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赤ちゃんと一緒にミーティングOK。に見る、フィンランドの働き方や文化について


赤ちゃんのお世話をしながら、仕事もしたい、新しいビジネスにも挑戦してみたい、そんなふうに思うお母さんお父さんは多いのではないのでしょうか。働き方が見直されている今、私が長女妊娠から2歳になるまで、育児と両立しながらフィンランドのスタートアップで仕事をして感じた、フィンランドの働き方やそれに現われる思想について、気づいたことをシェアしようと思います。

キーワード:働き方、ワーキングママ、子育て、フィンランド

育児休暇は新しいことを始めるチャンス。

フィンランドにいるまわりの0-2歳児の育児中のママ達は、その期間を育児に奮闘するだけではなく、新しい学びに積極的に繋げているように見えます。例えば、育児休暇中に自分のビジネスを始めてみたり、ネットワークを築いてみたり、新しい分野を勉強するなどです。3人の育児休暇の後に、スピード出世して社長になったお母さんの例もあります。

フィンランドは男女平等トップの国。父親と母親の間で家事も仕事もきちんと分担します。だから出来ることかもしれませんね。

育児休暇中はもちろん赤ちゃんのお世話に専念する期間。なので、フィンランドにいるお母さん達は、自分にも赤ちゃんにも無理のない範囲で、リラックスしながら新しいことに挑戦している印象があります。

例えば赤ちゃんを連れて同僚とランチをし会社の動向や産業についての知識を仕入れたり、イベントや勉強会に参加したり、オンラインのコースをとったり、とストレスフリーに出来る範囲ですることで、単調になりがちな育児に積極的に変化を取り入れている印象です。

彼女たちの姿に励まされて、私も妊娠時からスタートアップの世界に飛び込んでみて、初めての育児と同時にスタートアップの主要メンバーを務めました。

スタートアップベービーと私。

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私は長女が1か月の頃~8カ月まで、週に何回か職場に赤ちゃんを連れて行っていていました。会社はヘルシンキのスタートアップハブ「Maria01」にあるので、長女はStartup Babyとして知られていました。

ミーティングやブレストをする際には赤ちゃんを職場に連れて、同僚と実際に顔を合わせて仕事をしました。個人タスクはリモートで、家やカフェなどでリラックスして出来るように調整しました。

赤ちゃんを職場に連れていくということは、職場で授乳したり、離乳食をあげたり、おむつを替えたりすることになります。もちろん、赤ちゃんは泣きます。

フォーマルな場での赤ちゃんのお世話。会議中に授乳していいのか。赤ちゃんが泣いたらどうしよう。日本の感覚だと、そもそも赤ちゃんを職場に連れていくなんて、もってのほかと思うかもしれません。

しかし、実際にフィンランドのスタートアップで赤ちゃんを連れて働いてみて、赤ちゃんを連れていくのは意外とアリだし、会社やコミュニティに対してメリットも生むと感じました。

育児をしながら仕事をするのは普通。そして、企業はそれを支えるもの。

スタートアップでの仕事はとてもストレスフル。変化も激しいし、仕事量もものすごく多い。

私の働いていたスタートアップのCTOは、当時3歳と1歳の子供がいましたが、ある日「今日は子供の誕生日パーティーで、その準備があるから早退します。では!」と言って、さっさと荷物をまとめて出て行ったことがありました。

締め切りが近くめちゃくちゃ忙しい時でしたが、「誕生日パーティー楽しんでね!」と声をかける。それが出来たのは、日ごろからのコミュニケーションと、普段から働きやすい環境をみんなで作っていたからです。

当時会社には13人いて、そのうち子供がいる社員は私を含め5人いました。熱意があるのに、子供がいるからといって仕事に支障が出るのはもったいない。なので、「皆にとって働きやすい環境」について社内で頻繁に話合い、その為のシステム作りや、コミュニケーションの仕方について思考錯誤して試していました。

一方一般企業では、社員の家族の時間を大切にするのは当たり前。私のパートナーは大企業で働いており、赤ちゃんを膝にのせて上司と一緒にオンラインでミーティングをしたり、上司も月に一度は会社のミーティングに小学生の子供を連れてきたりしていたそうです。(子供は会議中に絵を描いたりして過ごすのだとか)

パートナー曰く、仕事を休んだり、リモートで働く際に会社に説明する一番の良い理由は、「家族の為」だそうです。例えば、祖父母に孫の顔を見せる為、子供を部活動に連れて行く為、など。とても素敵ではないですか。

いつどこでも授乳してOK。男性陣も当然と理解している。

さて、ミーティング中、投資家がいようが授乳していた私ですが(顧客がいる場合は控えてました)、日本の感覚ではきっとアウトではないでしょうか。

「どこでも授乳してよいんだな」と認識したきっかけは、ちょうど0歳の子供がいたフィンランド人カップルと、私とパートナーと4人で一緒にランチをした時です。

友人の赤ちゃんが泣きだすと、友人はすぐにおっぱいを出し、授乳しながら、何事もないかのように会話を続けていました。ちらっと乳首が見えて動揺する私。私のパートナーだって見てしまったかもしれないし、周囲にも男性客いるし、大丈夫なの?

しかし、自然に受け止めているフィンランド人男性陣、普通に会話を続けていて、さらに動揺しました。え、見えなかったの?友人の旦那さん、いいの? すると、それぞれの反応は

友人:「赤ちゃんがおっぱいを欲しがったら、あげるのが当たり前。そもそも赤ちゃんの頭で胸は隠れてるんだから、大丈夫よ♪」

私のパートナー:「授乳するのは自然なこと。授乳している人のおっぱい見るのは失礼だし、実際に皆見てないよ。授乳中でも顔を見て普通に会話できるでしょ。」

友人のパートナー:「彼女がどこでも授乳することに嫌だと、特に思わないよ。必要なことだから、普通でしょう。」

その寛大さにカルチャーショックを受けました。それから街を観察してみると、確かにフィンランドにいるお母さん達は、公共の場で赤ちゃんの面倒を見ることに対して引け目を感じず、堂々としている。そして、男性陣もそれを当然のこととして受け止めている。

授乳はいつどこでも安心して出来る環境にほっとし、その後の育児について前向きな気持ちになれました。

実際にスタートアップのイベントに赤ちゃんを連れて行ってみたら、意外とウェルカムだった。

初めて赤ちゃんを職場に連れて行った時は、長女がちょうど1か月になった時。ベビーカーを押して、スタートアップハブMaria01でのパーティーにドキドキしながら参加しました。そこには様々なスタートアップの起業家や投資家の方達が集まっていました。

授乳したり、赤ちゃんを抱っこしていると、ある投資家の方が「うちも3番目の息子が○カ月で、寝かしつけが大変だよー」と話しかけて下さいました。赤ちゃんがいることを疎ましく思うのではなく、逆に抱っこしてくれたりする投資家や起業家の皆さん。

赤ちゃんをこのような場に連れて行くのはアリな文化なんだな、と実感した瞬間でした。

赤ちゃんの話から、子供達の未来の話、社会問題などに話題が移り、社会イノベーションのアイディアについて話すことに繋がったりします。そして、環境や社会問題に対する関心の高さを感じました。

その後も、イノベーションやスマートシティに関するイベントや勉強会に赤ちゃんを連れて参加してみましたが、長女以外にも赤ちゃんの姿を見かけることが頻繁にありました。

余談ですが、アアルト大学にも、子供を連れて受講するお父さんお母さんの姿を見る機会がちらほらあります。校舎のトイレにおむつ替え台があったり、学生用のレストランには子供用の椅子がいくつか用意されていて、大学側が子供がいる学生のことを想定していることに対してとても好感を持てます。

その後も、娘が8カ月くらいまで、赤ちゃん連れでミーティングに何度も参加しましたが、会議中に娘はCEO、同僚、投資家と、次々に抱っこされていて、親子で面白い体験をしました。

いろんなライフステージがあること、価値観があることを認識し、受け入れる。

フィンランドで生活をしていて、会社の中で、学校の中で、図書館や保健施設などの公共空間で、さまざまなライフステージや異なる環境を持った人が見えるように、システム、サービスや空間がデザインされていると感じます。

「誰も取りこぼさない社会」という言葉をフィンランドにいて良く聞きますが、この「誰も取りこぼさない社会」を作るための思想がさまざまなところに反映しているのだと思いました。

日々の生活の中で、いろんな人と触れ合う機会が多くなると、共感力が自然とあがり、もっと優しくなれる。

ひとりひとり違った環境、価値観があることをまず認識し、受け入れ、そのうえでお互いを応援する。このマインドセットを持つことが、みんなが働きやすい環境を作る上で大事なのではないでしょうか。


お読み下さりありがとうございます! 都市計画・建築・まちづくりから、サスティナビリティに貢献したいです。そして、日本とフィンランドの架け橋になれるように勉強したい。