電子でお手紙:わにの腹で昼寝 #k003

ハッカちゃんへ

前回のお手紙をいただいてから、一か月くらい間が開いてしまいました。本当に一か月です。自分が引っ越しなどでばたばたしていた時とは言え、いけませんね。「やらなければならない」というものを最優先してしまうのは、私の美徳であり悪いところだと自覚していますが(だからワーカーホリックなんだよね)改めて前回いただいたお手紙を読み返して、ふわっと、ちょっとだけ時間が巻き戻ったような気持ちがしました。

八月が終わってしまうんですが、お仕事は大丈夫そうですか? しんどそうな様子を窺っているので、とても心配なのですが、私としてはあなたのことを「あまり引くことを良しとはしないほうかなあ」と勝手ながら思ってますので、余計心配しているだけ、というのが実際のところかもしれません。私は体力や精神を削りながらも今の仕事に楽しさや学びの糧を得ているので、割と元気にやれているのですが、本当に、身を削っている日々を他人事ながらひしひしと感じてしまっています。どうかご自愛ください。

そう、前回のお手紙ですが、ずいぶん昔のことを書いてくれましたね。懐かしい、横浜のホテル、行きましたね。私が覚えていない細かな情景までしっかりと記憶してくれていて、本当に感動しました。あの頃の私は、今よりずっとずっと見栄っ張りで(まあまあ今もなのですが)背伸びしがちで甘っちょろいお嬢さんでしたが、あんな風にお友達と「ただそこに行きたいから行く」みたいなことをしたのは初めてだったと思います。
大抵、私の旅にははっきりとした目的があるから。一般的な美味しいものが食べたいとか温泉に浸かってゆっくりしたいとかいう類のことではなく、往々にしてすぐには役に立たない知的好奇心を満たすための「旅」なのだけど。あの時、あなたは「泊まってみたいホテルがあるから付き合ってほしい」というようなことを言ったと思います。そこはすごく、覚えていて、多分私の中でそうした提案がとっても新鮮だったのでしょう。ただ行きたいところへ行く、というハードルが下がったのはあなたのおかげだと思います。すぐね、ぴょんと、行ってしまうじゃない。すごいなあと感じていて、未だに少しの足踏みをしがちなので、ただ行きたい時のその衝動はいいなあと、踏み切れずにいる足元を見て考えるのです。

しばらくはずっと仕事仕事で、多分年が明けるまで仕事のことしか言ってない気がするけど、来年になったら少し遊びに行きたいなと思います。いい加減、大坂城の周りの自主研究をね、したいと思ってますのでぜひお付き合いください。

では、お便りとしては短いですがこのあたりで。仕事をしに行ってきます。

黒田より


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