どの世代の人にとっても縁日は都合のいい口実になるようだ。

朝起きたら10時だった。月曜日に寝坊をした。
予備校に通うようになってから休日という概念がなくなっていたので焦ったが、今日は授業がないので諦めることにした。
まあ昨日ちゃんとしたし、

まあ、休日だし、、、

せっかくなので布団の名残惜しさを堪能した。
もう一度目を瞑ると昼をすぎることが分かってたのでそこは耐えた。

リビングでは母親と妹がトランプをしている。
最近我が家ではカードゲームが流行らしく、平日も家に帰ると既に夕食を済ませた両親と妹がちゃぶ台を囲んでUNOやらトランプやらで壮絶な戦いを繰り広げている。
今日はスピードの日らしかった。
母と妹の試合をつまみにおにぎりを食べた。
スピードは見ててもあまり分からなかった。
そりゃそうか、

おにぎりと言えばこないだ朝のホームでめっちゃおにぎりモガーって食ってるお姉さんいてよかったな、コンビニのおにぎりって胃もたれするよな、大丈夫かな、

雨は降っていないようなので軽く支度を済ませて出かけた。
7月中旬とは思えない涼しさで、歩くにはちょうど良かった。
WeezerとNoel Gallagher's High Flying Birdsが気分と道によく合った。
そういえばもう長いこと太陽を見ていない気がする。
知らんけど。

そんなに近くないが歩いて行けるところに神社があるのでなんとなくお参りをし、なんとなく帰った。
作法を間違えたことに気づいて反省した。
一礼二拍手二礼って変やん気づけや、
気づかんかったんや、、、

来る道に茶色くなったバナナの皮が落ちてるのかと思ったら手袋だった。
よくよく考えてみればこの時期に手袋が落ちているのもおかしな話だ。

タピオカの空の容器が二三個か落ちていた。
ちゃんと最後まで飲んでから捨てるあたりこの辺の人なんだなぁと思った。


地元はベッドタウンとベッドタウンのあいだにぽっかり取り残された小さな街で、都会的な現代感の狭間に田舎らしさや下町らしさを垣間見る。
子どもはチャリで行き新婚は犬を散歩させおばあちゃんの会議は進む。
ビールの自販機が今日もこっそり唸っていた。


帰り道に違う道を通ったら大きな街に出た。
実際は狙ったのだが、知らない道だったのでちゃんと知ってる場所に出れてよかった。
地元人生19年目でもまだ知らない道があるものだ。
街は人が多かった。

広場ではB級グルメを集めたイベントをやっていた。
串に刺さった肉があったであろうトレイをまとめながらレジャーシートを守る人や
子どものおねだりを特別に聞いてあげる人で賑わっていた。いい匂いもした。
なんだか楽しい気分になった。


自分の家の最寄り駅の前にある商店街でも夏になると毎週のように縁日が開かれる。
商店街に店を持つ人がみな道に売場を広げ、なにやら楽しげなものや香ばしい匂いのするものを売る。
夏が近づくと商店街の街頭にヒラヒラした飾り付けが施されそれを見ると今年も夏が近づいて来たことを感じる。
室内にいることが多いため四季を肌で感じることがあまりないが、人の視界は暦通り変わっていくので面白い。
夜道でスマホを見ていたら虫が光に集まってくるようになったのも季節だ。
ていうか夏がくるのか…やだな…


どの世代の人にとっても縁日は都合のいい口実になるようだ。
小学生のまる少年にとって縁日は日が暮れからも友人と遊ぶ口実になった。
縁日が行われる商店街から1本外れた道にある駐車場で僕らはかき氷を食べながらDSをやった。
髪の毛が茶色い友達のお兄さんたちが横でバイクを見せあっていて怖かったこともあった。
友達が普通に話していて感心した。
別の場所では友達の父親たちが居酒屋の前に広げられたテーブルで盛り上がっていた。
お祭りや縁日があると人々は何かと普段できないことを楽しんだ。
きっとこの国の人は、普段は食べさせて貰えないしょっぱい肉や砂糖の塊、光るおもちゃをねだることや、5時の鐘が鳴っても帰らなくていい外で食べ物を買って外で食べてもいいという許可を求めること、"みんな"の中にいる気になるあの子の隣で背伸びをすること、翌日があることや体に出たボロを忘れ遅い時間まで盛り上がることなど、
普段ならできないことをやる口実として縁日やお祭りの場を利用してきたのだろう。
今も昔も、
文化や伝統はしばしば保護の対象になりがちだが、こういう日がなくならず今でも増えているのはそういうこともあるのではないかという気がした。


大きな街を抜けると住宅街に差し掛かる。
たくさんの小学生が遊んでいる綺麗な公園の向こうの高架線下には、家に居場所がない人がタバコを吸いにくるためのような公園がある。

そしてその近くに巷で有名らしい本当に開かない踏切がある。
遮断機が下りていて人が沢山いたのでだいぶ長く待っていたのかと思ったらみんなポケモンGOをやっている人達だった。

昼を過ぎさすがに太陽も昇りきる頃、立っていても汗ばむ気温になってきた。
もともと長い散歩をするつもりで家を出たので、名残惜しさから3番目ぐらいに遠回りをする道を使って帰路に着いた。

最近できた住宅展示場の裏側は駐輪場になっていて、これも発見だった。
この場所は何かの開発予定地らしく、とりあえず住宅展示場にすんべっていう考え方はなかなかアイデアだなと思った。
住宅展示場の見方が変わる

そういえばあの土地はあーだとかこの家はこーだとかそういう噂ってどっから流れてくるのだろうか


頼まれた昼ごはんの具材を買って家に帰った。
黙って箱アイスを買ったけど全然予算内だったので許してもらえた。
散歩の道で飲んだメロンソーダとバニラのアイスがあるから今解剖されて胃の中調べられたらメロンフロート飲んだと思われるのではないかとか考えていた。

昼ごはんは冷たいうどんだった。

たまにはこういう日があってもいいかなと思った。
忙しいと目が疲れる。

部屋はカーテンを締め切っているので日が暮れているのに気づかなかった。
母親と妹が買ってきた箱入りのアイスのひとつを食べていた。

夏が来るらしい、やだなぁ…暑いのは…、

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