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手間がかかるものが好きな人集まれ!こんなにすごい特産品を知って欲しい。「うすの会」さんの笹巻きについてひたすら語ってみました。

今日の「時々、コラム」は、島根県雲南市掛合町の「うすの会」さんが作る、島根の郷土食のひとつ「笹巻き」について。

今までも、毎年この笹巻きについてしつこくお伝えしていたのですが、いつもは施設「シマシマしまね」の運営に忙しく、「あれ?もう笹巻きの時期だっけ」という感じでした。それが、今年は思いがけなく施設を長期クローズすることになり、この機会に笹巻きを自分たちでも販売させてもらえたら…と、お願いをして、初めてネットショップで紹介させていただいています。

ですが、ただ販売をするだけでは魅力が伝わらないのでは…と考え、思いのたけを思う存分皆さんに訴えよう!と、今回コラムで綴ることにしました。


「笹巻き」とは…お米の粉で作ったお団子を笹で巻いてゆで上げた料理で、昔は保存食としても食べられていました(笹には殺菌効果があるので)。熊笹の葉っぱを使うため、作るのは笹が大きくなる6月くらい。

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かつては旧暦の端午の節句の頃に、一家総出で作っていた郷土食です。島根県東部のご出身の方なら、「小さい頃作ったことがあるよ」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なぜ私たちが「うすの会」さんの笹巻きを毎年「推して」いるのか。理由はいくつかあります。


1.何と言ってもその造形美が素晴らしい

まず島根の笹巻きは笹をたくさん、贅沢に使います。

実は私が育ったお隣・鳥取県にも「ちまき」があり、小さい頃は親戚が集まって作っていたものですが(材料は同じ。うちは生地にお砂糖を入れてこねていたように思います)、使う笹の葉は1つのお団子あたり4枚でした。が、島根の笹巻きでは1つにつき6枚、さらに10本をまとめて1つにする際に10枚以上の笹の葉を使うので、10本あたり、最低でも70枚は必要ということになります。

さらに、それに加えてうすの会さんでは、最後に縛る「いがら」という植物、10本まとめて仕上げをするときの縄、と、中身から外側から、すべて自然の材料を使っておられるのです。最近はどこの家庭やグループでも、縛ったりまとめたりするときには梱包用のビニール紐を使うことが多く、何だかちょっと味気なさが漂うのですが、そこのあたり、うすの会さんの笹巻きには妥協がありません。

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1本を見ても、10本そろえて最後に「お化粧をして」仕上げたところを見ても、美しいなあ…と惚れ惚れします。自然のものでできているから、やわらかく、それでいて隙がない、凛としたたたずまいです。


2.すさまじい手間と時間をかけている

昨年も言いましたが、「笹巻きづくりは3年かかる」と言われているくらい、手間と時間がかかっています。

まずはお米づくり。うすの会さんでは、地域の農家さんに笹巻き用のもち米を栽培してもらっています。米作りは土作りでもあり、一朝一夕でできるものではありません。

昔から、豊かな土地と人々の知恵が結集しておいしいお米を作ってこられたのです。そのもち米を冬の間時間をかけて寒干しし、粉にしたものをお団子にします。

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おいしいお米で作ったお団子は粘りが強く、食べ応えたっぷりです。


次に笹の葉。

うすの会さんでは、お団子を作るのはおばちゃんたちですが、笹の葉を採集するのはご主人たちの役割です。

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熊笹の葉は、直接お団子を巻くものと外側のもの、それに最後のお化粧用と、それぞれやわらかいもの・大きなもの・小さくてきれいなものが必要。10本セットの笹巻きを作るのに必要な笹の葉は、前述したとおり最低70枚…100本で700枚…300本で2100枚…それを、作る当日の朝早く、朝露の残る時間にご主人たちが採りに行くのです。

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時間が経つと笹の葉がくるんとなってしまって、うまく巻くことができません。だから、笹巻きはいつも「笹の葉が成長しているかどうか」がスケジュールの肝になるわけです。

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そして、笹巻き作り当日。腕に覚えのあるおばちゃんたちが集まり、見事な手さばきでお団子を成型し、笹の茎で作られた棒を刺して、笹の葉で巻いていきます。くるくるっと笹の葉を操る様子は見ていると簡単そうに見えますが、やってみると全然できません…。何年か前チャレンジしたけど、きれいにできる気がしませんでした。

もちろんおばちゃんたちも最初からきれいにできるわけではなく、何年も何十年も、何百という笹巻きを巻くことで腕を鍛えておられるのです。(それでも、毎年最初の頃よりも何日か経って慣れてきたころが上手に巻けるんよ、と教えてくれました。巻く時には洗濯ばさみを使うのがポイントです。)

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きれいに巻いた笹巻きを10本にまとめてたっぷりのお湯で茹であげ(屋外で茹でるための装置はご主人が用意されていました)、最後に長さを揃えて、さらに笹の葉と縄で「お化粧」します。縄も地域の皆さんでなった手作り!あっぱれです。

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いつも食べる時に、こんなに手間がかかっているのに、はがして食べたらあっという間だなあ…と、食べた後に残った大量の笹の葉を見て思うのですが、わずかなひと時のために惜しみなく手間と時間をかける、ということが、田舎ならではの時間の使い方なんだと思います。そこには、暮らしを楽しみたい、自然のもので1年に1度、「わーすごい!」とときめきたい、そんな古くからの知恵が集められているように感じます。

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よく考えれば、お米も笹の葉も、土地がふんだんにあり自然が残る田舎でなければ手に入らないもの。普段何気なく見過ごしがちな「そこにあるもの」を限りなく輝かせ、しかもとびきりおいしい、という、実に素晴らしい食べものなのです。昔の人の知恵はすごいなあ…と思わずにはいられません。

スタッフが思い余って、イラストにしていました。

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3.うすの会さんのパワー!

失礼ながら、あんなに山奥の(雲南市でもかなり山深いところ)小さな集落で、どうしてあんなに明るく朗らかに笑っていられるのか、本当に尊敬してしまう「うすの会」のメンバーさんたち。おばちゃんたちも、ご主人たちも、皆さんすごくパワーがあります。

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※「うすの会」の名前どおり、普段は手作りのお餅を作っておられます。

地元にかける思いも熱く、郷土食のひとつだった「笹巻き」という存在を、地域の特産品にするのだ!と立ち上がって以来、時間をかけて少しずつ少しずつ、その根っこを広げてこられました。

笹巻きの話をされる時の皆さんの顔の誇らしげなこと!シビックプライドの高さを感じます。そんな、地域の方が誇るべき食の恵みを、こうして紹介したり、今回のように販売のお手伝いができたりすることは、私たちにとってこの上ない幸せなのです。


4.伝えたい、なぜならそれが私たちのミッションだから

くらしアトリエは、山陰の、そして島根の魅力を多角的に発信することを活動のミッションの中心に据えています。つまり、「良いものを伝える」「作り手の方々の思いを乗せて、求めている方へ届ける」ということこそが、自分たちの使命だと考えているのです。


「伝える」「応援する」ことが自分たちのやりたいことであり、これしかできないと言ってもいいかもしれない。どんな時よりもテンションが上がり、「やっててよかったね!」と心から感じるのは、こうした地域の皆さんのお役に立てた時なのです。

バズるようなイベントは苦手だし、何よりていねいに伝えたい。

だとすると、ひたすら愚直に「本当にいいものなんです、素晴らしいんです!」と文章と写真で伝えるしかないので、何回も書いています。それが私たちができる「伝える手段」だから。

「笹巻き」に関してはそもそも、こんなに地域の誇りと伝統文化が融合している特産品は他にはないのでは?と思います。だからこそ、多くの方に知ってもらいたい、心に留めてもらいたい。「うすの会」さんの笹巻きは地元では知られた存在で、毎年注文をされる都市部のリピーターさんも多いけれど、まだまだ知らない人も多いし、自分たちが発信することで「食べてみたい!」「懐かしい!」と思ってくださる方がおられるかもしれない。

今までとは違う角度から発信をすることで、既存のお客さまとは違う方にも、笹巻きの魅力に触れていただくことができるんじゃないか、と考え、今回ネットショップでご紹介することになりました。

それが結果的に「うすの会」さんの元気の素になり、「また来年も頑張って巻くか!」と思っていただけることが、私たちのゴールです。

島根の各地で、「うすの会」さんと同じように頑張っている方々がいらっしゃいます。自分たちが発信し伝えることで、地道に活動されている作り手の皆さんに寄り添いつつ、何か良い方向へ向かうお手伝いができるなら、こんなに嬉しいことはありません。

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これから、笹の葉がすくすくと成長し、「うすの会」の皆さんがそろってお元気で、おいしい笹巻きが作れることを祈りつつ、お届けできる日を私たちも楽しみに待ちたいと思います。ほんっとうにおいしくて素晴らしいので、この機会にぜひ、その魅力に触れてみてくださいね。

私たちが以前の「時々コラム」で島根愛を語った「ナンメのきな粉」も一緒にどうぞ。



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