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「Say Good-Bye 涙」サビのE majorについて

 「Say Good-Bye 涙」(上原歩夢: CV.大西亜玖璃) (※1)。サビの最後の和音がどうも気になってしまいました。音を取ってみたら非常に意味のある風味がしたのでその話を書きます。

「Say Good-Bye 涙」の調性

 「Say Good-Bye 涙」は全体的にト長調(※2)。転調のない素直なつくりになっています。ト長調は

若人の調。誠意、瞑想、優美、静かな田園的な風情。春の調ともいう。

というイメージの調です。(※3)

 全体的に素直なつくりの曲ですが、サビの最後だけ不思議な響きを感じました。普通こんな終わり方しないよね、と。「わざとやってるに違いない」と決めつけて音を取ってみました。

サビの最後の進行

 歌詞で言うとこの部分です。

・二度と言わないよ絶対
・だって変われるんだ絶対
・二度と言わないよ絶対

進行は

・コードネーム: C → D → E sus4 → E
・ト長調として: Ⅳ → Ⅴ → Ⅵ
・ホ長調として: ○Ⅵ → ○Ⅶ → Ⅰ
 ※sus4は表記上は非和声音として扱いました

となっており、ホ長調に解決しています。また、sus4からの解決は、広義には変終止(アーメン終止)として扱われることも多いようです。ここは実際そんな風にも聴こえますね。

 ちなみに「○Ⅵ → ○Ⅶ → Ⅰ」の進行は、サビ直前(「デ~レッテテー」のところ)でも使われています。伏線みたいでおもしろいですね。

・コードネーム: E♭ → F (→ Gでサビ入り)
・ト長調として: ○Ⅵ → ○Ⅶ (→ Ⅰでサビ入り)

ラブライブ!シリーズにおけるホ長調の位置付け

 話は飛びますが、ホ長調の話です。ホ長調は

輝かしく、温和で喜ばしい。高貴の調。

というイメージの調です。(※3)(※4)

 ラブライブ!シリーズでは「僕らは今のなかで」「KiRa-KiRa Sensation!」「MOMENT RING」「さようならへさよなら!」「君のこころは輝いてるかい?」などといった、 "輝き" を表すような楽曲でよく使われています。(※5)

 こういった事情があり、ラブライブ!シリーズではホ長調は特別な調として扱われているのではないかなと邪推しています。

上原歩夢ソロ曲の変遷

 上原歩夢のソロ曲の調性はこのようになっています。

・「夢への一歩」変ト長調 ※AメロBメロは変ニ長調
・「開花宣言」変ニ長調 ※AメロBメロはロ長調
・「Say Good-Bye 涙」ト長調

五度圏ではホ長調からかなり遠い変ト長調で始まり、2曲目では2つ隣の変ニ長調、そして隣のロ長調まで接近しました。3曲目のト長調は五度圏では遠いものの、平行調のホ短調を経由すればホ長調まですぐそこです。

 スクスタのプロフィールページにて

一歩一歩コツコツ頑張る努力家タイプ。

と紹介されている上原歩夢さん。そんな彼女が "輝き" (ホ長調) に向かって一歩一歩進んでいくような、そんな風にも見えてきませんか。

スクールアイドルの輝きを掴んだ、その瞬間

 そしてソロ3曲目の「Say Good-Bye 涙」。サビの最後で一瞬だけホ長調になります。「E sus4 → E」の2小節が3回で計6小節。転調と言うには短い、その一瞬。

 夢を見つけて、強くあろうと決意した上原歩夢さん。そんな彼女が、自分にとっての答えを手に掴んだ、その瞬間が表現されているのかもしれません。

 実際のところ、この進行の意図は作曲者ではないのでわかりません。でも、こんな意味が込められていれば面白いなと思っています。

脚注

※注1: 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd アルバム「Just Believe!!!」に収録
※注2: ト長調のラブライブ!楽曲 は「どんなときもずっと」「MIRAI TICKET」「Love U my friends」「Just Believe!!!」などがあります
※注3: 門馬直美(1992)『音楽の理論』音楽之友社.
※注4: 「高坂穂乃果」の「ほ」という説もあります
※注5: ホ長調については過去の記事でもたびたび触れています。これとかこれとか

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