土と焔の芸術 備前焼の器を買い求める

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                       2020/06/12 第574号
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【 土と焔の芸術 備前焼の器を買い求める 】

こんにちは。商品価格アドバイザーのカエルです。

最近、備前焼の窯元にお邪魔して、器を買い求める機会がありました。

工房とお店が一体になっている窯元を2軒訪ね、1軒でいただきました。日曜日の午後遅い時間でしたが、どちらも陶芸家の方がいらっしゃり、窯を見ながら、その作陶や窯焚きなどについて、丁寧に説明してくださいました。

サンマを一尾そのまま載せられるサイズの皿を長年探し、なかなか気に入るものに出会えなかったのですが、そこで出会うことができました。全体の形、縁の反り具合、角の丸み、色、景色・・・すべて一目で気に入りました。

黒っぽく渋い地色に、黄色い点描のような模様、赤っぽい線、少し明るい面などが浮かんでいます。釉薬を一切使わない備前焼のやきものに何故このような景色が生まれるのか。調べてみると、その皿には以下のような見どころがありました。

●黄胡麻(きごま)
 窯の温度が1200℃を超えると器の表面の粘土が熔け、そこに飛んできて付 着した灰が自然の釉薬のようになり、器が冷えたときに固まってできたも の。
●かせ胡麻(かせごま)
 灰が熔け切らずに貼りつき、かさかさした風合いになったもの。
●緋襷(ひだすき)
 藁が燃えた跡。藁に含まれるアルカリ分と粘土の鉄分が反応し、鮮やかな 緋色に発色する。
●牡丹餅(ぼたもち)
 炎が直接当たらない部分の「抜け」。

備前の土は収縮率が大きく、鉄分が多いので釉薬とは合わないため、最大限に土の持ち味が活かされています。

日本六古窯の一つ、備前焼が本格的なやきものとして誕生したのは鎌倉時代。その後茶道具として重用されたものの、江戸時代に入ると、瀬戸・美濃や京、有田、萩、薩摩などの釉薬陶に押されて衰退しました。しかし中興の祖、金重陶陽が近代備前の道を切り開いたことから、備前は陶陽を含めた人間国宝を次々と生み出し、現在の隆盛があります。

私が買った皿は1枚が3,600円。でも人間国宝の陶芸家の手による芸術作品とかけ離れた物だとは思えません。どちらも陶芸家が一点一点手作りしたものです。大量生産の安価な食器に押され気味のやきもの産地ですが、手に取り、愛で、楽しんで使う人がいる限り、今後も発展してゆけるのだと感じます。

<参考>
「NHK 美の壺 備前焼」NHK出版
「窯別ガイド 日本のやきもの 備前」文・上西節雄 写真・中村昭夫 淡交社==================================================
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