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サプライチェーンにおけるESGの関心高まる

今日発売の週刊エコノミストでコメントを掲載していただきました。

この記事ではアパレル産業について取り上げていて、繊維製品ができるまでには、例えば綿花畑での綿の収穫から、紡績、染色、縫製を経て、店頭に並び、それを消費者が買います。消費者から見たこれらの工程をサプライチェーンと呼びます。

それぞれの工程には働く人がいますが、特に安さに価値を置く消費者は意識することは少なかったかもしれません。しかしそれらの工程では子供が働いていたり、大人が働いていても長時間労働にもかかわらず薄給しか支払われない過酷な労働環境だったりすることがあります。また染色の段階で深刻な水質汚濁が発生したり、合成繊維の加工により発生したマイクロプラスチックが海洋まで流出したりして環境問題を引き起こしている側面もあります。サプライチェーンでの労働・環境問題は他の業界、例えば家電業界や自動車業界でも形は違えど存在します。非常勤講師を務めている青山学院大学の講義でこの話をすると、かなりショックを受ける大学生もいます。

しかしこれに対して欧州を中心としたNGOは問題提起を続け、消費者の意識啓発に努めてきました。以前取り上げたフェアトレードもこの意識啓発活動の一環です。

このような消費者の意識の高まりにより洋服のような最終製品の製造会社やそれを販売するデパート・スーパーなど小売店は自社の評判を守るため、サプライチェーンで適正な製造活動がなされているか監視せざるを得なくなりました。これに対しフランスのEcoVadisやイギリスのSedexなどサプライヤーのESG活動を評価する専門評価機関が台頭してきています。

投資家の間でもサプライチェーンでのESG活動について関心を寄せ、活動が不十分だと考えられる企業へは対話を通じて活動の改善を呼びかけています。しかしこの運動の最大の原動力は消費者です。日本でも働き方改革の議論をきっかけにサプライチェーンでのESG活動への関心が高まることを期待しています。

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