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46個の梅酒の瓶

老前整理梅酒

まわりに相談で解決も

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 80代のひとり暮らしの女性Tさんから相談を受けました。毎年漬けた梅酒の瓶に台所が占領され、どうすればよいのか分からないというのです。驚いて「一体いくつあるのですか」と尋ねると、4リットルの瓶が46個。

捨てるのは忍びないし、重いので最近は動かすのもつらいとのことでした。

 まず疑問なのが、なぜそんなにあるのかです。重ねて尋ねると、漬け始めたのは結婚してすぐで、12年前に亡くなったご主人が毎晩飲んでおられたそうです。ご主人が亡くなってからも何となく続けていたら、こうなってしまったとのこと。

 Tさんはお酒に弱いためまったく飲まず、遠方で暮らす子どもたちも見向きもしない。やめればよさそうなものですが、庭に梅の木が数本あり、たくさん実がなるのでもったいないし、毎年やっていることだからやめられないそうです。

 46個の梅酒の瓶と聞くと「なぜ?」と思うのですが、ご主人のへの思いと庭の木の話をきくと、なるほどと思います。このように他人から見れば「なぜ?」と思うことも、よくきくと、それなりの理由があるのです。

 では、今ある梅酒をどうするのか。

 地域の自治会の会長さんに相談して、欲しい方にお配りすることにしました。あんがい梅酒を寝酒に飲んでいる女性が多いこともわかり、道で「おいしい梅酒をありがとう」と声をかけられたこともあります。

 梅の実も婦人会に提供して、公民館の料理教室でジャムにしてもらうことになりました。Tさんは梅酒の瓶に囲まれて何年も悩んでいたそうですが、今回のことで地域の方との交流も増え、ジャム作りにも参加するそうです。

「こんなことなら、もっと早く会長さんに相談すればよかった」というTさんのことばは、ほかの人にも当てはまるかもしれません。

 ゴミ袋が重くて一人で出せないとか、体調を崩して犬の散歩が出来なくなったとか、家族の介護をしている人もそうですよ。ちょっとした買い物が頼めたら助かるとか、一人で悩まず、友人や地域の信頼できる人に相談してみると、解決できることもあるかもしれませんね。

イラスト なかだえり氏                        坂岡洋子『転ばぬ先の老前整理』 2016年 東京新聞 より

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