マガジンのカバー画像

小説・「アキラの呪い」

22
「俺にはろくでなしの姉が一人いる。姉は俺の呪いであり、俺は姉の呪いになりたい」 姉の自殺未遂をきっかけに変化する義理の姉と弟の危うく奇妙な関係を描く。
運営しているクリエイター

#恋愛

連続小説・「アキラの呪い」(2)

連続小説・「アキラの呪い」(2)

前話はこちら。

***

 8月の夕方は日暮れとは言ってもまだまだ蒸し暑い。うんざりするような暑さだが、俺は夏が一番好きだった。全てのものが色を取り戻し、生き生きと輝きを増して見える。そういえば晶は夏を忌み嫌っていたな、と歩みを緩め、傾き始めた太陽を見やって思う。曰く、全てが鬱陶しいらしい。自分が流す汗も、照りつける太陽も、むせ返るような色彩も。ならばどの季節が好ましいのかといえば、答えは簡潔で

もっとみる
連続小説・『アキラの呪い』(1)

連続小説・『アキラの呪い』(1)

第一章 「水無瀬晶の弟」

 俺の姉について話しておきたい。
 水無瀬晶は厭なやつだ。無神経で傍若無人でニコリとも笑わない。性悪な女だ。
 姉といっても、血は繋がっちゃいないんだけど。ただうちの母親とあいつの父親が結婚しただけ。よくある話だ。晶と俺とは血が繋がっていない。ーーーそれを俺は喜ぶべきなのかもしれない。あんなに生きづらそうにしてる義姉を見ていると余計に。厄介な性質を、もしも俺も受け継いで

もっとみる