2023/04/09 迷宮キングダム「注文の多い寿司店」プレイレポート #TRPGサークルRTS

百万迷宮の遥か片隅。
果てしなく続く険しい道のりを抜け、この私"当たるも八卦、当たらぬも八卦の"ウィンターはその国を訪れていた。

渦を巻くように続く城壁の奥には宮殿が白くそびえ。
玉座の上に王の姿はなく、代わりに何本もの花束が連日のように多くの者たちから捧げられ。そしてその玉座の後ろの壁には、偽りを切り裂き、真実を掴み取る男の姿が勇ましく描かれている。

その男の名は"目に入れても痛くない"グラナーダ。
彼こそがここ、「爆発エンジェル汗国」の偉大なる国王にして、この国を救った英雄である。

私は遥か遠方の国より彼の武勇伝を耳にし、彼その生涯を追ってここまで旅し。
そしてその宮殿の壁画の前にて、生前の彼の配下だったという女性より、彼の最期の冒険譚を聞くことが出来た。
ここに、彼の偉大なる功績を称え、その活躍を記そうと思う。

* * *

しかし、その前にまずはこの国について語ろう。
彼がいた素晴らしきこの国の名は「爆発エンジェル汗国」
かの偉大なる君主、エンジェル・ハーンによって築かれ、数々の伝説を残し、死霊、魔王の子供、偉大なる古龍の血を引く、質実剛健なる民たちが住まう軍事国家である。

そしてその国を率い、導くは以下の5人のランドメイカー

"天上天下唯我独尊"インヤン
騎士/冒険者 女
武勇に優れ、多大なる武勲と名声を手にし、自国と許嫁への愛に満ちた勇敢なる騎士であり。
「爆発エンジェル汗国」国王"目に入れても痛くない"グラナーダと婚約を交わし、特別ときわ市民ホール連邦より訪れた宮廷メンバー紅一点である。

"天につば吐く"サジタリウス
神官/召喚師 男
その身朽ち果てもなお愉悦、快楽、酒池肉林を追い求め、狂宴教を熱烈に信仰するスケルトンの神官。
死してなおも世の理に反してその骨のみとなった身に縋り付き、神官の身でありながら己を戒めることなきその姿はまさに"天につば吐く"と言える。
もっとも、彼につばを吐くことが出来るのかは不明であるが。

"叶わぬ時の神頼み"スロット
大臣/魔導士 男
かつて大国に留学し、あの日見た国のような豊かさを自国に望む男。
その為に日々博打に身を投じており、誰もがその行いに呆れながらも、その類稀なる才覚と諦めの悪さでもって自国への利益をもたらしている。
いずれ破滅しないことを願う。

"噂をすれば"カゲオトコ
忍者/料理人 男
常に影の様な姿をしており、その素顔を知る者はいない。
よく国王の隣に佇み、耳元で囁いて国王の口を介して言葉を発し。噂をすれば背後に現れる謎の男である。
国王の話によれば、彼の兄にあたる関係だったとのことだが、一方で国王の霊波紋ではないかとも噂されていたらしい。

"目に入れても痛くない"グラナーダ
国王/星術師
そしてこの記録の中心たる偉大なる国王その人。
かつてこの国にとっての敵国、「素晴らしきダンジョン汗国」より漂流し、天より全ての民より一心に愛される魅力と、民を守る勇敢さの二物を与えられた人物である。

それと、偉大なるグラナーダを最も間近で見ていた"据え膳食わぬは男の恥"オレンジペコ。
グラナーダの配下として常にその傍に仕え、彼と同じく星術師となることを夢見て自ら彼に弟子入りした配下である。
ここでこうして直々に彼らの武勇伝を語ってくれたことに感謝を込めて、ここに彼女の名前を記す。

* * *

その日、「爆発エンジェル汗国」ではある噂が立っていた。
それはこの周辺階域にある「回転スシランド」という土地にて、百万迷宮の中で神出鬼没に現れるという正体不明のアーティスト、バン・クーシーの絵が発見されたとのことだ。
それから国内ではしばらくその話題で持ちきりとなり、その絵を一目見ようと5人の民が「回転スシランド」へと向かって行った。
しかし、その後いつまでたってもその民が帰って来ることはなかったそうだ。

それからしばらくして、やがて宮廷に1通の手紙が届いた。

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拝啓 宮廷メンバー様
突然のお手紙失礼いたします。
私はバン・クーシーと申します。
巷で正体不明のアーティストと呼ばれているものです。
この度はあなた方に折り入ってお願いしたいことがあり、このように筆を執らせていただきました。
単刀直入に申し上げますと、ここ周辺階域にある回転スシランドにて、あろうことか私の名を騙って贋作を展示するものが現れており、甚だ遺憾の極みにございます。
また、その贋作につられて回転スシランドに向かった民が未だ誰一人帰ってきていないとの黒い噂もあり、このままでは私への評判にも傷がつくと共に、周辺の王国にも災厄が訪れると危惧しております。
そこで、あなた方にはかのかの忌まわしき私の贋作を消していただきたくお願い申し上げます。
無論、成功の暁には必ずやお礼を差し上げたく存じますので、前向きにご検討いただけますと幸いでございます。
敬具
バン・クーシー

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それは、かの噂のバン・クーシーを名乗る者よりの直々の依頼の手紙だった。
それによると、「回転スシランド」にある絵はバン・クーシーの名を騙る偽物によるものであり、このままでは自身の名はおろか、周辺の王国にも危機が迫るとのこと。
その依頼を受けて、我が宮廷はかの「回転スシランド」へと向かうため、円卓会議を開いたのであった。

それから、カゲオトコが自身の配下を「回転スシランド」へと派遣し、見事にその入り口と2つの部屋の情報を掴む。
しかし、派遣した2人の配下の内、帰ってきたのは1人だけだったという。
やはり回転スシランドには人を寄せ付け、そのまま取り込む何か恐ろしいものがあるのかもしれない...

そしてオレンジペコが未来を熱心に語り、星術師への一歩を踏み出したのも、ここでグラナーダが視察に訪れた時だった。

* * *

A-2 入口

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そして長い道中を経て辿り着いた「回転スシランド」の入り口周辺には怪しく光る大きな看板が掛けられ、建物の周りにもそこら中に宮廷を歓迎する言葉がおびただしく記されていた。
中に入るとそこは銭湯の脱衣所のような部屋となっており、その先のすりガラスのついた扉の手前には「ここで服を脱いでください」という張り紙があり、扉の先からはカポーンという音が響くと共に、微かに温泉の匂いが漂ってくる。

そう、回転寿司とは神聖な場所であるからして、入店する前には身を清める必要があり。各テーブルにもいつでも手を洗えるようにお湯が出る蛇口が備え付けられているのだ。

その扉を開けた先は広い温泉となっており、湯けむりの中に数名の先客の影が見える。
近づいて目を凝らすと、彼らは周辺の国から訪れた兵士や傭兵、小人さん、そして1週間以上湯に漬かったまま人柱と化してしまった者たちで、その中には先日から帰ってきていない自国の民たちも紛れていた。
それを見てサジタリウスが。
「この温泉が骨身に染みるのは分かるがここで何をしている」
そう言って、お得意のスケルトンジョークを交えながら問いかけるも。彼らは皆まるで洗脳されたかのようにこの温泉を離れようとせず、中立的なモンスターとして立ちふさがるのだった。

そして交渉の結果、戦争を好まないスロットが【魔導書】を差し出すことによって彼らと友好的な関係を結ぶことに成功する。
続けて、インヤンが部屋の中にあったバン・クーシーの贋作を破壊すると、その瞬間温泉に漬かっていた者たちが皆一斉に我に返り、自国の民たちも再び配下に加わった。
それから、部屋の捜索を行ったところ、この部屋には【遭難】のトラップが仕掛けられているのを発見。
派遣に向かわせた配下が帰って来なかったのはどうやらそのためだったらしい。
その後、小人さんと人柱を自国の民に迎え入れ、宮廷は先の部屋へと進んだ。

B-3

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次の部屋も同じように温泉となっており、そこにもバン・クーシーの贋作が展示され。更にその近くには「ここでよく調味料をもみ込んでください」という張り紙のついたショウケースがあり、その中には【フルコース】と【科学調味料】が置かれていた。
カゲオトコはトラップを警戒するようグラナーダに耳打ちし、部屋には【遭難】と【水槽】。
贋作には【生ける石像】のトラップが仕掛けられていることを見破った。

そこで"天上天下唯我独尊"インヤンがトラップを覚悟の上で贋作から噴き出す炎に身を焼きながらもそれを打ち砕き、火だるまとなって温泉に飛び込んだ。
その後、宮廷は時間経過と飢えを避けるために【水槽】に溺れかけながらも先の部屋へと急ぐ。

C-2

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その次の部屋に進むと、ダンジョンヲタクが温泉の壁に向かっており、スプレーで絵を描いているのが見える。
ダンジョンヲタクは宮廷に気が付くと。
「なんだお前たちは、温泉で泳ぐなんてマナー違反だぞ!」
と自身が壁に落書きしていたことは棚に上げて突然注意してきた。
それを聞いてインヤンが激しくツッコミを返すと共に彼に向けて素早く剣を抜いた。
「突然剣を向けるなんて、このボクをバン・クーシーと知っての狼藉か。名を名乗れ!」
そう言ってダンジョンヲタクは【名乗る】を宣言。
それに対してインヤンはバン・クーシーに「侮蔑」の感情を取得し、バン・クーシーはインヤンの勇ましくも可憐な姿に心を奪われ「愛情」を取得する。

敵の前衛には【人間の屑】が4体と【血を吸う野菜】が2体。
後衛には【ハニワ】が2体と、5人の配下を持った【バン・クーシー】。
本陣には贋作が配置される。

戦闘が始まり、バン・クーシーの【策士】と血を吸う野菜の【不意打ち】によって厳しい作戦判定を強いられるも、スロットが《気力》を使って先行を勝ち取り。インヤンが爆弾で敵前衛を一層し、【名声】によって《民の声》を獲得。

バン・クーシーは【コレクター】によって衣装に着替え、自らの配下に号令をかけて応戦。
宮廷に着実にダメージを与えるも、グラナーダによって目の前で自身の作品を破壊され激昂する。
それに対し、宮廷は「お前からの依頼だろう」と伝えるも、「そんなことは知らない、その手紙も書いた覚えはない」とし、激しく抗議を続ける。
そして迎えた3ラウンド目、グラナーダが「バン・クーシーの名を騙るお前こそがバン・クーシーの贋作だ」という言葉と共に鉄砲で彼の眉間を貫き、それがトドメとなって戦闘は終了した。

すると、ダンジョンヲタクは宮廷の戦いを称え、キミ達ならこの先の迷宮支配者を倒せるかもしれないと言って情報を残す。

「見事な戦い方だったお。もしかすると、お前らならこの先の迷宮支配者を倒せるかもしれない…。いいかい、1回しか言わないからよく聞くんだお。」
「ここの迷宮支配者は、ボクの作品の中に自身の分裂核を埋め込み、そうやってボクの作品を見た民を自身の下に集めて喰っているんだお。」
「ここも元々はボクたちが住んでいた国だったんだけど、ある日奴らによって滅ぼされ、ボクはアーティストの腕を見込まれて外から餌を集めるために生かして利用されていたんだお。さしずめ、このダンジョンそのものが奴らにとっての回転寿司なんだお。」
「だけど、このダンジョンの各部屋に1つずつ置かれた分裂核5つ全部を破壊すれば迷宮支配者を倒せるかもしれない。」
「次の部屋にはバン・クーシーの贋作じゃなくてボク自身のオリジナル作品に分裂核が埋め込まれている。その作品には僕のサインが入っているから探してみるんだお。」
「最後に改めて僕の本当の名を名乗るよ。僕の名前は"蛇の道は蛇の"ラッセルだお…」

「・・・」

「すいません、今のもう一回言ってもらっても良いですか?」
「さっき1回しか言わないって言ったよね💢」

そうして最期に宮廷にヒントを残し、ラッセルは温泉に沈んでいった。

B-1

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そして次の部屋もまた温泉があり、今度は見た限りバン・クーシーの贋作は飾られていない。
その代わりに【お酒】が宮廷人数分並べられたショウケースが置かれ、そこには「お気の毒でした。お酒をよく飲んでください」と張り紙がされている。

真っ先に【お酒】手を伸ばそうとするサジタリウスをどうにか引き止め、その間にインヤンが部屋の中を捜索し、部屋に【遭難】【水槽】のトラップを発見。
そして、温泉の中に顔を沈めなければよく見えないが、部屋の床に大きな絵が描かれていることに気付く。
それは色とりどりの魚の群れやイルカたちが光に照らされながら優雅に泳ぐ海中の風景が細かく描き出され、まるで温泉に潜るとその絵の世界に引き込まれるかのような素晴らしい大作であり、絵の隅には確かにラッセルのサインが記されていた。
しかし、これだけの美しい絵となると如何にラッセル本人の願いだとは言え、傷つけてしまうのは忍びない。
その美しい絵自体が【踏み絵】のトラップ効果を持ち、インヤンの心に深い罪悪感を刻み付けた。

その後、スロットが絵を破壊し、手の空いた宮廷は酒を飲みつつ休憩を取り、この後の戦いに備えていた。
「五臓六腑に染み渡る」
「お前の五臓六腑ってどこだよ!」
といったサジタリウスのスケルトンジョークもそこそこに、いよいよ宮廷はダンジョン中央の迷宮支配者の部屋に向かおうとする。

しかしここでうっかりしたことに、宮廷はこのクオーターで食事を摂るのを忘れていたために飢えによるダメージを受けてしまう。
しかし、戦闘中はあまり影響がないという判断で【お守り】で【水槽】を突破し最後の部屋へと進んだ。

B-2

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辿り着いたその部屋は食卓の様な場所で、辺りにはしゃぶり尽くされた後の骨が散らばり、深人たちが食器を手に取って新しい食事が運ばれてくるのを待っていた。
しかし、そこにやって来たのは飢えた人間や、魔族や古龍の血を引く者、よくわからない影、そして元から骨だけの姿となった者ばかり。
深人たちは運ばれてきた料理にクレームを入れながら襲い掛かって来たのだった。

敵の前衛には【兵隊エルフ】が2体とテーブルクロスの【お化けシーツ】が3体。
後衛には【河童】が2体と迷宮支配者の【脳漿喰らい】。
本陣には最後のバン・クーシーの贋作が配置される。
加えて【脳漿喰らい】が支配者スキル【迷宮災厄】によって贋作を【蝕】で隠し、【一時停止】と【絶望】で宮廷の動きを阻む。

そして迎えた1ラウンド目、強大な敵を前にスロットが《気力》と【緊急措置】を使って先行を勝ち取り、着実に勝利への突破口を切り開こうとする。
続いてグラナーダが【灯り星】でカゲオトコの持っている星の欠片の光量を増し、味方の《回避値》を上昇させる。
そしてサジタリウスが【小転移】でグラナーダを敵本陣へと飛ばし、そのままグラナーダが最後の贋作を破壊。
すると脳漿喰らいは途端に激しく苦悶の咆哮を上げ、その場をのたうち回った。
しかし、それでも迷宮支配者たる脳漿喰らいは、多大なるダメージこそ受けはしたものの、その支配力によって持ちこたえ、更には味方であるはずの兵隊エルフを食い尽くして傷を癒すとともにその力を増してしまう。

そして敵の行動手番に回り、質の悪い料理を出された上に分裂核を破壊されて激昂した脳漿喰らいが【触手】を伸ばして複数人への同時攻撃を放つ。
それによってスロットの持っていたアイテムが身代わりとなって砕け散り。
サジタリウスはその攻撃が頭に直撃して行動不能に。
そして、贋作を破壊して蝕に飛び込んだままのグラナーダは、背後から迫りくる攻撃に反応することが出来ず、その攻撃は無慈悲にも彼の急所を貫く。
そしてそのまま、偉大なる英雄は暗闇の中から再び姿を見せることはなく、オレンジペコの腕の中でその命が消えていったと、彼女は涙ながらに語った。

* * *

オレンジペコから、そこまでの話を聞くと、彼女と同調するかのように空も曇り出し、やがて冷たく雨が降り注ぐ。
それから、しばらくの間取材を止め、彼女が落ち着くのを待ってその国王の顛末の続きについて語ってもらった。
もっとも、その後彼女はずっと王の傍で彼の名を呼び続けていたため、その後の話は彼女が直接見て来たものではなく、他の者から聞かされたものらしいが。

* * *

グラナーダが倒れた後、その後も残りの【河童】や【お化けシーツ】の攻撃が続けざまに絶対成功し、宮廷はますます窮地に立たされることとなる。
しかし、その時グラナーダが倒れた場所には蝕があり、それによって他の宮廷がグラナーダの死を目撃せず、彼の帰りを信じて戦うことが出来たのは運が良かったのかもしれない。

しかし、グラナーダがあっけなく命を落としてしまったのは宮廷だけでなく迷宮支配者にとっても都合の悪いことだったらしい。
何故なら脳漿喰らいは元々、敵対するものをじわじわといたぶり、それによって生じる怒りや苦しみの感情を美味とするグルメなモンスターであるため、苦痛を与えることなく簡単に死を与えてしまうのは決して彼らの望むところではないのだ。

そのため、脳漿喰らいはグラナーダを殺してしまった事を激しく悔やみ、更に怒りの叫びを上げると、宮廷をより絶望の淵へと叩き落そうと【精神感応】によってスロットに向けて恐怖のテレパシーを送る。

しかしその時スロットは戦闘中であるにもかかわらず、頭の中はギャンブルがしたいという激しい欲求に満ち満ちており、絶対に諦めないという確固たる意志の下、そのテレパシーに見事打ち勝った。

そのスロットの強い意志と、自らの精神感応を弾かれたという事態に困惑した脳漿喰らいは再び触手による攻撃を放つが、途端にその攻撃は空振りを続け。残りの河童による攻撃もまるで何かに守られるかのように宮廷には届かなかったという。
その時のことを、宮廷はグラナーダが死してなおも【灯り星】を使ったという行動は生きていて、自分たちを守ってくれたと語ったらしい。

その後、カゲオトコとインヤンが前衛で脳漿喰らいの進軍を抑え、後方でサジタリウスとスロットが支援を行うという見事な連携により、瀬戸際での戦いを耐え続けたという。
そしてとうとう脳漿喰らいが前線を突破し、ポーションも尽き、いよいよ全滅が目前に差し迫った頃。遂にその時はやって来た。

その最後、インヤンが持てる全てを賭けた一撃がついに迷宮支配者の息の根を止めたのだ。
こうして宮廷は絶望の淵の中、見事に一発逆転の希望を掴み取り、国を救ったのだった。
しかし、代わりに失ったものも大きく。
彼らは、特に最愛の婚約者を失ったインヤンはその勝利を喜ぶ間もなく、悲しみに暮れてその場に立ち尽くしていたという。

* * *

これが、この記録の筆者である私"当たるも八卦、当たらぬも八卦の"ウィンターが聞いた"目に入れても痛くない"グラナーダの真実の全てである。
その後、宮廷が国に帰還すると、いつの間にか宮殿にはこのバン・クーシーが描いたと思われる壁画が残されており、以来数多くの観光客で賑わう【名所】となり、花を手向ける者が増えたらしい。

「この度は、貴重なお話ありがとうございました。それと申し訳ありません、途中グラナーダ国王が亡くなった時の事、さぞ話すのもお辛かったでしょう。」
「いえ、構いません。こうしてあの方のいた証を後世に残してくれるのでしたら。それに、まだあの方は亡くなられてはおりませんよ。」

「え、それはどうゆう…」
そう言いかけたところで、彼女は宮殿のさらに奥の部屋を示す。
そこにはその冒険の直後に【霊廟】が建てられており、今でもグラナーダ国王の身体が保管されているという。
そしてこの国の者たちは皆、いつか偉大なる王が長き冒険から帰還する日を日々待ちわびているのだ。

迷宮キングダム「注文の多い寿司店」プレイレポート


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