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老後の資金準備が明確になる考え方

5月12日の衆議院本会議で、年金改革法案が可決されました。

2019年12月に取りまとめられた「全世代型社会保障検討会議」の中間報告において、改正の方向が示され、今年3月3日に閣議決定されていたもので、働き方の多様化やより長く働くことに対する環境整備などが目的とされています。

■受給開始年齢の選択幅が広がる

本日の題名に採用した通り、一番目に付くのは「受給開始年齢の引き下げが75歳まで可能になる」という内容で、2022年4月からの実施が予定されています。

<a href="https://www.youtube.com/watch?v=c1xq2mnyhIw&t=16s" target="_blank" title="">こちらの動画</a>でもお伝えしてますが、現在の老齢年金は「60歳~70歳の間で、自分が希望する時期から受給開始できる」ようになっています。そして、受け取り開始時期に応じて年金額が異なります。
65歳を基準として、それより早く受け取る(=繰り上げする)と、ひと月当たり0.5%の減額、それより遅く受け取る(=繰り下げする)と、ひと月当たり0.7%の増額となるのです。

■繰り上げ、繰り下げの場合の年金額

例えば、国民年金から受け取る老齢基礎年金は、2020年度の満額が781,700円です。
60歳から受給開始を選ぶと、年金額は「0.5%×60月=30%」減額の547,190円となり、70歳からの受給開始を選ぶと、年金額は「0.7%×60月=42%」増額の1,110,014円となるのです。

今回の改正で、繰り下げの最大年齢が75歳になると「0.7%×120月=84%」の増額なので、老齢基礎年金だけで1,438,328円(=月額約12万円)となり、これに厚生年金が加わる人は、老後資金の不足問題がかなり解消されるでしょう。
(ちなみに、今回の改正で繰り上げの際の減額率は、ひと月当たり0.4%になる予定です)

■老後のための準備資金が明確になる考え方

さて、こうした繰り上げや繰り下げの仕組みは「どちらがお得か?」という話になりがちですが、これには答えがありません。
ごく単純に考えて、早く亡くなることが分かっていれば早く受け取り始める方がいいでしょうし、長生きすることがわかっているなら、なるべく受給時期を遅らせる方がいいのは明らかですが、自分が何歳まで生きるかは誰にもわからないからです。

ではどうすればいいのでしょうか?
もちろん、ひとり一人働く環境や健康状態、家族の状況などが異なるため、決めることはできないものの、例えば最初から「公的年金は70歳(または75歳)から受給する」つもりで計画を立てることが検討できます。

この計画のメリットは、「何歳まで生きるかわからないから、老後資金をいくら貯めればいいかわからない」という問題を解決してくれる点でしょう。
仮に70歳まで働くことで、日々の支出を賄えるだけの収入を得られるならそれでいいですし、「65歳以降は収入が減るから年間100万円は不足する」のであれば、生活費の補填として「100万円×5年=500万円」を蓄えればよいわけです。これで目標が明確になりますよね。

そして70歳以降は、増額された老齢年金によって最低限の生活費が賄えるのであれば、あとはどれだけ長生きしても生活費の心配はありません。なぜなら、老齢年金は終身受け取れるからです。
もちろん、医療や介護の備え、住宅のリフォーム等といった話は別ですし、そもそも「日本の公的年金は大丈夫なのか?」という疑念を持っているのであれば、何を考えても安らぐことはないかもしれないのですが…。

今回の年金改革法案では、受給開始年齢の選択肢が広がること以外に、短時間労働者への厚生年金の適用拡大や、在職老齢年金の見直しなど、割と盛りだくさんの改正内容が盛り込まれており、2022年4月以降に順次スタートする形となります。

この機会に「自分の場合はどうなのか?」をしっかり考えてみるのはいかがでしょうか。

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