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【読書メモ】世界はなぜ地獄になるのか(橘玲)【#96】

橘玲さんの新刊です。前に出ていた『上級国民/下級国民』はちょっと時代にすり寄り過ぎかなと感じて読まなかったのですが、『無理ゲー社会』は興味深く読みました。その続きとなるこの本も興味深く読みました。

いつも通りの様々な事実やデータから読み解くスタイルで、この本では「誰もが自由に生きられる社会は、こんなにも不自由だ。」というような、今の人なら誰しもが感じている内容を分析してくれています。

本書は小山田圭吾事件というキャンセルカルチャーの象徴的な事件から始まります。

リベラル化するということは「自分らしく生きる」という一見良い世界のように思えますが、一方で次の4つの新たな問題を生み出していると整理されています。
(1)リベラル化によって格差が拡大する
(2)リベラル化によって社会がより複雑になる
(3)リベラル化によってわたしたちは孤独になる
(4)リベラル化によって、「自分らしさ(アイデンティティ)」が衝突する

社会正義の運動が、以上のような問題と複雑に絡み合うことでキャンセルカルチャーという異形なものへ変貌していきます。その先駆けが、前述の小山田圭吾事件となります。

一つ一つ丁寧に考察されているので、事象や数値は実際に読んでいただきたいのですが、最後の部分でこれらのキャンセルカルチャーからの身の守り方について考察されているところがとても有用だと思いました。

まず、イギリスの政治・社会評論家のダグラス・マレーが”地雷原”として「ゲイ」「女性」「人種」「トランスジェンダー」を挙げています。これらの話題を避けることが最も現実的で、ほぼ唯一の対処法になります。

また、「極端な人」に絡まれないための最低限の原則は「個人を批判しない」ことです。これらの人たちは、自分が批判されたと感じると常軌を逸して攻撃的になるからです。自分が「被害者」で「正義」だと信じている人には打つ手がありません。不愉快はコメントをすしてくる人に対する対処は「無視」か「ブロック」のみです。絶対に反論してはいけません。

重要なのは資本主義社会においては「社会正義」すら市場で売買されるものになっているということです。

この世界が地獄になるのは、得体のしれない「陰謀」のせいではなく、その方が都合がいい者がいるからなのだ。

p270 本書最後の文

おわり


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