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『パンセ』 解説

パスカルの『パンセ』、本邦初訳が由木康氏であると知ったのは、たった数日前のことでした。白水社の1冊を私は持っていますので、それを用いて、この「note」を書いていこうと思っています。

他の箇所でも書いたので、もう耳にタコができたよ…という方にはご勘弁願いまして、もう一回だけ再読願いたいのですが、わたしの場合、まずは、その本を手に取ってから「目次」に目をとおして、次に「まえがき」を読み、そのまま巻末にある「解説」や「あとがき」を読んだら、その1冊を、どう読むか?1冊を通して読むのか、それとも目次で確認した情報から、必要そうな箇所だけを抜き出して読むか、スピード重視で「斜め読み」するか、もしくは精度重視で「精読」するか、いろいろと事前情報を得てから、本文へ取り掛かるのも、そのリーチの伸ばし方に違いがあったりします。

今回は「目次」はありますが、書かれている内容の要約にはなっておらず、あまり情報としては役立ちそうにありません。

巻末には、なんと贅沢なことに「解説」と「解題」の2つが書かれています。

今回は、この「解説」のほうに、ちょっと触れてみたいと思います。

田中小実昌(たなか こみまさ)氏という方が、その解説をかいているのですが、この方が書いた文章を読むのは、はじめてです。Wikipedia日本語版に情報があったので、一応、リンクを貼っておきます。

上記、Wikiの記述を読むかぎり、かなりの風来坊な方だとお見受けしたのですが…とりあえず、彼の解説文から、紐解いていきたいと思います。
題して「哲学を軽蔑することこそ、真に哲学することである」です。

 パスカルの『パンセ』の翻訳は、何度か読んだと思っていた。この本の訳者の由木康さんの「『パンセ』小史」によると、抄訳の『パスカル瞑想録』が発行されたのが1938年(昭和13年)だという。白泉社刊のこの本は、ぼくももっていたし、また、あちこちでも見かけた。当時のベストストセラーだったようだ。

『パンセ』(由木康訳、白泉社)より引用

かくいう私も、パスカルと云えば「白泉社」で「由木康」訳ありき…と思い込んでいた節があり、他の訳文には目もくれなかったため、今まで調べたこともないのだが、今回を契機に、Amazonにて「パンセ」と「本」というカテゴリーで調べたら、以下のようなものがでてきたので、一応のこと、平等を記して、リンクを貼っておきます。

さて…田中小実昌氏の解説文に戻ります。以下、引用を続けます。

 それに、この『パンセ』は、いそいで、さーっと目をとおす本ではない。いつも、はやく本を読む人も、この本だけは、ゆっくりゆっくり、よみかえすようにして読んだほうがいい。そのほうが、うんとたのしい。はやく読んじゃソンだ。
 べつに姿勢をただすようにして読むことはない。逆に背中をまるめて、この本をかかえこむみたいにして、一行づつ、いきつかえりつしながら読んでいく。
 だいだい、これはパスカルの自分のためのノートの断章をあつめたもので、ときにはため息まじりのひとりごとみたいなみたいなものだから、その息づかいまでも、読む人がからだじゅう目にして耳にして、つまりは幾何学的精神だけでなく繊細の精神でもって読んでいくと楽しいのではないか。

『パンセ』(由木康訳、白泉社)より引用

ここで「幾何学的精神」と「繊細の精神」と出てきたのですが、ググってみたら、ビジネスマン向けのコンテンツなのですが、それを説明してあるページがあったので、一応、以下にリンクを貼っておきます。

さて…気を取り直して、田中小実昌氏の解説文、引用を続けます。

 パスカルが追いもとめたのは、ただ真実だけだった。でも、だれでもが真実をもとめているわけではない。それどころか、いつも立身出世をこころがけてはいなくても、とにかく無事に毎日を過ごすことに気をつかい、真実なんて考えない人のほうがふつうだろう。
 ところが、ともかく真実がしりたい、真実をつかみたい、という人は実際にいるのだ。そして、そんな人たちは、真実を知ることは、ときには不幸なこともある。なんて言ってる人こそ不幸な人だと思う。真実が知りたくてたまらず、幸、不幸はカンケイない、ってわけだ。
 この『パンセ』を、たくさんの人たちが読んでくれるとうれしいけれども、徳川家康についての小説を読んで、経営の参考にしようなんて人は、『パンセ』を読んでも無駄だろう。そんなことは書いていないからだ

『パンセ』(由木康訳、白泉社)より引用

最後の「徳川家康」の下りをワープロで入力しながら、思わず苦笑してしまったのですが、たしかにビジネスマンが、経営者の極意だったり、はたまた自己啓発系の本でもないですね…『パンセ』は。そういうニーズには、最初から応じられるようが1冊にできていないのは、目次を見ると明らかなのですが…という訳で、次回は『パンセ』の目次と、巻末にある「解題」から幾つか引用して、紹介しようと思います。

では、またの機会に、お元気で。

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