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憧れの日本酒ライフ。「もの」の中に風土がさりげなく内包されている喜び。

今日の「時々、コラム。」のテーマは、シビックプライドを感じた新たな体験について。

少し前から、くらしアトリエスタッフに「夫婦で日本酒を楽しんでいる」という話を聞いていました。おいしい地酒をセレクトして買ったり、旅先で買ったりして、日本酒ライフを飲んでいるとのこと。

え~、何それ、かっこいいなあ、いいなあ、と思いました。

というのも、我が家では晩酌など、お酒を家で飲む習慣がないのです。
私自身がお酒はほぼ飲めない、というのと、オットは数年前からドクターストップがかかっていて飲むことができない、というのが理由です。

なので、知り合いから日本酒をもらっても料理酒に使っていました。たとえそれが「純米大吟醸」だったとしても、です。

それでも、例えばどなたか県外の方に贈りものをする、という時に「日本酒がいいかもね」と地酒を選んだりするのはとても楽しくて、お酒が暮らしの中にあるっていいなあ…という憧れだけは持ち続けていたのです。

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そんな折、立て続けに島根の地酒の300ml瓶をいただく機会がありました。

「冷酒で飲むとうまいと思うけどなあ…まあ、料理に使ってよ」と渡されたそのお酒は、ラベルもカッコよくて、いかにもおいしそう…。

…そもそも私はビールが苦手なのであって、日本酒は少しならいけるはず。
…オットもおちょこに1杯くらいなら、身体に負担もないのでは。

何より、私も「日本酒ライフ」というやつをやってみたい!!

ということで、冷蔵庫で冷やして飲んでみることに。

スーパーでおいしそうなお刺身と「えいひれ」を買い(形から入るタイプ)、献立もそれっぽく(和風に)して、さあいざいざ!と思ったら、我が家にはおちょこも小さなグラスもない!ということに気づいて、豆鉢に入れていただきました。

安来の吉田酒造「月山」と津和野の古橋酒造「ひげ文」というお酒を飲み比べましたが、まず、まったく味が違うことにびっくり。

どっちがおいしいか(私は月山、オットはひげ文が好みでした)ということではなく、同じ「米と水」でこんなに違うのか、ということに新鮮な驚きがありました。

でも、よくよく考えれば、土地が違えばそこに育つ米も水も麹も、違って当たり前。だから、仕込んだお酒の味が変わるのも当然ですよね。

興味がわいて調べてみると、まず吉田酒造のお酒は「安来市広瀬町西比田の契約農家から仕入れたお米」と、「安来の清く美しい超軟水」を使用されている、とのこと。

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そして津和野の古橋酒造では「津和野産の酒米・佐香錦」と「青野山の山麓の湧水(天泉と呼ばれている)」を使用されているそうです。

どっちも、地元で育まれたものをそのまま、シンプルに活かせるのがお酒づくりなんだなあ、としみじみ。

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さらに、「月山」は安来市広瀬町の象徴でもある山の名前で、「ひげ文」は津和野町出身の「ひげの文豪・森鴎外」をモチーフにした名前だと知って、ますます「おお~!土地の魅力がお酒になっている!」という気持ちに。

そして気づいたのです、「日本酒って究極のシビックプライドでは?」ということに。

2014年に放映されたNHKの連続テレビ小説「マッサン」で、主人公の実家である広島の酒蔵での酒づくりの様子が紹介されていたのですが、その時にも「広島の米と広島の水で、うまい酒を作りたいんじゃ!」と職人さんが言ってたなあ…というのを思い出しました。確かその当時は岡山の酒米を使って仕込みをしていたけど、広島の米じゃないと本当の地酒とは言えんのじゃ、みたいなことを言っていたような気がします(意訳)。

暮らしている土地の豊かさが一番シンプルに伝わるのが、お米と水です。

それを、職人の技で時間と手間をかけ、たくさんの工程を経ておいしいお酒をつくる。だから、お酒には地域への誇りがぎゅぎゅっと詰まっているのですね。

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思い返せば、こうして日本酒の味とかその背景となっている風土について考えたことなんて一度もなかったわけで、こんなところにシビックプライドが!と、新たな世界の扉が開いた気がして、すごくわくわくしました。

オットから日本酒の話を聞いていると、他にもおいしい地酒がいろいろあることが分かりました。

東出雲のお酒とか邑南町のお酒とか、聞いていると試したくなってきます(ほとんど飲めないのですが)。

また、オットが転勤で東北で暮らしていた時に知ったおいしいお酒の名前や、「新潟の酒はおいしい」「山形もうまい」といった話を聞くと、俄然、「旅先で日本酒を買う」というやつもやってみたい!と思うようになりました。

きっとその土地その土地で違う味わい、違う魅力があり、それぞれのシビックプライドがお酒になっているはず。

ここ数年旅行とは縁遠くなってしまいましたが、夫婦で出かけられる機会があればおいしいお酒を調べて買って帰り、家でちびちび飲む、というのができるといいなあ、と、今から楽しみです。

日本酒だけではなく、例えばクラフトビールにも地元の食材をフレーバーとして加えたりすることがスタンダードですし、ジンのボタニカルにも地元の植物が使用されて「クラフトジン」として人気がある、というのも聞いたことがあります。

お酒から地域の風土を感じ、飲みながら地元の良さを発見し、旅先でその誇りに触れ、遠方の方にそれを贈る…シビックプライドを高めるヒントが、あちこちに転がっている気がします!

お酒が飲める人たちはずっとそんな誇りに触れてきたのか、と、ちょっとうらやましい。

お酒以外にも、「地域の風土」を「商品」「作品」に活かしたものづくりは数限りなくあると思います。

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例えば和菓子では地元の風景をモチーフにしたものがありますし、うつわ作りに地元産の土や釉薬にこだわる方もいらっしゃいます。

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「もの」の中に地域が、風土がさりげなく内包されていると、ちょっと嬉しくなる。

これも、シビックプライドを感じるからですね。

できれば、いつもそういう「もの」に触れていたい、囲まれていたい、と思います。

日頃、何気なく口にしたり使ったりしているものも、ちょっと立ち止まって「シビックプライド」というフィルターを通して見てみると、新たな発見があるかもしれませんね。

◎お知らせ

来週、7月1日の「時々、コラム。」はお休みいたします。



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