暮瀬堂日記〜蚊

 入梅頃より蚊が入って来ることが増え、「蚊のいなくなるスプレー」等を使用していたが、今朝蚊に喰われる感じがして目が覚めてしまった。同時に蚊のいたであろう所の腕を打ったが、仕留めることは出来なかった。

 そんな朝を忘れていた昼過である。休憩中、京急線横須賀中央駅前を通ると、献血バスが目に留まった。なぜ十年ぶりに献血をしよと思ったのか解せなかったが、朝のことが頭の片隅に残っていたからかもしれない。
 献血する四〇〇CCと、蚊の持ち去った一CC、誰のためにどこに行くのだろうか。蚊の塒には血の貯蔵庫でもあるのかもしれない。

   蚊を潰しそこねし昼に献血す

 そんな句を呟いていると、いつか血液のパック詰めも終わっていた。

(旧暦四月廾五日 芒種 梅子黃ばむ候)

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