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「異動は業務命令です」

みなさん、こんにちは。
労基署にいる社会保険労務士、黒田英雄です。

新型コロナウイルスの影響で、業務縮小を余儀なくされる会社や店舗が増えています。
やむを得ず人員削減しなければならない場合、まずは会社都合退職である退職勧奨(たいしょくかんしょう)からはじめることが多いようです。

会社が一方的に雇用契約を切る解雇と違い、退職勧奨は「辞めませんか?」という働きかけです。
同意するかどうかは従業員の自由であり、断られてしまえば会社は雇い続けなければなりません。

中には、退職勧奨に応じなかった従業員に異動を命じる会社もあるようです。
たいていは通勤が不便だったり、自宅から遠い勤務地だったりするため、従業員は当然ですが断ります。

「異動は業務命令です」

会社はそう言って、異動を撤回しません。
通いきれないからとここで退職を選んでしまうと、ほぼ自己都合退職になってしまいます。

過去の判例では、配置転換権(=異動を命じる権利)は会社に強くあるということになっています。
つまり、裁判で異動についての合理性を争おうとすると、従業員が負けてしまう可能性が高いということです。

しかし、長時間かかるような通勤や、まだ子供が小さいなどの家庭の事情は、会社として従業員に配慮が必要とも言えます。
かつては、異動することで出世したり賃金が大幅に増えるというメリットがあった時代もありましたが、今はそうもいかないでしょう。

不利益だけを追わせて、ともすると自己都合退職に追いやる目的の異動命令に対しては、従業員も正当に主張していいと思います。
「なぜ自分なのか」「なぜこのタイミングなのか」「どのような必要性があるのか」などの説明を求めるといいでしょう。

ちなみに、雇用契約書などで勤務地や職種が限定されていた場合は、従業員の同意なく異動させることはできません。
今一度、ご自身の雇用契約の内容を確認してみてはいかがでしょうか。

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ラジオレギュラー「ろうどうステーション」You Tubeに動画がアップされています。

※写真はインスタでアップしているものです。
kuroda_hideo(黒田英雄)で検索してみてください。

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