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天皇賞・春 3ステップ考察(予想から回顧まで)

 この投稿は天皇賞・春を考察した記事です。有力馬考察・馬券予想・レース回顧の3ステップにわけて更新していきます。
 

※その他の重賞については、InstagramおよびFans’に投稿予定です
https://www.instagram.com/kurigasila_keiba(考察)
https://www.fansnet.jp/kurigasila-kaz(回顧)


 

1:有力馬考察

★ディープボンド

 「アルザオ≒ダンシングブレーヴ」4×3、「ストームキャット≒モガミポイント」3×3により、柔らかさ・軽さを強力に増幅した配合。血統表の字面ではマイル~1800mくらいがベストに見えます。しかし実馬は昨年の阪神大賞典を稍重で圧勝。天皇賞・春、有馬記念でも2着になるなど、想像とは違うタイプに出ています。この馬は2代母の父・カコイーシーズがかなり強く出た、馬力型の長め中距離馬という認識です。
 昨年の天皇賞・春は道中のペースが非常に速く、“脚が遅い”ステイヤーはまったく対応できませんでした。そのなかでの2着は、この馬が単なるスタミナ型ではなく、スピードを兼備したGⅠ級であることの証明と言えるでしょう。
 前走の阪神大賞典は、スローの流れを中団から差す競馬。溜めて切れるタイプではないので、このかたちなら着差はこんなものだと思います。前哨戦用の仕上げでも危なげなく勝ちきるところはさすがです。


★タイトルホルダー

 ミスタープロスペクター4×5、「ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ」5×4、ミルリーフ4×6、「セックスアピール≒アンコミッティド」6×5などのクロスを内包。大きくまとめて「キングカメハメハ≒メーヴェ」2×1という壮大な配合になっています。キンカメの万能性を受け継いでおり、展開問わず走れる堅実さが魅力です。ただこの仕掛けの真の価値は別のところにあります。母のメーヴェは現役時代に丹頂S(芝2600m)を勝ったスタミナ馬。母としてもこの資質を伝えており、初仔のメロディーレーンは長距離で3勝。古都S(3000m)を勝利するなどステイヤーとして活躍しています。この母の心肺機能を、2番仔のタイトルホルダーは「キンカメ≒メーヴェ」で強力に引き出しているのです。これこそが最大の長所でしょう
 前走の日経賞は、中盤で13秒台中盤のラップを刻む超ドスロー。道中で前にいた5頭がそのまま掲示板を独占。最初のポジションですべてが決まったレースでした。逃げたタイトルホルダーはもっとも恩恵を受けた馬。後続のぬるい動きに助けられたのもたしかです。ただこの馬は有馬記念後に後肢を故障。一度は春のプランを白紙にした経緯があります。展開利があったにせよ、まずはきっちりと勝ちきったことを評価すべきでしょう。本来はもっと積極的に引っ張り、後続を振り落とすレースができる馬。今回は大きくパフォーマンスを上げてくるはずです。


★テーオーロイヤル

 リオンディーズ×母の父マンハッタンカフェは、本馬のほかにリプレーザ(兵庫CS)などの活躍馬を出す好相性の組み合わせです。マンハッタンカフェは現役時代に菊花賞、天皇賞・春を勝った馬。テーオーロイヤルの長距離適性は、ここに由来するという見方はできるでしょうか。ただ種牡馬としてのマンカフェは突進的なスピードを伝えやすく、あまりスタミナ血統というイメージはありません。個人的な見解としては、マンカフェの影響より、2代母の父・クリスエスの恩恵だろうと考えています。本馬のおじにあたるメイショウカドマツも、ダイワメジャー産駒ながら中・長距離を主戦場にしていました。この一族はクリスエスのロベルト的なスタミナが伝わりやすい血統なのでしょう。
 前走のダイヤモンドSは、中盤以降で緩むことがなく、ロングスパート戦のかたちとなりました。先行馬にはかなり厳しい流れ。2、3着は後方二桁番手にいた馬が突っ込んできています。そのなかで本馬だけは、4番手の積極策から早め先頭で押し切り。普通なら沈んでもおかしくない競馬をしながら、2馬身半差の勝利ですから、かなり強い勝ち方と言っていいでしょう。前走から4キロ増の58キロは楽ではありませんが、どんな走りを見せてくれるのか、楽しみのほうが大きいですね。


★アイアンバローズ

 オルフェーヴル産駒は軽さや柔らかさを司るスピード血統の補給がセオリー。ただ本馬の場合、あまりスピード色は濃くありません。むしろシアトリカル、ロベルト、リローンチ、2本のダマスカスなどで、パワーやスタミナを大きく強化させる構成になっています。スピードが足りないため、長めの距離に活路を見出すのは自然のことでしょう。
 ステイヤーにもいくつかのタイプがありますが、本馬は「屈強なパワーによる優れた筋持久力をもち、道中でへこたれないよう体力で乗り切る」タイプ。体に硬さがあり、リラックスして走るのは苦手です。遅い流れを無理やり抑え込んでも、力みが抜けずに無駄に消耗するため、早い流れを積極的に追走した場合と比べて、トータルでのスタミナ消費量という点ではそんなに変わらないと見ています。
 ステイヤーズSと阪神大賞典は、本馬が不得意とする緩い流れでした。追走レベルが上れば、むしろ折り合い面は楽になるはずなので、これまで見せてこなかったパフォーマンスを発揮するかもしれません。


★マカオンドール

 ドロドロとしたスタミナをたっぷりと秘めたゴールドシップが父。また母の父・ダルシャーンもドロドロとした柔らかみをもつ仏ダービー馬。機敏な動きができるはずがなく、スピードもありません。距離延長につれてパフォーマンスを上げてきたのも当然でしょう。父方の「ノーザンテースト≒ザミンストレル」や、母方のヌレイエフのパワーが根づいており、体幹そのものはしっかりとしています。ステイヤーとしての総合力は高そうです。実はおじにバゴをもつ超良血。配合的なポテンシャルも間違いありません。
 道中が忙しいと追走で苦労しそうな雰囲気です。また切れ味はないため、極端な瞬発力勝負も避けたいところ。中盤までゆったりと走りつつ、後半からのロングスパートが理想でしょう。ただ後方から追い込むのスタイルのため、どうしても他力本願な競馬になりがち。好勝負に持ち込むためには、雨などのサポートがほしいところです。


2:馬券予想


◎クレッシェンドラヴ
 ステイゴールド×母父サドラーズウェルズ。3代母がシャーリーハーツ×シーホーク。スタミナと持続力の塊のような構成をしています。重馬場の七夕賞を勝っているように、渋った馬場も大丈夫。前走の日経賞では、スローの瞬発力勝負という好ましくない条件のなか、タイトルホルダーと0秒3差の4着。内目の好位に付けることができれば、思わぬ激走があってもいいのではないでしょうか。

○ディープボンド
 パワー、スタミナ、持続力はもちろん、スピードも高いレベルにあることを昨年のGⅠ好走によって証明しています。大外枠がどうかですが、それでも1番人気にふさわしい走りを見せてくれるはず。


3:レース回顧


 シルヴァーソニックが落馬する波乱のスタート。それにしても、空馬なのにレースぶりは抜群でしたね。外からじんわりとポジションをあげると、スルスルと内に潜り込み、2周目の向正面ではラチ沿いの2番手という絶好のポジションを確保してしまいました。まあこれを冗談交じりに言えるのも、人馬ともに異常なしとわかった今だからこそ。ゴール後の背面跳びも含めて、本当にヒヤヒヤさせたレースでした。

 リアルタイムで見ていたときは、シルヴァーソニックに気を取られていて、いつの間にかタイトルホルダーが先頭に立っていたくらいにしか思っていませんでした。あらためて映像を確認すると、スタートから押して押して、明確にハナをとる競馬をしていたのですね。正直に言うと、日経賞の競馬内容から、スタミナ温存の控えめな競馬をする可能性もあるのではないかと、やや懐疑的に見ていたところはあります。しかし実際は菊花賞を思わせる積極的な逃げ。紛れを期待して本命にしたクレッシェンドラヴは、2番手に付けるも追走で手一杯。早々に脱落してしまいました。

 1~5番人気が掲示板を独占する手堅い決着。この距離ですからスタミナが問われたのはもちろんでしょう。ただ多くのステイヤーはタイトルホルダーのペースに付いて行くのに苦労して、自分のリズムより頑張って走れなければなりませんでした。スピードのない馬は、そのぶんスタミナの消耗が早く、厳しかったように感じます。そういう意味で本質はスピードにあった印象です。


タイトルホルダー(1着)
 スタートから一気に加速させて突き放す逃げ。2周目に入って一息入れるも、向正面ですぐに再加速。後続に付け入る隙を与えずロングスパート勝負へと持ち込みました。後半の早め仕掛けについては、シルヴァーソニックが迫ってきた影響があったかもしれません。いずれにしても、このかたちで最後まで脚色が衰えないのは驚異ですね。

ディープボンド(2着)
 積極的に出していって、好位の5番手から追走。パターンとしては悪くないように見えました。後半でペースを上がったときには、食らいついていくのに苦労していた印象。3コーナーで追い出し、早々にムチを入れて何とか耐える感じでした。なんとかテーオーロイヤルを交わして意地を見せましたが、状態的に良くなかったような気がします。

テーオーロイヤル(3着)
 正攻法の競馬でタイトルホルダーに挑んだものの、最後に力尽きて3着。前走でかなり強い競馬をしていたとはいえ、4キロ増の58キロでいきなりこのパフォーマンスを見せたことには驚きました。シルヴァーソニックの存在にも気をつかうなか、素晴らしい内容だったと思います。


オマケ:血統ワンポイント解説


 タイトルホルダーについて別記事で考察を投稿しました。そちらも合わせてお読みください。


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