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エッセー 「近未来の超管理社会を予見したクリスチャン・ベール主演のディストピアムービ「リベリオン 反逆者(Equilibrium)」

 ガン=カタとは、コンバットシューティングとマーシャルアーツ、それに東洋武術のすべての要素を統合して創られた究極の格闘技術である。

 その動きは、まるで武術の演武のように優雅で、流水が流れるが如く一瞬の停滞もない。

 ガン=カタは「統計的に命中率の低い位置へ動くことで敵の射線を避け、逆にこちらの弾丸を効果的に撃ちこむ」というコンセプトから生まれ、その動き、動作は、すべて統計学的をその基盤にしている。

 ガン=カタにおいては、拳銃は射撃のみならず、近接格闘における重要な武器であり、文字通り「拳」として要素も合わせ持っている。

 因みに、ガン=カタとは、2003年に公開された映画「リベリオン」(原題:Equilibrium)に登場する架空の戦闘技術であるが、そのベースとなったのは特殊部隊のCQB(近接戦闘)や、イスラエルの究極の格闘術「クラブマガ」といった現実の戦闘技術であり、全く荒唐無稽なものではない。

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 この作品、配給会社が余りに宣伝しなかった(?)事もあり、公開から1ヶ月足らずで打ち切りとなった幻の名作である。

 第三次世界大戦後に出現した管理都市国家リブリアでは、感情は悪とされ、感情を持つ事が禁じられていた。そのため、国民は、「イクイリブリウム」という政府機関が生産・配給する感情抑制薬・プロジアムの服用を義務付けられていた。しかし、当局に隠れて薬の服用を拒み、感情を高ぶらせる芸術品や音楽を愛する者は、反乱者とされ、「ガン=カタ」と呼ばれる戦闘術を極めた特殊部隊員「クラマトン・クラリック」により処刑されていった。

 主人公の第一級クラリック、ジョン・プレストン役には、ターミネーター4でジョン・コナーを演じたクリスチャン・ベール。孤独で寡黙な男の機微を見事に表現している。そして、カンフーアクションのようにスピーディーな動きで次々と敵を倒して行くガン=カタは、まるで優雅な舞を観ているような陶酔を感じさせる。

 ガンアクション映画に新たな境地を開いたカート・ウィマー監督の野心作、それが「リベリオン」なのである。


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