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【私見】経済は良くない感じがするのに株価が上がる構造を整理してみました

このブログは
「給料が減ったとか、コロナ倒産という話も聞くので、景気が悪いと感じる。」
という実感値と、
「アメリカや日本などの株価が高値を更新している。」
という現実との乖離を整理したくて、書いたものです。

誰かが上手く整理してくれていると良いのですが、私が見た記事の多くはカタカナやアルファベットが多かったり、特定の一部分だけを採り上げたりしているものが多いように感じられたので、自分で整理することにしました。

なお、最初に申し上げますと、私は金融のプロではありませんし、経済学をちゃんと勉強したこともありません。それに、個々の情報ソースのウラを取りに行ってもいません。
ゆえに、ヌケモレや間違いは沢山あると思うのですが、そうした「いいかげんなもの」だという前提でご覧ください。また、根本的に間違っている部分については、暖かくご指導いただければ幸いです。
ただ、私にとっては、正月が明けて、また日常に戻って小さいところに目が向いてしまう前に、粗くとも全体観を持っておくことが重要だと思われた、ということです。
以上により、基本的に、あくまで一個人の理解としてご参考いただければありがたいです。

(1)2020年の世界(お金の流れ ①概観)

考えたことを図にしました。ほぼこれがここで書きたいことの全てで、以下は解説です。
なお、わかりやすさを優先するために、この図はいろんなことを「捨てて」います。
例えば、お金の流れを表す矢印はほとんどが双方向なのですが、あえて一方向にしていますし、「民間銀行」も重要な役割を果たしているのですが、複雑になるので、思い切って省きました。そうした前提でご覧ください。
つまるところ、この2020年は国家や中央銀行がタッグを組んでコロナ状況下の経済活動(≒資金繰り)を支えようとした結果、利潤を求めた投資家の資金が国債から証券に移動して、株価を底上げした、ということのようです。
そして、企業はそのお金を新たな価値創造のための投資に回しているようです。

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以降では、B/S編と、P/L、C/F編に分けて、少しだけ細かく書きます。

(2)2020年の世界(お金の流れ ②B/S編)

ここでは、資金の「貸し・借り・投資」という、B/S(貸借対照表)の観点で捉えました。わかりやすくするために、①~⑦の流れで整理しました。

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① まず、国家はコロナで経済が打撃を受けても、なるべく企業が倒産したり、個人が死んでしまったりしないように、必要な保障をしようと考えます。ついては、そのためのお金が必要なので、国債(国の借用書)を(今までよりも)たくさん発行してお金を調達します。

② 国債をたくさん発行すると買い手(=貸し手)を見つけるのが大変になるので、普通は金利が高くなる(買い手にとっての利回りが高くなる)ものですが、ここで中央銀行が特例措置として大量に買い入れるので、金利は低いままでよくなります。この特例措置を量的緩和策と言って、今年は世界主要国の中央銀行がこの政策を採用しました。

③ 国債の利回りが低いと、投資対象としての魅力が低くなってしまうので、投資家は国債に投資しなくなります。

④ 行き場を失った投資家の資金は、利潤を求めて株や社債(会社が発行する債券)に流れていきます

⑤ また、日本の場合は、中央銀行が株を間接的に買い支えるということもしています

⑥ 結果、株の価格はとても高くなります

⑦ なお、企業はそうして調達した資金を、将来の成長に向けた投資に使います。日本などの成熟した市場では、既存事業の大きな成長が見込みにくく、新たな成長市場を開拓するための研究開発やM&Aに使われることが多いようです

(3)2020年の世界(お金の流れ ③P/L、C/F編)

ここでは、「支出・収入」という、P/L(損益計算書)、あるいはC/F(キャッシュフロー)の観点で捉えました。こちらも、①~④で整理します

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① 国家は、コロナで打撃を受けた企業や個人に対して、直接的、あるいは銀行などを通じて間接的に支援して、経済活動を支えます

② 企業は従業員に対して、決まった賃金を払い続けます。(*一部減額や、早期退職などのケースはありますが、急に支払いを止めるわけではない、という意味です)

③ しかし個人は、先行きの見通しづらさや、コロナによる活動制限により、商品やサービスを買い控えます(*商材やサービスの種類によって差はあります。消費が増えるものも当然あります)

④ 企業にとっては、売上は下がって、費用は従来通りという状況が続くので、利益は出にくくなり、赤字になることもあります。しかし当面は、資金は調達しやすい地合いにあるので、資金繰りに困ることはありません。当面は…

(4)来たる世界を考える(逆向きの矢印に備える)

ここまでは2020年の世界について考えてきましたが、この世界は「異常」な世界です。
自らお金を発行できる「中央銀行」や、大きな資産を持っている「投資家(の集団)」の資金を原資に、痛んだ経済活動を支え続けるのは、構造上永続的に続くものではないと思います。従って、いつかは「本来の姿」に戻っていくことが予測されます。
これが「逆向きの矢印」で、強い経済活動によって価値を産み出し、そこで得た利益を元に納税したり、配当したり、借入を返済したりするお金の流れを太くしていくことが求められるでしょう。

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そして、その「来たる世界」の主役は、経済を回す企業であり、個人であるということになります。
ではそこに向けて、彼ら(我々)が何をしなければならないのか、ということは、このフレーム外の話になりますので、一旦この話はここで終いとします。

【参考記事】

株式時価総額、世界で15兆ドル増 中銀緩和マネーが支え
https://blog.goo.ne.jp/spc101c/e/333e8dfd416776f9499caaf4c1685bd8

新型コロナウイルス感染症に対する政策対応の「これまで」と「これから」―国際金融危機の教訓を踏まえて―
日銀黒田総裁 IMF・東京大学共催バーチャル・コンファレンスにおける開会挨拶の邦訳
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko201124b.pdf

〈回顧2020〉コロナ下、業績回復に明暗 5月が底、腰折れ懸念も
(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67527610R21C20A2M11200?unlock=1

企業業績、二極分化 コロナ禍、減益・赤字相次ぐ―中間決算
JIJI.COM
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020110901031&g=cyr

帰ってきた池上彰の「やさしい経済教室」【第4回】国債って何ですか?
https://www.asahi.com/ads/start/articles/00045/

帰ってきた池上彰の「やさしい経済教室」【第3回】紙幣はいくらでも発行できますか?
https://www.asahi.com/ads/start/articles/00044/

日本株を影で大量保有 日銀のETF買入れが株価に与える影響とは?
(Newsweek日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/carrier/2020/11/etf.php

コロナ禍で増える、日銀が「大株主」の企業ランキング【300社・完全版】
(DIAMOND online)
https://diamond.jp/articles/-/235314

日本は借金大国なのに、金利や物価が全然上がらないのはどうして?
https://financial-field.com/assets/2020/10/19/entry-89160

研究開発費11年連続増 1位トヨタ、1兆1000億円
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00567679

今年の社債の発行額は過去最高ペース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kubotahiroyuki/20201212-00212199/

2020年1~9月のM&A金額、前年比倍増の9.6兆円|「上位30」一覧
https://maonline.jp/articles/ma_ranking_top30_2020_3q

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