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「お気に入り」に登録をしない時代の、情報との付き合い方。

昨日UPされていたこちらの記事。分かる~!!と激しく共感し、気になって古賀史健さんの年齢を調べたらほぼ同年代でした。

私が初めてインターネットに触れたのは、結婚して双子を妊娠した頃なので、およそ20年前。当時ネットは当たり前のように「有線」で、モジュラージャックから電話線を引き抜き、代わりにネットの回線を差し込んでつなげていました。なので電話代が引くほど高くなった月もあります。

何を見ていたかというと「多胎妊娠・出産・育児」のためのコミュニティです。当時、双子を出産することに関して情報はあまりなく、巷にはもちろん「多胎ちゃんサークル」的なやつはあったけれど自分はそういうのが超苦手なので入る気も起きず、情報に飢えていました。そんな時、拠りどころにしていたのがテレビの某育児番組のネット掲示板。同じ悩みや不安を抱えている見えない人たちの存在を確認しては「ひとりじゃない…」と安心していました。

そこからネット環境は飛躍的に進化し、引っ越した先では育児情報はもちろん、各地にいらっしゃる「素敵な暮らし」を発信している方々のホームページを読み漁っていました。「お気に入り」にたくさんのホームページを登録し、皆さんが素敵なお菓子を作ったり素敵な瓶を飾ったり素敵な子ども服を手作りされているのをひたすら「素敵、すてき、ステキ…」と熟読していた日々。これが後の「くらしアトリエ」につながっていくのですが、思うにその頃、「ネットの情報」は「まず椅子に座り、自らパソコンを立ち上げ、インターネットにつなげ、お気に入りのサイトにアクセスする」という面倒くさい作業をしなければ取りにいけないものでした。

でもその作業がわくわくして、時も忘れるほど、本当に楽しかったんだよなあ。

自分が気に入った世界観を、「お気に入り(なんて素敵な名前!)」の場所にしまっておける。時間があればそこに出かけていってドアを開け、情報を大切に大切に読ませてもらって、またドアを閉じる。

インターネットはそんな「特別な時間」でした。

いま、私のパソコンにある「お気に入り」には、仕事関連のサイト(note・Facebook・Slack・ネットショップの管理サイト・レジの管理サイト)、ムスメが通っている学校のHP、そしてAmazonと楽天くらいしかありません。なんというか、夢のないドアになってしまいましたが、代わりに私の新しいドアはスマホにつながっています。情報は椅子に座ってパソコンを立ち上げなくても簡単に手に入り、そのうち手に入れなくてもいい情報までが流れ込んでくるようになりました。

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約20年間の長きにわたるネット生活で、私が磨き上げたのは「検索能力」。知りたい情報を得るためにどんなワードを入れたらいいのか、その語句の選択能力にはちょっと自信がありました。でも検索能力は、自分で情報を取りに行くには必要な力だけど、あふれる情報から身を守り、心地よくネットを楽しむにためはあまり必要がない。むしろこれから問われるのは「いま流れているこの情報は自分にとって良いものか悪いものか」を見極め、スルーしたりキャッチしたりする能力で、ある意味瞬発力を必要とするものだと思います。必要のないものを即時判断していかなければ、他人の声に惑わされたり、気分が悪くなるような情報にあたってしまい、心地よく暮らすことができなくなるからです。

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いつもこの冬の時期、私は一時的に気分が落ち込むことがありました。それは、自分たちが表立った「活動」をしていない時期に、いろいろな人がSNSで「こんなことやります!」「こんなに人が来ました!」「私、輝いてる!」と、成功体験(に見えるもの)を投稿しているのを目にしてしまうから。まるで自分が何もしていない、つまらないちっぽけな人間に思えてしまって落ち込んでしまうのですが、昨年あたりから、どうやらその落ち込みもなく冬を越せているように思います。

読んだ本の写真

理由のひとつは「自分のやるべきことが見えて、目標をクリアすることに集中するから」。今年の冬で言えば、読書と旅でインプットを高める、という目標を立てたことで、いいバランスを保てています。

そしてもうひとつは、あらかじめ自分の精神が波立ちそうな情報はブロックしておく、ということ。そうやって情報をコントロールし、スルースキルを磨くことで、メンタルを維持することができるということが、ようやくわかってきました。

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思えばパソコンにしてもスマホにしても、誰かひとりを追いかけて「素敵!」と盲信することも、もうなくなりました。「この人だからオールオッケー」「この人の言うことはすべて正しい」という情報の探し方が、いつの間にか自分に合わなくなっていたのだと思います。そして、誰かと自分を比べて「ひとりじゃない」「間違ってない」と思うこと自体ももう、なくなりました。アイドルを追いかけたり、自分の存在を承認してもらうために開けていたネットのドアは、もう必要ない、ということでしょうか。

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情報のドアをわくわくしながら開けて「素敵!」を探し当てる高揚感は、私にとってはもう過去のものになっているのかもしれませんが、いま、日々の暮らしの中で刺激や知識をもらい、高揚感をくれるのもネットの世界です。

無尽蔵に流れる情報の渦から自分の求める情報を釣り上げるのは至難の業ですが、スルーするスキルとともに、情報を選び出すスキルも磨いて、うまくネットと付き合っていきたいですね。


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