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パニック映画のエンディングのような朝

鵯の鳴き声で目を覚ました。

職場から帰ってきた父が台所でカップ麺に湯を入れており、窓からは強い朝日が漏れ込んでいた。

行ったのだなぁ、台風は、

無意識に張っていた気が緩み、よく二度寝をした。
まるでアメリカのパニック映画のエンディングのような朝だなと思った。


起きたら昼過ぎだった。
両親はまだ寝ていて、妹がゲームをやっていた。

今まで経験したことがないような台風がくると聞き、数日前から予備校は閉鎖が知らされていた。
木曜日の夜にはもう水やパンは売り切れていた。
準備が早いのはいい事だ。
わが家は完全に出遅れた。

夜になりいざ風が強まってくるとさすがに家が心配になった。
多摩川が氾濫すると言われ、避難するか否かの判断を迫られる。
2階床下浸水の対象地域なので、さんざん迷い、幾度の相談の末、待機を決めた。
どうしても落ち着かず、家にある菓子パンや母が作り置きしたおにぎりを母と妹とでみんな食べてしまった。

幸区、田園調布、武蔵小杉などよく聞き馴染んだ名前の街で浸水のニュースが報じられる。多摩川はいつ氾濫してもおかしくないと言われ続けるし、明け方には大潮とかいう話もある。隣町では停電も起きているらしい。
不安にさせる情報しかないまま、風が少し静かになったのを感じるとすぐ、低気圧に負けて目を閉じた。

避難所の高校が満員になり隣の中学を解放した話や、妹の友人の多くも避難所で夜を明かした話を聞いた。
ニュースでもたくさんの人が避難をしたという話があり、なにかとのほほんと生きている日本人が、こんだけ危機感を持って動けるのは大きな事なのではないかなと思った。

そして首都圏は強いのだなと思った。
いろんな人たちに感謝をしなくてはいけないな。

昼過ぎのニュースでは近郊の地域での被害が大きく胸を痛める。
同じ台風だったのにな、と悲しくなった。

夕方、常備チョコを妹が食べ尽くしてしまったので、買いに行くついでに多摩川を見に行った。
歩いてみると、家のすぐ後ろの道に冠水のあとがあり驚いた。

土手は見物人が多く、いつにも増して賑わっていた。

遊具や立て看板には木の枝や蔦などが絡まり、土砂の跡で水がどの高さまで来ていたのかよく分かった。
サッカーゴールがゴルフ場の網の支柱に絡まっていた。
まだ水の引いてない場所で小学生たちが自転車でジャバジャバ入って遊んでいた。
土手はちゃんと機能していたのだなぁと思った。

土手から見る夕日がとても綺麗だった。
日が沈むととても大きな月が現れた。
月は大きすぎると少し怖い。

お菓子と頼まれた塩を買い、帰る。

街にはいつもの生活が戻ってきていた。
そうだ、戻らなきゃいけない。
こんなことをしている場合じゃないのだ。

家に帰りテキパキと教材をまとめ、やることに優先順位をつけた。
7時からの歯医者の予約もその時に思い出して急いでそちらの準備もする。

歯医者ではよく磨けていると褒められた。
歯医者さんも褒めるのかと驚いた。
ただ、歯ブラシがあってないから変えたほうがいいと言われた。
ついでに半年前に治した虫歯がまた怪しいから見なきゃいけないとも言われてしまった。

なんてこった、まだ続くのか、

仕方がないので予約をとった。
受付の人は今日も綺麗だった。

夜の風が気持ちよくて、緑道の木が投げ倒されているのを見るまで台風を忘れていた。

家に帰ると家族がラグビーで盛り上がっていた。

日常が帰ってくるのだ。
また明日になれば予備校に行き、黙々とする日々が始まる。
帰ってくる日常が平和かと言われると頷きがたいが、確かに日常は帰ってくるのだ。
そしてそれはやはり、とても大きなことなのだ。

日々は進むのだなぁと思った。

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