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不安の元凶

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迷走と闘争の樹海を争うようにもがいていたのは、一体いつの頃だっただろう。
時間という概念すら、遠い記憶のように思える。

希望なんてものはすでに懐の中からチリとなり流れ落ち、勇気というエンジンは錆びついてシーラカンスのように深海の中でダンマリしてる。
むしろ、あまりにも何もなさすぎて、無気力に何が何だかわからないところをフランフランとしているだけだ。
気分は、嵐の中吹き飛ばされた秋の夜の枯れ葉。
絶望という鈍器のような響きで頭を打ち付けられれば、むしろそちらの方が潔く終われ、どれほどに幸せだったのか。

バッシュバルドの坂の向こうで、雨上がりのフラッシュシャワーを掻い潜りながら、ただひたすらにミンスリーを思い浮かべていた頃が懐かしい。
あれは、いい思い出だ。
いい思い出?
そんなことも、ぼやけて見えない。

私は、ここからどこにも行けないだろうし、どこかに行けたとしても、そもそもどこへ行けば何かが変わるのかも分からない。
私の体は、ドロリとした曖昧な粘液で包まれているのだ。

本来ならば、目をつむり、呼吸を整え、囁きかけるように鳴るわずかな音や肌にまとわりつく空気をじっくりと受け止めて、自分が置かれているその刹那を感じ取らなければならない。
むしろ、全身から感じ取られる気を吸い取り、その一瞬を楽しんでいたって構いやしない。
だが、私の精神はすっかりと落ち着きを失っている。

気がつけば、視界の端に光をとらえていた。
腐海の波間に漂う一枚の板切れにも思えるが、実際はワラ一本にすぎないのかもしれない。
それでも、私の左手は無意識に伸び、空をさ迷いだす。
こんな私でもまだ希望を信じていることに、私自身に驚きを隠せないでいる。
今更、何を求めるというのか。
どこへ行こうというのか。
何を得てどこへ行けるというのだ。

光は、あまりにも弱かった。
希望なんて表現できるほどに輝きに満ちることはない。
腐海に沈む私のように、今にも闇に飲み込まれそうなほどに貧弱で哀しげだ。


頼む! 消えないでくれ!


私は必死に左右の腕を前へ差し出しながら懇願した。
光は消えることはない。
しかし、か細い。

そこにたどり着けて、いったい何が待っているというのだろう。
そこは、楽園どころか心落ち着けることすら許されない場だ。
それは分かっている。
ヒシヒシと伝わってきている。
それでも、私の両腕は光を求めて空を掻き分けていた。

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最初に掲載されているイラストは自分が夜中の風呂場を見つめていて頭の中に浮かんできた光景です。
それを自分で描いてみました。
タイトルにあるように、不安感が強い時期の作品です。

そこから、更に自分で想像力を開放して詩のような何かを書いてみました。

支援いただけるとより幅広いイベントなどを見聞できます、何卒、宜しくお願い致します。