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観光としての街の魅力は新たに創るものだろうか?

「#スカジェニ」というハッシュタグを利用したことはあるだろうか。恐らくは大体の読者は知らないハッシュタグだろう。

このハッシュタグ、上記のサイトを見ていただければわかるのだが、横須賀市でやっているキャンペーンである。横須賀市日の出町海沿いに設置されたアートウォールを背景に写真を撮り、それをこのハッシュタグとともにSNSへ投稿するという内容である。

実際のアートはサイトを覗くかハッシュタグを覗くか、実際に日の出町まで出向くかしていただきたい。
地元の若い才能から本格的に活躍するアーティストまで多彩な作品が揃っていて、まさに映える空間になっている。

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さて、ここから本題である。
筆者が素直に地元の新名所を紹介し、集客に貢献するだけでは終わらない。

この場の意味、郊外都市での観光という意味という視点で考えてみたい。

・SNS映えという視点・ターゲット

企画の内容からして、SNS、特にインスタを頻繁に利用している人がターゲット層にされていると思われる。
となると、若い女性陣が中心になるだろう。
企画参加アーティストの一人がコメントで「映えを意識した」というように、この作品群は映えを意識するなら申し分なく、撮りようによっては非常に面白い素材になるのは間違いない。
是非とも多くの人にあらゆる映えた作品を撮っていただきたいものだ。
しかしだ、気になるのは場所である。


日の出町の海沿いとなるここは、すぐ近くにはうみかぜ公園という大き目な公園があり、ここには駐車場が完備されてある。車で来る人はここへ停めればいいだろう。
おそらく、企画した人たちもドライブがてらに来てくれるを意識してこの場に設けたのだろう。
16号から一本外れた道ではあるが、このまま南下すれば途中で再び16号に合流し、海を眺めながら観音崎までドライブを楽しめる。ドライブコースのワンポイントとしては面白いかもしれない。
また、JR横須賀駅から観音崎まで海沿いに伸びる約10キロの遊歩道「10,000メートルプロムナード(うみかぜの路)」の途中でもあり、マラソンや散歩コースとして選ぶのもいいかもしれない。
『海沿いの街』を堪能するコースの一つとしてはもってこいである。

しかし、地元住民の散歩としてではなく、まっすぐにこのアートを目的して徒歩で向かうとなると横須賀中央か県立大学駅を利用することになるが、どちらからも少し歩くことになる。しかも、それまでの区間は場末感ただようかなり濃い空間やなんでもない住宅街を超えることになる。遠い上に映えない。
そして、撮影ポイントやその周辺地域は公園以外は大きめなスーパーや家電量販店など買い物には十分だが観光するスポットでは全くない。
(個人的には観光スポットとも思えてならないが)
地元の人間なら散歩や買い物ついでにいいだろうが、そういう人たちはターゲット層とはまた違うだろう。
件の通り、SNS映えを意識したということはターゲット層は若い女性が真っ先に考えられる。それで車持ちとなると、かなり限定的になるのではなかろうか。
イラストの前はちょっと広めの空間になっている、そこでちょっとしたパフォーマンスを撮影してTikTokにアップするのも面白いと思うが、そういう層は更に若く車を持っている率などかなり低いだろう。
となると、やはりこの駅から離れた場所はやや不利な気がするが。
海沿いとはいえ、海とアートウォールの間には道路が挟み、両方を背景とした動画撮影はできないのが残念でもある。
(ちなみに、ドローン撮影は禁止されている)
更に気になるのは、壁の真後ろにマンションが建っていること。真後ろにあるので、全体を大きく撮影すると写り込んでしまう。住人は気にならないだろうか?

自転車でツーリングとしては?

晴れた日の休日、ロードバイクに乗って三浦半島を周る人を頻繁に見かける。自転車乗りにとっては、三浦半島という場は絶好のサイクリングロードかもしれない。
それを見越して、数年前から自転車乗り向けのモニュメントを設置するなどの仕掛けはいくつか見られるようになった。
そういう人たちにとっては、このポイントに立ち寄るのも面白そうにも思えた。
しかし、その層のことを筆者はよく知らないので、どこまでSNS映えを意識して写真を撮る趣味を持っているのかは不明である。
途中途中で絶景ポイントに立ち寄るのだろうが、映えのために立ち寄ってくれるのだろうか?
そこが自転車乗りにとって元から立ち寄るポイントになっていたのなら話はわかるが。

・だからこそ、ポイントを集中させるべきだったのでは?

つまり、SNS映えを意識したスポットにしてはアクセスが悪く、また付近に他のスポットがないのも厳しいのではなかろうか。
(せいぜい、うみかぜ公園から猿島を背景にするのみか?)
元々の観光地である三笠公園やヴェルニー公園のどこかに設置するならまだ理解はあったが。近くのうみかぜ公園内に設けるのもありだっただろう。
一箇所に集中した方が横須賀を巡る人にも優しいだろうし。
また、上記3つの公園はどこも広い敷地。
パフォーマンスと合わせた場所と考えるならむしろその方がいい。
遊歩道を華やかに彩るためにもあの位置に持っていきたかったのだろうか?
遊歩道のためのアートウォールだったのか?
となると、それほどその遊歩道に期待を寄せてると?

ちなみに、上記リンク先の統計を見ていただきたい。
これは、横須賀市の市役所HPに掲載されていた横須賀市内にある需要観光スポットの動員統計表である。
3年前までのデータとはいえこれを見れば分かるが、三笠公園やヴェルニー公園利用客は横須賀の中で見ればかなりの数である。うみかぜ公園はやや劣るのは否めない。
となると、やはり三笠公園やヴェルニー公園の魅力アップを狙う上でもどちらかに設置できれば大きな効果が期待できたのではなかろうか?

・やるなら徹底的に

正直観光客があのような遊歩道をあえて利用するとは考えられない。
もし遊歩道を華やかに演出したかったのならむしろ寂しいだろう。今後同じようなシリーズがコース上の至る所に見えるのならば話は違うが。ならば、サイクリングしていて楽しいコースにはなる。

だが、SNS映えを意識して考えるとなると、あの場所は甚だ疑問に残る。

やるなら件の通り三笠公園やヴェルニー公園に設置するべきだっただろう。
もしくは、場所があるか問題ではあるが、ドブ板通りにあの手のウォールは凄かマッチングすると思える。
何よりもそこならば、そもそもの人の集まりが多いし、映えを意識した人も行く目的が出来やすい。

一箇所に見所が集中することにより、カレーフェスのような大きなイベントがなくても行きたくなる場所にもなるはずだ。
むしろ、現状の公園で魅力が十分とは言い切れない。より集客を強化する意味でも、一箇所に集中していれば。

何か新しい目玉を0から創り上げようと考えるのではなく、既にある素材を利用してより魅力的に磨き上げるのも観光政策としては効果的ではないだろうか。

そんなことを感じながら筆者は誰も映っていないアートウォール写真をここに残して終える。

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(2021年10月7日 文面の一部、言い回しなどを修正。内容に変化なし)

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