千年前と同じクラゲを食べている
海の生き物の中で私が一際愛好するものの中にクラゲがある。生態もユニークだし見た目にも美しいものが多い。何より、食べると美味い。あのコリコリとした食感が私は好きだ。
しかし、クラゲの体は約95~97%が水でできており、栄養素としては全体の1~2%といったところらしい。内訳はコラーゲンや微量の塩分、ミネラル等らしいが、それらをきちんと摂取しようと思うならば他に栄養価的に優秀な食品はいくらでもあるだろう。
それでも人間はクラゲを食べる。ほぼ娯楽。私などはサラダバーに中華クラゲがあろうものならそればかりコリコリコリコリやっている。
そんなクラゲであるが、食用の歴史は古く中国では呉の時代から記録されているという。日本でも延喜式(957年)には既に宮中への貢物としてクラゲの記述があるそうで、当時から細切りにしたクラゲを乾燥させ、塩漬けにして保存していたという。そして、使用時は水で戻し塩抜きをして調理する。ほとんど今と変わらないのではないだろうか。
そんなにも古くから我々はクラゲをコリコリやっているわけだが、初めにクラゲを食用にしようとしたのはどのような事情からだったのだろうか。珍味というのは得てして飢餓の中から出現するというが、だとするならばクラゲも食うや食わずやの状況下で口にした人がおり、試行錯誤の末に乾燥→塩漬け→水戻し→調理というやや複雑な工程を経て食品としてその末端に席を置くことになったに違いない。
しかし後にクラゲは宮中への貢物へとランクアップしていったわけで、あのコリコリをして「美味い!」となる人間の感覚は千年以上も変わらないのだというのは実に興味深い。
余談だが、同じようなコリコリ食感のキクラゲ。こちらも中国では少なくとも南北朝時代には栽培されている記録があり、日本でも平安時代に編纂された辞書「和名類聚抄」にキクラゲの記載があるという。東アジア人はどうもあのコリコリ食感に魅了されがちのようだ。(尤も、クラゲと違いキクラゲの方は生薬として珍重された側面の方が大きいようだが)
閑話休題。今まで食感を愉しむ以外に何も考えずコリコリやっていたクラゲが千年以上前から同じように食べられていたとは感慨深い。低カロリー食でもあるし今後もっと食卓に上げる頻度を増やしてもいいかも知れない──と思いきや、クラゲはダイエットには向いているようでそうでもないようだ。
というのも、クラゲ自体には味がそこまでないので、調理時にしっかりした味付けをすることがほとんどのため塩分過多やドレッシングなどによるカロリー過多になりがちのようだ。
中華クラゲ、無闇矢鱈にコリコリやっとる場合ではない。
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