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「誰かに本を選んでもらう」ことの面白さを伝えたい。

今日のコラムはタイトルのとおり、「誰かに本を選んでもらう」ことの面白さを体験してほしい、ということについて語りたいと思います。

普段、読む本を決めるのは自分自身で、決定権も自分にありますよね。

自分のために本を選んでもらう体験って、ほとんどが小学校くらいで終わってしまうものだと思います。

子どものために選ぶ本も、どちらかというと「よく読まれている絵本だから」「新聞や育児雑誌で読ませた方がいいと書いてあったから」というような理由で選ぶことが多いのでは。

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私たちくらしアトリエスタッフも読書好きが集まっているのですが、日頃は本のレビューを見て評価の良いものを読んだり、好きな作家の本を読んだりしていて、「自分の想定の範囲内」から読書の枠が広がらないことが悩みでした。

私自身も、自分の読書の偏りに不満があって、たまに図書館で「今日は作家の苗字がサ行のところから1冊借りよう」とチャレンジして借りたりもしていました(これはこれでなかなか面白い)。

そんな時に「とらねこ図書室」のキシノさんにお会いしたのですが、2回目に会ったときだったかな、「この本たち、〇〇さんにどうかなと思って」と、スタッフに何冊かご自身の本を貸してくださったのです。

お借りした本は初めて読むものばかりで、自分では決して手に取らないジャンルのものもありました。私にはガーデニングや庭づくりの本も。

デザイン担当のスタッフには、装丁がすごく凝った写真集も入っていました。

特に嬉しかったのが時代小説!
今まで「おっさんが読むもの」として敬遠していたのですが(偏見)、こんなに面白いのか!とどハマりしてしまい、いまだに新刊が出るとキシノさんから「出ましたよ~」と連絡が入り、ホクホクとお借りしています。

他人から本を選んでもらう、というのは、何だか面白いものだな、とその時にすごく感じたのです。

例えば私のことをすごくよく知っている友人から「この本、絶対好きだと思うから」と薦められるのとは、また違う。

私の一部分しか知らない誰かが、私の知っている顔・知らない顔を想像して、「この本どうだろう」と思案して選んでくれる。それってすごく面白い!

貸して頂いた本の中には、「あんまり合わなかった」というものももちろんあったのですが、それはそれで、「こういう本は自分は苦手なんだな」という気付きや自己分析につながるので、糧になります。

それからすごく感じたのは、「私にこの本が合うって思ってくれているのか~」という、なんだろう、ちょっと面はゆいというか、嬉しい感じ。

「この本、合うと思います」と言われると、その本を読むに値する人間だと評価されたような気持ちになるのです。

よく美容室とかで、カラーリングやパーマの合間に「どうぞ」と雑誌を置かれることがありますよね。あの場面で、自分が絶対に手に取らないようなゴシップ誌を置かれたりすると、もやもやしませんか?
「私がこういうのを読むと思っているのか…」と、ちょっと落ち込んだり。

その逆で、「こんな素敵な本を薦めてくれるということは、私という人間をそう評価してくれたのかな」という、ちょっと誇らしい気持ちになるのです。
そして、「この本に値する自分でありたい」と感じる。他人から選んでもらうことで、自己評価が高まる気もするから不思議です。

そんな、「誰かに一生懸命本を選んでもらう」という機会を堪能していただきたい、という思いから、今回の企画ができました。

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それが、選書イベント「あなたのための1冊選書」です。先日からご案内している、来月開催のイベント「しまねの秋の、お楽しみ」の中で試みとして初めて行います。

図書館司書資格を持つ「とらねこ図書室」キシノさんを中心に、くらしアトリエスタッフ(本好き)も一緒に、ご予約いただいた方のための1冊を心を込めて選び、貸し出しいたします、という企画。

本は1か月間借りることができるので、ご自身のペースでゆっくり読んでいただけばOK。

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おいしいスコーンやコーヒー片手に、会場の「オープンスペース.美南」さんの縁側でのんびり読書を楽しんでいただくのも良いなあ、と思います。

企画を通してお伝えしたいことは他にもあって、「本を読む」という行為はもちろんですが、選書にあたってそれぞれが本のことを考え(事前にヒアリングシートというものにご自身と本のことを色々と書いてもらうのです)、毎日の生活のことを考え、自分にとっての本の位置づけをいま一度考えるきっかけにしてほしい、という思いもあります。
読書というのが核にはなっているのですが、「立ち止まって考える時間」を楽しんでほしい。

どんな本に出会えるんだろうとわくわくしたり、どんな時に読みたいかを考えたり。

漠然と「本を読みましょう」というのではなく、ご自身の生活のどの部分に読書を取り入れたいのか、本を読んでどんな気持ちになりたいのかを考える、その「考える時間」そのものを楽しんでほしい!という思いが強くあります。

考えることすなわち、好奇心を持って生活すること。

くらしアトリエが掲げているテーマの一つです。
島根で、好奇心を持って楽しく心豊かに暮らしていくこと。そのための大切なツールとして、「本」があると思っています。

なので、本が好きな方はもちろん、普段はあまり読まないという方にもぜひぜひ、参加していただきたいです。

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以前とある小さな書店で、偶然オーナーさんとお客さんが本を一緒に選んでおられる場面に遭遇したことがあります。

お客さんは自分が読む本ではなく、「読書とは無縁の自分の母親」に「時間を持て余しているようだから、読みやすくて読書が好きになれるような本を」探しておられました。そうか、本を選ぶ相手って、本が好きな人だけじゃないのか!というのがなんだか新鮮で。普段本を読まない人にも、何かきっかけになるようなお手伝いができたらいいなあ、というのを、その時に強く感じたのです。

だから、読書が苦手という方はヒアリングシートにそのようにご記入ください。
もし当日お渡しした本が「合わない」と思われたら、その場で本のチェンジも可能です。図書館司書としていろいろな場面で働いておられたキシノさんを中心に、一緒にお話ししながら、1冊を選んでいけたらと思っています。

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くらしアトリエはお知らせしているとおり、今回のイベント会場でもある「オープンスペース.美南」さんへ移転する予定です。

移転した際には、今回の企画のようなちょっと面白い図書スペースを併設できたら、と考え、現在準備を進めているところ。

その図書スペースの、記念すべき第一歩ともなる今回の「選書イベント」、多くの方にその思いに触れていただき、キシノさんを中心に選ばせていただいた本との出会いを楽しんでほしいな、と思っています。

例えば思うように旅行ができないとか、仕事や子育てに追われてなかなか外に出かけられないとか、そういう制約を一気に取っ払ってくれるのが本の世界だと、私は思っています。好きな場所に行けるし、どんな職業も本の中で体験できるし、ドキドキのミステリーや、現実離れしたファンタジーも楽しむことができる。1冊の本から世界が変わることもあるのです。

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読書の習慣がない方も大歓迎。
そしてもちろん「本が大好き」という方も大歓迎です!

私たちも決してすべてのジャンルを網羅しているわけではないので、時に教わりながら、本の話をさせていただけるのを楽しみにしています。

「あなたのための1冊選書」、ご予約はこちらから。

当日、会場までお越しいただける方のみご予約くださいね。

どうぞよろしくお願いいたします。





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