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「企業業績見通しの勘所と日本株投資」について考えてみました

「企業業績見通しの勘所と日本株投資」

今回のnoteでは、企業業績見通しに関する留意点と現在の企業業績見通しが示唆する日本株への投資方針を考えてみました。今回この話題を取り上げた理由は次の観点からです。

①コロナウイルス禍のため今年度の決算見通しをを非公開とした企業が期初では多かったもののここにきて開示企業が増えてきている。

②10月後半から11月の中間決算が近づくころから主要市場参加者は次期企業業績予想をベースに株価理論値を考え始める。

③2021年度の業績見通しに対して予想を立てる材料が増えつつある。

まず、足元の企業業績見通しに関する留意点は開示企業数の拡大です。第1四半期決算時期の8月中旬時点では7割弱(東証1部、期初4割強)の企業が業績予想を開示しています。10~11月の中間決算を過ぎれば予想開示企業もさらに増えるとみられます。予想開示が遅れた企業に見られる傾向として慎重しすぎる業績見通しを公表する例も少なからず見受けられます。従って、業績下振れリスクとボトムを確認できるタイミングが近づいていることいえ、これが最初のチェックポイントとなります。

最新の企業業績見通しで参考になるのが証券大手3社が集計している企業業績見通し(金融除く)です。9月上旬に見直した主要上場企業の経常利益は今年度が16~23%減少する(6月前回予想、+0.2~-9.5%)ものの、2021年度には41~49%増える(同、+25.7~+31.4%)予想です。為替は予想2期間の円/米ドル前提が105~106円/ドル(2019年度109~110円/ドル)で、2021年度には円高の影響がほぼなくなるとみています。

今回見直した集計結果から読み取れる注目点は、この時期市場参加者が注視しはじめる2021年度業績が前回予想と比べ遜色ないレベルまで回復することに加えて、景気敏感業種、コロナウイルス禍による外出自粛などの影響を大き受けた業種の回復です。2020年度の見通しは6月時点よりも大きく悪化していますが、続く2021年度については従来予想に近いレベルまで回復を見込んでいることを示しています。また、コロナウイルス感染第2波がないことを前提に、予想2期間にわたりDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりの恩恵を受ける業種と電子商取引の拡大が寄与する業種等が、2021年度に関しては需要回復が期待できる業種が業績を牽引するとみています。寄与率からすると、2021年度は自動車と運輸関連が業績回復を主導する見通しです。

ところで、企業業績見通しの集計に携わる足元のアナリストが実際にどのような予想をしているか、その事情や背景を把握しておくこともアナリストたちの予想を占ううえでの重要な鍵となります。不確実性が多く存在する現在、アナリストは会社側予想から外れた独自の予想を立てにくいものです。業績見通しの下降局面では、アナリスト予想修正が後追いになるとよく言われますが、今回の局面では慎重すぎる会社側業績予想にアナリスト予想が追随している点も押さえておきたいポイントになります。

次に、大手シンクタンクの株式ストラテジストは期初非開示で2020年度第1四半期業績発表時期の8月中旬までに業績予想を公表した企業の業績見通し(東証1部、3割弱)の特徴と公表後の株価への影響に関する興味深い分析をしています。特に注目されるのが、公表が遅れた2020年度企業業績見通しが期初公表見通しよりも悪く、なかでも50%超の大幅減益見通しになると公表後の株価が大きく調整し戻りも遅れた事実です。こうした企業群に見られる株価形成理由として、市場コンセンサスに対して会社側の修正見通しが保守的すぎることによるサプライズ要因を指摘しています。

日本の株式市場ではこれまで企業業績に信頼感のある「withコロナ」銘柄が注目されてきましたが、10月後半から11月の中間決算を経て2021年度企業業績見通しに関する情報量が増え透明性が高まってきます。また、この時期になると主要投資家は2021年度の業績予想をベースに株価の方向性、理論値等を考え始めます。決算情報に基づいた精緻な分析をもとに株式市場を取り巻くマクロ・ミクロ要因を勘案すれば、見落としていた銘柄を発見したり、売られ過ぎの企業を見出すチャンスにつながってきます。

過度なリスクをとる必要はないですが、日経平均株価を上回るリターンをす目指すのであれば米国市場に比べ相対的にウエイトが高く株式市場で不人気であった景気敏感株をはじめ、コロナウイルスの打撃を大きく受けた銘柄にも投資機会が到来していることを意識すべきです。大手商社株が米国の著名投資家バフェット氏の投資を切っ掛けに反転上昇したことは、こうした投資方針の正しさと採るべき時期が到来していることを示唆していると考えてもいいのではないでしょうか。

一方、日本の株式市場は海外投資家の売買動向の影響を大きく受けます。FRBの金融政策等による米国株の急回復で米国株式市場に割高感がでてきています。また、政治・コロナウイルス要因から株価ボラティリティも高まり始めてきているだけに、我が国企業業績の回復確度が高まれば、海外投資家は日本株に再び目を向けてくるはずです。

最後に、企業業績に関する日経新聞活用法を紹介してこのメモを終わりたいと思います。日経新聞朝刊のマーケット総合欄には前日の日経平均株価とその予想PER(株価収益率)が掲載されています。9月25日時点の予想PER23倍強から逆算できる今年度の予想EPS(1株当たり利益)は1000円強で、来期の増益率をかけて来期予想EPSを計算すれば来期予想EPSに基づいた日経平均株価の予想水準をイメージすることができます。

例えば、来年度の予想EPSが証券大手3社の業績予想を参考に50%ほど回復したとすると、来年度予想EPSをベースにした予想PER15倍強となり過去10年の平均値14倍前後からみても現在の日経平均株価は許容できる水準といえます。ただし、日経平均採用銘柄と証券大手の集計対象企業が異なるうえ、日経平均が採用銘柄の単純平均として計算されるため証券大手の業績予想をそのまま参考にしたのでは正確性を欠くので注意が必要となります。

なお、企業業績見通しの方向性を判断するうえで参考になるリビジョンインデックスの重要性等に関しては今回このnoteでは触れませんでした。興味のある方は、関連レポート・解説書をご覧になって下さい。また、「株に強くなる『日経』の読み方」(日経新聞社)等も参考になります。余裕のある方には、一読をお勧めします。

Malon, 9. 28. 2020

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