見出し画像

地方都市の在り方をアップデートする。イノベーターの人材育成モデル 中編その①:アクションプラン発表とサポーターとのネットワーキング

中長期型の研修プログラムが陥る2つの限界
数か月単位など比較的中長期に渡って実施される研修プログラムの場合、最終回は研修から得た学びの応用力と内省を促すためにプレゼンテーションを行うことが多い。特に企業派遣で参加する社会人を対象とした研修では、プレゼンテーションの内容は自社への応用を意識したものにすることが大多数だろう。しかし、このプログラムの仕立てには限界があることは、ワークショップ・デザイナーや研修担当者のよく知るところでもある。
最終プレゼンテーションでよく知られる限界は主に2つある。
第1に、自社への応用を考えた際、組織内での調整の困難さや現実を良く知るために発表内容に学びの成果が反映されず、面白みのない内容となることだ。たしかに、現実的ではあるが組織の抱える問題解決への効果が薄く、学びに対する内省の効果も弱まってしまう。
第2に、プレゼンテーションで発表したアクションプランをやり切ろうと言う本気度の弱さだ。研修はどれだけ実践的であろうとしても、新たな知見を得ると言う受け身の活動である前提から抜け出すことは難しい。そのため、受講生全員に対して「研修で学んだことを実践に移したい、行動したくてたまらない」という当事者意識を醸成することは困難を極める。現実的には、このような当事者意識を受講生の何割に持ってもらえるのか、その当事者意識を反映して思いのこもったアクションプランができているのかがポイントになる。

受講生の心に火をつけ、当事者意識を持たせる仕掛け
これら2つの限界を踏まえ、Oitaイノベーターズ・コレジオでは最終回の発表会に対して、以下のような工夫を凝らした。

・ アクションプランは受講生の所属先への応用は求めない。結果として、所属先への提案となることは認める。
・ 発表グループは高校生か大学生を必ず含め、多様なバックグラウンドを持ったメンバーで構成する。
・ 発表には、受講生の所属先企業の上長や経営層をゲストとして呼ぶ。
・ アクションプランに応じて、実践に向けたコラボレーションが期待できるゲストを呼ぶ。
・ アクションプランの順位付けや評価は行わず、ゲストが支援したいと思える内容だったかでフィードバックする。
・ アクションプランへのコメンテーターとして、実践に向けて受講生の背中を押すポジティブ・フィードバックの巧者を招く。
・ 最終回の発表前に、中間発表会とプレゼンテーションの基本を学ぶブラッシュアップ回を準備する。
・ 中間発表会では、アイデアのピポットが求められるような厳しいフィードバックを圧倒的な実績のあるプロフェッショナルから受ける。
・ ブラッシュアップ回では、プレゼンテーションのテクニックだけではなく、自分がやり切るのだという情熱や当事者意識を伝染させる。左脳と右脳をバランスよく研修に盛り込むことができる講師に依頼する。
・ 最終発表に向けて専門のファシリテーターが伴走し、LINEやChatworkなどのグループチャット内のやり取りをモニタリングし、適宜サポートを行う。
・ 発表前にファシリテーターへの相談会を実施し、チームの抱える個別の問題に対してサポートを行う。

これらの工夫を通して、アクションプランの質を高め、受講生の内省と当事者意識の醸成を試みた。

大分を変革する7つのアクションプラン
最終回では、7チームによるアクションプランが発表された。アクションプランの内容に応じて、3つのステージに分け、発表同士の関連性を持たせることでサポーターやゲストが内容を理解しやすいようにしている。第1ステージは「地方都市の観光ブランド再構築」をテーマとして、3グループが含まれている。第2ステージは「水資源の再活用」をテーマとして、2グループが含まれた。最後に、第3ステージは「地方都市の抱える社会課題の解決」をテーマとして、2グループが分類された。

それでは、続いて具体的にどのような発表が出てきたのか見ていきたい。

(その②に続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?