハウ的なものは避け、基本的・原則的なものを見る。

歴史的な視点を得るために、やや古めのものと新しいものを同時に見る。

コツ3. 意図的にざっくりとやり「やり過ぎない」
集め過ぎ:大量に時間を投下しても、実効的な情報が比例して増えることはない
知り過ぎ:「知識」の増大は、必ずしも「知恵」の増大にはつながらない。むしろあるレベルを超すと負に働くことを念頭に置く必要がある。

イシュー特定の5つのアプローチ
1. 変数を削る
問題の関連要素を固定したりグルーピングしたりして削ることで、本当のイシューがはっきりしてくることが多い。

2. 視覚化する
空間的な広がりがある場合、相互の関係を並べて絵にする。
取組に順番があるような場合、パズルのブロックのように前から後ろに並べていく。
主要な属性(軸)の数値がいくつか取れる場合、グラフ化が有用。グラフ化すると、多くのサンプルがいくつかのグループに分かれることが見える場合も多い。

3. 最終形からたどる
「最後に何が欲しいのか」ということから考える。
最終形から逆算的に考えることで、イシューを構造化することができる。

4. 「So shat?」を繰り返す
一見すると当たり前のことしかイシューの候補として挙がらないときには   「So what?(だから何?)」という仮説的な質問を繰り返すことが効果的。

5. 極端な事例を考える
要素や変数が入り組んでいる場合には、いくつか重要な変数を極端な値に振ってみると、どの要素の動きがカギになるかが見えてくることも多い。

第2章 仮説ドリブン1

解の質を高め、生産性を大きく向上させる作業が「ストーリーライン」づくりとそれに基づく「絵コンテ」づくり。この2つを合わせて「イシュー分析(イシューアナリシス)」という。

ストーリーラインづくり
Step1. イシューを分解する
イシューを「答えを出せるサイズ」にまで分解していく。分解したイシューを「サブイシュー」という。
イシューを分解するときには「ダブりもモレもなく」砕く、そして「本質的に意味のある固まりで」砕くことが大切。
入り口にあたる「切り分け方」を誤ると、その分析自体が行き止まりになってしまう可能性が高いため、「本質的な固まり」で切り分けることはとても重要なポイントになる。

イシューを分解する「型」
・事業単位の戦略立案に使う「Where・What・How」
 Where・・・どのような領域を狙うべきか
 What・・・具体的にどのような勝ちパターンを築くべきか
 How・・・具体的な取り組みをどのように実現していくべきか

何より強力なのは「自分の視点を加えた型」をつくること。

・型がない時には「逆算」する
「最後に何が欲しいのか」から考え、そこから必要となる要素を何度も仮想的にシュミレーションすることが、ダブりもモレもないイシューの分解の基本となる。

イシューを分解する効用
1. 課題の全体像が見えやすくなる
2. サブイシューのうち、取り組む優先順位の高いものが見えやすくなる

イシューを分解して見えてきたサブイシューについてもスタンスをとって仮説を立てる。

見立て(仮説のベースとなる考え)があればよいが、なくても強引にスタンスをとる。
あいまいさを排し、メッセージをすっきりさせるほど、必要な分析のイメージが明確になる。

コラム MECEとフレームワーク

「ダブりもモレもなく」という考え方をMECEという。
Mutually Exclusive & Collectively Exhaustive
「考え方の枠組み」のことをフレームワークと呼ぶ。

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Step2. ストーリーラインを組み立てる
分解したイシューの構造と、それぞれに対する仮説的な立場を踏まえ、最終的に言いたいことをしっかり伝えるために、どのような順番でサブイシューを並べるのかを考える。

典型的なストーリーの流れ
1. 必要な問題意識・前提となる知識の共有
2. カギとなるイシュー、サブイシューの明確化
3. それぞれのサブイシューについての検討結果
4. それらを総合した意味合いの整理

ストーリーラインが必要となる理由
1. 分解されたイシューとサブイシューについての仮説だけでは論文やプレゼンにはならない
2. ストーリーの流れによって、以後に必要となる分析の表現方法が変わってくることが多い

ストーリーラインは検討が進み、サブイシューに答えが出るたびに、あるいは新しい気付き・洞察が得られるたびに、書き換えて磨いていくもの

・立ち上げ段階
何が見極めどころ(カギとなるサブイシュー)であり、一体何を検証するためにどのような活動をするのか、という目的意識をそろえる

・分析・検討段階
イシューに対する仮説の検証がどこまでできているのかが明確になる。分析結果や新しい事実が生まれるたびに肉付けし、刷新する。

・まとめの段階
言葉の明晰さと論理の流れが決定的に重要になり、その磨き込みのためにストーリーラインが不可欠となる

ストーリーラインの2つの型
1. 「Why」の並び立て
最終的に言いたいメッセージについて、理由や具体的なやり方を「並列的に立てる」ことでメッセージをサポートする。
「第1に、第2に、第3に、というタイプの説明」
重要な要素を「ダブりもモレもなく」選ぶようにする。

2. 空・雨・傘
「空」・・・○○が問題だ(課題の確認)
「雨」・・・この問題を解くには、ここを見極めなければならない(課題の深掘り)
「傘」・・・そうだとすると、こうしよう(結論)
ストーリーを組んで、最終的に言いたいこと(「傘」の結論)を支える

どちらであれ、最終的に伝えようとしていることを、いくつかのサブ的なメッセージによって支える構造をしている

第3章 仮説ドリブン2

分析イメージ作りの作業を「絵コンテ」づくりと呼ぶ
イシューを分解し、組み立てたストーリーラインはまだ言葉だけのもの。具体的なデータのイメージをビジュアルとして組み合わせることで急速にアウトプットの青写真が見えてくる。
イシューを分解して並べたストーリーラインに沿って、必要な分析のイメージを並べていったもの
紙を縦に割ってサブイシュー(ストーリーライン上の仮説)、分析イメージ、分析手法や情報源をまとめていく。

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「どんなデータが取れそうか」ではなく、「どんな分析結果が欲しいのか」を起点に分析イメージを作る。
「そんなデータがあれば、ストーリーラインの個々の仮説=サブイシューを検証できるのか」という視点で大胆にデザインする。

絵コンテづくりの3つのステップ
Step1. 軸を整理する
分析の枠組みづくり、つまり軸を整理する
「比較」が言葉に信頼を与え、「比較」が論理を成り立たせ、「比較」がイシューに答えを出す。
優れた分析は、タテ軸、ヨコ軸の広がり、すなわち「比較」の軸が明確。
定性的な分析であろうと定量的な分析であろうと、どのような軸で何と何を比べるのか、どのように条件の仕分けを行うのか、これを考えることが分析設計の本質である。

定量分析の3つの型
1. 比較
同じ量・長さ・重さ・強さなど、何らかの共通軸で2つ以上の値を比べる

2. 構成
部分と全体を比較すること
「何を全体として考えて、何を抽出した議論をするか」という意味合いを考えることが構成における軸の整理となる。

3. 変化
同じものを時間軸上で比較すること
結局、変化であっても「何と何を比較したいのか」という軸の整理が重要になる。

分析は「原因側」と「結果側」の掛け算で表現される。
軸を考えるというのは、原因側で何を比べるのか、結果側で何を比べるのか、ということを意味している。
分析の設計とは、「原因側」「結果側」双方でどのような比較が必要なのか、どれが一番きれいな結果が出るのかを絵コンテを描きつつ考える。

分析の軸を出す方法
比較に際しての条件を付箋などに書き出していって、関係のあるものを束ねていく。
この作業をやって行くと、考えの「ゆるさ」が消えて行き、急速に分析がすっきりしてくる。

Step2. イメージを具体化する
軸の整理が終われば、次は具体的な数字を入れて分析・検討結果のイメージを作っていく。
実際にチャートのイメージを描くと、どのくらいの精度のデータが必要か、何と何の比較がカギになるのかがはっきりする。
比較による「意味合い」をはっきりさせることが必要。
「意味合い」は「比べた結果、違いがあるかどうか」に尽きる。
1) 差がある
2) 変化がある
3) パターンがある

Step3. 方法を明示する
最後に是非やっておくべきことがある。それが、どうやってそのデータを採るのか、という方法を明示すること。
具体的には、「どんな分析手法を使ってどんな比較を実現するか」「どんな情報源(データソース)から情報を得るのか」ということを分析イメージの右側に描いていく。
既存の手法の限界に踏み込む感じが出てきたら、「イシューからはじめる」という考えで分析の設計ができている可能性が高い。

「イシューからはじめる」意識をもっていれば、様々な場面を想定した技の習得意識は大きく高まる。「目線が高い人は成長が速い」という、プロフェッショナルの世界における不文律は、この意識に由来しているのだと思う。

コラム 知覚の特徴から見た分析の本質

1. 閾値を超えない入力は意味を生まない
単一のニューロンでは、ある一定レベルの入力がないと情報を長距離にわたって伝達する活動電位というものが発生しない。
全か無の法則
脳の場合、閾値が「入力の意味を持ちうるライン」として存在している。

2. 不連続な差しか認知できない
脳は「なだらかな違い」を認識することが出来ず、何らかの「異質、あるいは不連続な差分」だけを意識する。
明確な対比で差分を明確にすればするほど脳の認知の度合いは高まる。
分析イメージを設計する際には、同じような分析の型が続かないようにすることが重要。
同じ形のグラフやチャートが続くと、2枚目以降に関しては認知する能力が格段に落ちる。

3. 理解するとは情報をつなぐこと
脳神経系では「2つ以上の意味が重なりつながったとき」と「理解したとき」は本質的に区別できない。
「理解するとは情報をつなぐこと」
分析における比較の軸は、複数の情報をつなぎ合わせるヨコ糸でありタテ糸となる。
優れた軸は複数の異なる情報をつなぐ力が強い。

4. 情報をつなぎ続けることが記憶に変わる
シナプスに由来する特性として「つなぎを何度も使うとつながりが強くなる」ことが知られている。
「ヘッブ則」
「××と○○は確かに関係している」という情報が実際につながる「理解の経験」を繰り返させなければ、相手の頭には残らない。

第4章 アウトプットドリブン

「いきなり分析や検証の活動をはじめない」
もっともバリューのあるサブイシューを見極め、そのための分析を行う。
ここは、ストーリーラインの中で絶対に崩れてはいけない部分、あるいは崩れた瞬間にストーリーの組換えが必要となる部分であり、具体的には、カギとなる「前提」と「洞察」の部分になる。
それが終わった後は、バリューが同じくらいであれば早く終わるものから手をつける。

次に念頭に置いておきたいのは、このアウトプットを生み出すステップで意味のある分析・検証は「答えありき」とは対極にある、ということ。
各サブイシューについて検証するときには、フェアな姿勢で検証しなければならない。

たとえば、天動説が主流である時代に地動説を唱えようとすれば、地動説に都合の良い事実ばかりを挙げるのではなく、天動説の論拠となっていることですら実は地動説の方が正しく解釈できる、ということを論証し、そうでなければ無理なり矛盾なりが起きることを示す必要がある。

2つのトラブル
トラブル1 欲しい数字や証明が出ない
典型的なトラブルに「欲しい数字や証明が出ない」がある。
直接使える数字がないとしても簡単にあきらめない。
頭を使えば直接は出せない数字を明らかにする方法はいろいろある。

・構造化して推定する → フェルミ推定

・足で稼ぐ
正式な数字が取れなくても、だいたいどの程度の規模感か分かればサブイシューに答えが出るという場合であれば、フォットワークで情報を稼ぐというやり方も有効

・複数のアプローチから推定する
重要な数値の規模感が分からないというときは、複数のアプローチから経産(測定)して値のレベルを知る。
いくつものやり方で数値を出していくことで、おおよその数値が推定できることが多い。
多面的な数値推定(検討)のアプローチを技として持っていると、重要な数値が出た時にざっくりとした検算もできる。

トラブル2 自分の知識や技では埒が明かない
もっとも簡単な解決法は「人に聞きまくる」こと。
人に尋ねようのない問題や独自のやり方がうまくいかないときは、「期限を切って、そこを目安にして解決の目途がつかなければさっさとその手法に見切りをつける」。

通常、どんなイシューであろうと、分析・検証方法はいくつもあるし、どれが絶対的に優れているという事もさほどない。
自分の手法より簡単で時間のかからないアプローチがあれば、当然それでやるべき。
どんな手法でも代替策が何もないという事態は極力避ける。

軽快に答えを出す
質の高いアウトプットを出すことについての本質
固執しないこと。多くの人が失敗するのは、それに執着しているというだけの理由で、何とかしてそれを成功させようとまず決め込んでかかるからじゃないだろうか。

「もっている手札の数」「自分の技となっている手法の豊かさ」がバリューを生み出す人ととしての資質に直接的に関わる。

大切なことは「停滞しない」こと。
停滞を引き起こす要因として、最初に挙げられるのが「丁寧にやり過ぎる」こと。
1回ごとの完成度よりも取り組む回数(回転数)を大切にする。
「受け手にとっての十分なレベル」を自分の中で理解し、「やり過ぎない」ように意識することが大切である。
大切なのは「答えが出せるかどうか」
「完成度よりも回転数」「エレガンスよりもスピード」という姿勢を実践することで、最終的に使いものになる、受け手にとって価値のあるアウトプットを軽快に生み出すことができる。

第5章 メッセージドリブン

まとめの作業に取り掛かる前には、「どのような状態になったらこのプロジェクトは終わるのか」という具体的なイメージを描く。

受け手に次のようになってもらう
1. 意味のある課題を扱っていることを理解してもらう
2. 最終的なメッセージを理解してもらう
3. メッセージに納得して、行動に移してもらう

デルブリュクの教え
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性を持つと想定せよ
「賢いが無知」というのが基本とする受け手の想定

複雑さは一切要らない。
意識が散るようなもの、あいまいなものはすべて排除する。
無駄をそぎ落とし、流れも構造も明確にする。

仕上げの段階では「本質的」「シンプル」という2つの視点での磨き込みを行う。

3つの確認プロセス
プロセス1 論理構造を確認する
構造は結論をピラミッド型に支える「Whyの並べ立て」か「空・雨・傘」のいずれかをとっている。まずは、最終形がどちらかの構造ですっきり整理できていることを確認する。

同時に、全体の構造を見直しながら、構造上不要になった部分を剥ぎ取っていく。

カギとなる洞察や理由はダブりもモレもない状態であることを確認する。
分析・検証の結果、全体のメッセージに影響が出た時には、全体のストーリー構造を見直す必要がないかを確認する。
仮説が崩れたら「発見だ!」と思うくらいの気持ちで良い。

話の流れや比較検討に使用したフレームワークがあれば、これも図としてまとめた方がよい。ただし、話全体の構造として使うフレームワークは極力ひとつに留めておく。

論理の構造を確認するこの段階でカギとなる新しい概念が出てきたら「オリジナルの名前」をつけるとよい。

プロセス2 流れを磨く
優れたプレゼンテーションとは「ひとつのテーマから次々とカギになるサブイシューが広がり、流れを見失うことなく思考が広がっていく」もの。

リハーサルの2ステップ
1. 紙芝居式の荒磨き
チャートを揃え、めくりながら説明して、話の順番やメッセージのメリハリを修正していく。
流れ上、問題が出るチャートは大胆に抜いてしまってよい。

2. 人を相手にした細かい仕上げ
聞き手をおいて本番同様のリハーサルで細かい仕上げをする。
自分では気づかないクセや分かりにくい言い回しを見つけるために効果的。

論理の構造や分析・チャートの表現が明瞭なはずなのに説明がしにくい、というときはストーリーラインの流れに不要なものが混ざっている可能性が高い。

聞き手には「わかりやすいか」という視点と共に、「聞いていて引っかかるところはないか」という視点でもコメントをもらう。

プロセス3 エレベーターテストに備える
エレベーターテストとは「仮にCEOとエレベーターに乗り合わせたとして、エレベーターを降りるまでの時間で自分のプロジェクトの概要を簡潔に説明できるか」というもの。
時間にすれば20~30秒程度で複雑なプロジェクトの概要をまとめて伝える、というスキル。

チャートを磨き込む
ストーリーラインを磨き込んだら、個々のチャート(図表・グラフ)を精査していく。
チャートは「メッセージ・タイトル・サポート」という3つの要素からできている。

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優れたチャートとは
1. イシューに沿ったメッセージがある → 1チャート1メッセージを徹底する
2. (サポート部分の)タテとヨコの広がりに意味がある → タテとヨコの比較軸を磨く
3. サポートがメッセージを支えている → メッセージと分析表現を揃える

コツ1 1チャート1メッセージを徹底する
「何を言うか」と共に「何を言わないか」も大切になってくる
2つのことを言いたいなら2つのチャートに分断する。
1チャート1メッセージを徹底すると、1つ1つのチャートが劇的にシンプルになる。

「どんな説明もこれ以上できないほど簡単にしろ。それでも人は分からないと言うものだ。そして自分が理解できなければ、それを作った人間のことをバカだと思うものだ。人は決して自分の頭が悪いなんて思わない」

コツ2 タテとヨコの比較軸を磨く
タテとヨコの広がりにイシューの検証につながる明解な意味がある。

軸の選択をフェアにする
メッセージを伝達するためには、必要な比較軸を全て並べることが大切。

軸の順序に意味を持たせる
数値の入らない定性分析のチャートではこれは重要な部分となる。

軸を統合・合成する
本当の意味での条件が何種類あるのかを整理して、「ダブりもモレもなく」比較の条件を整理する。軸を統合・合成して共通の軸を作り、それを重ね合わせることで、絡まり合った世界がシンプルに比較できる世界になる。

軸の切り口を見直す
分析結果が明確なメッセージにつながらない場合、情報の切り口にノイズが含まれていることが多い。
軸の基本単位を見直すことも必要。
人を納得させるだけの差分が見つからないとき、「軸の切り方が甘い」ことがある。
「場面(オケージョン)=利便(ベネフィット)」の視点での市場の切り分け。

分析の軸を見直すというのは、分析結果を踏まえないと分からないことも多少はある。その場合、回転率を上げる場面、もしくはこの最後の仕上げの段階で拾い上げる。

コツ3 メッセージと分析表現を揃える
最後は、メッセージに即した「分析表現」を磨き込んでいく。
この分析(サポート)で本当にこのメッセージが明確に検証できるのかをチェックする。

仮説をもち、絵コンテづくりをした上で分析・検証すると、その結果は想定とは完全には一致しない。その微妙なズレ自体が貴重な情報となる。

単なるデータ集積ではなく、本当に何かを伝えるためのチャートが生まれる。

もう一度、誰かを前にしてプレゼンしてみる。
ここで問題なければ作業は終了。

コラム 「コンプリートワーク」しよう

「人から褒められること」ではなく「生み出した結果」そのものが自分を支え、励ましてくれる。

おわりに

結局のところ、食べたことのないものの味はいくら本を読み、映像を見てもわからない。自転車に乗ったことのない人に乗った時の感覚はわからない。恋をしたことのない人に恋する気持ちはわからない。イシューの探求もこれらと同じだ。
「何らかの問題を本当に解決しなければならない」という局面で、論理だけでなく、それまでの背景や状況も踏まえ、「見極めるべきは何か」「ケリをつけるべきは何か」を自分の目と耳と頭を頼りにして、自力で、あるいはチームで見つけていく。この経験を一つ一つ繰り返し、身につけていく以外の方法はないのだ。

おわり

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