見出し画像

イギリスで運転免許を取った話

僕は18歳から19歳の1年間をイギリス・ロンドンで過ごした。

留学、と言えば聞こえはいいが、実際は語学学校で英語を学び、あとは飲んだり食べたり旅行をしたり少し習い事をしていただけでお世辞にも立派な留学生とは言えなかったが、ひとつだけ40歳を超えた今になっても役立っているものがある。

それが自動車の運転免許だ。

僕は留学中にイギリスで運転免許を取得し、その免許を現在も使用している。

このイギリスでの運転免許取得、日本とは異なる部分が数多くあるので説明をしてゆく。


イギリス留学中に免許を取るべきメリット

わざわざイギリス留学中に免許を取得するのは、①金銭的、②副産物的、③交通規則的の3つの分野においてメリットがあるからだ。

①金銭的なメリット

日本での免許取得までにかかる料金は安く見積もっても30万円前後である。

それに対してイギリスでの免許取得までにかかる料金はかなり安い

僕の場合で総額10万ちょっと。試験の合否によって多少上下するだろうが日本と比べるとおよそ20万近く安く免許が取得できる。これは大きい。

②副産物的なメリット

それは、英語の勉強になるということだ。

僕が通っていた語学学校というのは外国人が英語を学ぶために集まる学校なので、ネイティブスピーカーは先生しかいない。イギリス人と話す機会はちゃんと喋れるようになって仕事などすればあるが、それまでは限られるので教習官と運転の教習をすることは英語の勉強にもなり一石二鳥だ。

③交通規則的なメリット

イギリスはヨーロッパの中で唯一車が「左側通行」の国でもある。つまり日本と同じなので、日本に帰ってから戸惑うことがないのもメリットの一つと言える。

このようにプラスな点が多いのが僕がイギリスで免許を取得した理由である。

どうやって免許を取るか

たしか僕がイギリスにいた当時は、「同乗者が免許取得後〇年経過していれば運転の練習はOK」というようなルールがあって、同乗者に教えてもらって試験にさえパスすれば免許が取れたはずだ。だから友人や家族同乗のもと訓練をして試験に合格すれば受験料以外ほとんどお金はかからない。

ではそういった車を持つイギリス人の友人がいなかった僕はどうしたかというと、やはり日本同様教習を受けることになる。

教習官のいるエージェントに行き、契約をする。

エージェントは結構数多くあって、「L」と赤字で大きく書かれた会社があれば大体は運転免許の教習官のいるエージェントだ。僕が選んだエージェントはロンドンの中心部、車がひしめく雑踏の中のビルの一室にあった。

そこに直接行き、教習官をあてがわれて契約をする。今はおそらくネットで契約とかできるんだろう。

これで準備は完了だ。

教習ってどこでやるの?

僕が契約した教習官はジョージというアイルランド出身の40代後半くらいの男性だった。

画像2

さて、教習と言ってもここはロンドンの中心部。

近くに教習所があるわけではない。

ではどこにあるかと言うと、実はイギリスには「教習所」そのものが無いのだ。

教習はこんな感じだった。

まず、ジョージが家に直接車で来てくれる。

僕は助手席に乗り、ジョージと話しながら人気のない所まで連れて行ってもらう。

するとジョージが車を降りて「代われ」と言う。

僕は運転席に座る。

そう、イギリスはいきなり路上教習なのだ。

ちなみに車は日産マーチだった。

欧州ではマーチを「MICRA」という車名で発売している。

どう見てもマーチなのに「ミークラ、ミークラ」とジョージが言うので当時は不思議に思っていた。

教習車なので助手席にもブレーキが付いている。

そのうちに慣れてきたら普通に車通りの多い所でもだんだんと僕が運転するようになってゆく。

信じられないかもしれないがイギリスでは完全現場主義、教習を受ける時点ですでに仮免状態なのだ。

どうしたら免許が取れるの?

免許の試験には2種類ある。

①筆記試験

②実技試験

おそらく日本もそうなのだろうがこの2種類だ。

ジョージには実技を教えてもらい、その間に問題集をもらって自分で筆記試験の勉強をする。

問題集には数百問問題があって、試験に出るのは100問も出ないんじゃなかったかな。そのうちたしか90%位取れたら合格。試験場とかのことは忘れちゃった。

問題ももちろん英語なので、これも英語の文章読解の勉強になる。

ジョージとの会話でリスニングとスピーキング、筆記試験で文法の勉強になるわけだ。

イギリスでの免許取得教習は僕にとって同時に語学学校でもあった。

ちなみに筆記試験にもイギリスっぽさがある問題があって、

「道路に馬が出てきたらどうしますか?」

みたいな問題があったことを覚えている。

僕はめでたく一発で合格した。


路上教習中、ジョージとの会話で覚えているのは、

僕が運転中、急に割り込んできた車がいて、怒ったジョージはクラクションをけたたましく鳴らし、窓から手を出し中指を突き立て、その車に向かってスラングでよくわからないがとても汚い言葉を叫んでいた。日本の教習官ならあり得ないことだろう。その後僕に向かって「Sorry for my French.」と謝っていた。イギリスとフランスというのは仲が悪く、「汚い言葉言っちゃってすまんね」というのをこう表現したわけだ。こんな語学学校では習わない表現も非常に面白く勉強になった。

画像3

さあ、筆記試験に受かったらあとは実技試験だけだ。

実技試験は試験場に行って、試験官が助手席に乗り、僕が運転席に座る。

ジョージからの旅立ちだ。

そして路上に出て色んなところを運転して帰ってきて合否が決まる。

ちなみに僕は2回実技に落ちた。

最初の時なんて、試験場から一般道に出る時点で試験官にブレーキを踏まれ(助手席にもブレーキがついている)、「戻れ」と言われて開始わずか5秒で落とされた記憶がある。その後試験官とジョージがなにやら話していて、ジョージが僕の所にやってきて「どうしたガク、緊張してたのか?」ととても悲しそうな顔をしていたのを覚えている。すまなかった、ジョージ。

画像4

教習や実技試験って何を見るの?

日本の教習のことをまったく知らないので違いはよくわからないのだが、通常の運転技術の中にイギリス特有のものがある。

その大きなひとつに「roundabout」がある。

これは環状交差点、つまり日本で言う「ロータリー」にほぼ近いものなのだが、これがイギリスにはそこかしこにある。そのためここの判断はかなり重要視される。ウインカーの出し方、行きたい道への出方が少し癖があるので要注意だ。日本では役に立たないけど。

あと、試験では次の3つのポイントの内2つが必ず出されるようになっていて、

①坂道発進

②方向転換

③縦列駐車

この3つは必ず繰り返し練習する。

試験でもこれがちゃんとクリアできないと合格にはならない。

日本でイギリスの免許って使えるの?

最も重要なことだが、結論から言うと僕の場合は使えた。

帰国後に日本の免許に書き換えることが可能だ。

ただ条件があって、僕の時はなぜか免許を取得した国に取得後2か月以上滞在していることが条件だった。今は軽く調べたら3か月に変わっているようだったがルールはよく変わるので、実際に取得を目指す方は事前にちゃんと調べてください。このルールを後から知って僕は帰国を延ばした。危ない所だった。

ちなみに僕の友人の日本人も僕と同時期に免許をイギリスで取得したのだが、このルールを知らずに帰国する必要があったため、結局日本で取り直したらしい。もったいな! 彼のようにはならないように。

イギリスで免許を取るデメリット

少なからずデメリットもある。

①ハンドル操作が変

ひとつは、僕が習った右折左折の際のハンドル操作は日本ではすごく馬鹿にされた。

10時10分に持つのは一緒なのだが、曲がる時に何というか、ハンドルをゴシゴシするのがイギリスのやり方のようで、日本に帰ってからひどく笑われた記憶がある。

画像1

②日本の交通ルールがわからない

あと、日本の交通ルールがわからない、というのもある。

僕は日本に帰ってきてから運転中に車線変更禁止のラインの意味が分かっていなくて切符を切られたことが二回ほどある。ただまあそういうのはじきに慣れるだろう。

③思い出話についてゆけない

最後に、教習所あるあるについていけないという点。

よく若い頃の思い出話で教習所の話になるのだが、救助を呼ぶ時の教習? の話によくなる。助けてくださーい! みたいな小芝居するやつあるんでしょ?

そんなものはイギリスではなかったのでこれにはまったくついてゆけない。そんな時は「俺ロンドンで免許取ったからわかんないんだよね」とドヤ顔で言おう。これで相手は黙るはずだ。

最後に

以上、イギリスで運転免許を取るためのポイントでした。

僕が取ったのは20年以上前の話で色々と変わっているだろうから、もし取得予定の方がいたら事前に確認してくださいね。

それでは。

お金持ちの方はサポートをお願いします。サポートを頂けたらもっと面白く効率的に書けるようofficeやadobeのソフトを買う足しにしようと思っています。でも本当はビールを飲んでしまうかもしれません。