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コミュニケーションが地域を面白くする。―「シマシマ編集室」取材記事 ライター:あきらさん

◎2019年10月10日に実施した「シマシマ編集室」取材の記事です。インタビュー内容をそれぞれがまとめ、自分の言葉で綴る、という体験をしていただきましたので、ご覧ください。


1.はじめに


私の暮らす街、島根県出雲市。私はこの街が好きです。海も山もある自然豊かな街。この先もずっとこの街で暮らしたい。でも、そんな私が出雲に抱いている正直な感想は「少し中途半端な街」なのです。

特に、市の中心と言われる場所にあるお店に中途半端さを感じます。全国チェーンのお店やファストファッションの店など、便利なお店は増えました。でも、出雲にしかない素敵なお店というと、本当に一握りしかないのでは?と思うのです。自分がお店を出しているわけでもないから、偉そうに言える立場ではないのですが。

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日々そんな気持ちで暮らしている私がある日、月一で開かれるファーマーズマーケット「CiBO(チーボ)」へ行き、驚きました。

「楽しい!素敵なお店がいっぱいある!」

野菜や食べ物のお店だけではありません。コーヒーのお店、エプロンやバッグを売るお店、古本屋さんまであります。そしてお店のひともお客さんもみんなニコニコしてとても楽しそう。

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出雲がこんなお店であふれる街だったらいいのに。そう思わずにいられませんでした。

その「CiBO」主催者である青野司さんへのインタビュー当日、あれもこれも聞きたい!とわくわくしながら参加しました。

2.青野さんと農業について

青野司さん。ご自身の「Good Life Farm」という農場でたくさんの種類の野菜を育てて、お店やレストランに卸していらっしゃいます。そのかたわら五人のお仲間と共同で、月一回CiBOというファーマーズマーケットを開催されて丸二年。

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まず驚いたのは、青野さんのご実家が農家ではないというお話でした。私には、出雲で農業を営んでいる方というと代々の跡を継いで…というイメージが強かったのですが、青野さんは全くの新規就農者。東京の専門学校を卒業後、アメリカで生活され、現地のファーマーズマーケットなど農業のあり方を見て「農業ってかっこいい、やってみたい。」と帰国。ふるさとである出雲で農業をやることに迷いはなかった、とおっしゃいます。

ご自宅から車で10分という距離に山が近くに見える絶景のローケーションの休耕畑を借り受けることができ、青野さんの農業がスタートしました。


3.青野さんがCiBOで大切にしていること。


青野さんのやり方は、思い立ったらまず実行。CiBOを開催するときも、企画から二、三か月で実際にマーケットを開かれたというから驚きました。何という実行力。

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「でも、仲間とめちゃくちゃ話し合いましたよ。」と、おっしゃいます。

青野さんのお話には、「話し合う」「会話する」この言葉がよく登場します。実際今までのいろんな場面で、仲間と「話し合い」、たくさんの問題を解決してこられたそうです。CiBOの運営方法や、お店で取り扱う商品のこと。責任を持ってお客様に届けるためには意見がぶつかることがあって当然だと思います。そのたびに「結構言い合って」お互いに納得いく形を探してこられました。

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そして、 CiBOで一番大切にしていることもやはり「出店者とお客様との会話」とのこと。まだ開催して間もないころ、お店に並ぶお客さんを待たせてはいけないと、目の前のお客さんとあまり会話せずに商品を渡していた時期があったそうです。でもそのマーケットが終わった時、何だかしっくりこなかった、と感じられたそう。

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「普段の農家の仕事は、黙々と野菜を育て、お店やレストランに卸すこと。だから実際に自分の育てた野菜を食べてくれるお客さんとの会話を励みにしている農家はすごく多いんです。『この野菜どうやって食べるのが一番おいしいの?』『この前買ったあの野菜、おいしかったわー。』そういう会話がものすごく楽しいし、作り手とお客さんが会話できることがCiBOの原点だと思う。」

 確かに農家の方が、野菜を食べる人=お客さんと会話する機会ってあまりないのかもしれない。この時初めて気が付きました。
だから大切なのですね。


4.地域の未来に大切なこととは。

インタビューの最後に印象的なお話を聞くことができました。

私には中学3年生のこどもがいます。数年後には県外に行くこともあるかも知れません。こどもが地元を離れた時、自分の育った出雲を「いいところだよ!」と胸を張って言ってほしい。誇りに思ってほしい。そう思っています。

でも、冒頭に書いたように私自身が出雲に対して物足りなく思っていることも事実。心から胸を張れる街にするために、消費者として自分は何をしたらいいのだろうか。アメリカから迷いなく出雲に帰って農業を始められ、生き生きと活動しておられる青野さんに、思い切って聞いてみました。

青野さんは、少し考えて

「僕は、お金の使いかたってすごく大事だと思っているんですよ。」

とおっしゃいました。

野菜ではなくてお金の話?

「自分が買い物して気持ちのいいお店にお金を払いたいし、機械じゃなくて、お店のひととやり取りしながら買い物をしたい。自分がいいと思う地元のものにお金を使う。そうすることで、出雲の食文化はもっと豊かになるし、いいお店も増えて、面白い街になる。やっぱり、人生を豊かにするためにはコミュニケーションありき、だと思います。」

とても心に残りました。自分が何をどこで買うか。その意思が自分の住む街を、もっともっと素敵な場所にする。

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私は何も生みだしていないから、地域のために何もできない…そう思っていましたが、私達消費者にもできることはあるのですね。手を動かし、野菜を育て、食べるひとへと運んでいる青野さんの言葉だからこそ、心に残る言葉でした。


5.終わりに

現在35歳の青野さん。実は将来どうやっていくべきか、今が考えるときだとおっしゃいます。

その実行力と、周りを大切に思う暖かくて楽しい力を使って、これからどんなことに挑戦していかれるのでしょう。とても楽しみですし、応援していきたいと思います。

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一緒に素敵な街を未来に残していく。私にもその力があるかも知れない、と思わせてくれた心強いお話でした。

青野さん、ありがとうございました。


ライター:あきらさん / 文責:シマシマしまね

取材日:2019年10月10日


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